電子カルテとPACSの連携でクリニック業務の負担を軽減!クラウド製品のメリットとは【セミナーレポート】
医療分野におけるDXとは、クラウドなどの共通基盤を介して一元的に情報を管理し、データの共通化や標準化を図ることで、より良質な医療の提供を目指すことを指します。政府は医療DXの実現のために注力していますが、他産業と比較して圧倒的にDX化が遅れているのが現状です。
今回のウェビナーでは、エムスリーソリューションズ株式会社 営業本部 部長 山下拓郎氏と、株式会社エムネス ホスピタル&クリニック営業部 尾中俊介氏の対談形式にて、営業現場でリアルに感じる医療DXの浸透状況や、クラウド型システムを取り巻く動向を中心にお話を伺いました。
クラウド型の医療機器の導入を考えていらっしゃる方や、クリニックの開業を検討されている方はぜひ参考になさってください。
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目次[非表示]
医療業界のDX化について
山下氏(以下、山下) まず、2021年に総務省が公表した、あらゆる業種の中でどのくらいDX化が進んでいるかを示す「業種別DX化の取り組み状況」に触れさせていただきます。
この調査結果内では、医療と福祉の業種が「78.7%がDX化を実施していない」となっており、驚くことに全業種で最下位です。医療分野のDXは農業や漁業よりも遅れており、DX化に携わる私自身もこの調査結果に危機感を覚えたのを今でも覚えています。
尾中さんは、医療現場に出られるなかでDX化の遅れを感じる瞬間はありますか?
尾中氏(以下、尾中) アナログのシステムをご利用、または紙カルテを使われているクリニック様もまだまだ多いですね。私も山下さん同様に、これからどんどんDX化を進めていかねばと日々感じております。
山下 そのようななか、2023年6月に内閣官房が「医療DX推進本部」を立ち上げ、「遅くとも2030年の1月には、おおむね全ての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」、さらに「クラウドベースの電子カルテで行っていく」と明言されました。
後述しますが、現状クリニックでの電子カルテの普及率は約60%前後、つまり残りの40%強は紙カルテで対応されています。
紙カルテを使われている先生方は「今現状そんなに不満がない」「もうずっと紙でいいかな」とお考えの方もすごく多いのですが、そういった医療機関であっても、2030年までには電子カルテの導入必要性が差し迫ってきた状況になっています。
このような背景もあり、最近は電子カルテに関する導入のご相談がすごく増えました。
尾中さんもこのニュースが出たあと、何か変化はございましたか?
尾中 そうですね。「クラウド」という文言が入ってきたところに、いろいろ考えるところがあるなというお話はよくお聞きしますし、私自身も医療分野でもクラウドがすごく注目されているのだと感じます。
つづいて、医療業界におけるクラウドの導入状況についてもお伺いしたいです。
クリニックでのクラウドシステムの導入状況
山下 もともと、医療機関向けの電子カルテは現状大きく2つあります。
院内にサーバーを置くタイプの「オンプレミス型」の電子カルテ。もう1つがデータを院外にデータを保管する「クラウド型」の電子カルテになります。
実際にクラウド型の電子カルテが出始めたのが、2019年頃はオンプレミス型の電子カルテが約98%を占め、クラウド型の電子カルテの導入状況はわずか約2%といった状況でした。そもそも当時は、クリニック市場における電子カルテそのものの普及率も約45%でした。
そこから5年が経過し、クリニック市場における電子カルテの普及率は約60%近くにまで伸び、クラウド型が約20%と、電子カルテ市場においてクラウド型が普及してきている形になっております。これらのデータを見ても、これから先はクラウドのトレンドがどんどん加速していくことが予想できます。
尾中 新規開業のクリニックさんは、特にクラウド型を選定される傾向を感じますね。実際、新規のクリニック開業される約7割がクラウド型の電子カルテを選ばれていらっしゃるんですね。
山下 そうですね。さきほどご紹介したニュースが出てから、クラウド化への流れが加速しました。オンプレミス型を導入しても、将来的にクラウド型へのリプレイスが発生する懸念があるなら、最初からクラウド型で検討したいといった先生方がすごく増えましたね。
PACSのクラウド導入状況はどのような感じでしょうか?
尾中 PACSの市場では、導入されている約95%のユーザーが、オンプレミス型を利用されており、クラウド型はまだまだ市場の約5%程度となっております。
ただ、この導入状況は、5年前の電子カルテと非常に似ており、徐々にクラウド型PACSが浸透し、5〜6年後には今の電子カルテの状況のように徐々にクラウド型PACSの割合が増えていくのではないかと弊社内でも予測しております。
山下 数年前まで「クラウド」というワードを聞く機会は少なかったですが、この1〜2年で本当にすごくワードを聞く機会が増えましたよね。
尾中 そうですね。我々の肌感としてもお問い合わせいただくことが非常に増えましたし、各メーカー様がクラウドの製品を発表されているケースも増えており、やはり市場が求める製品がクラウドにシフトしていることを感じます。
続いてクラウド製品のメリットも解説をお願いします。
クラウド製品のメリット
山下 オンプレミス型と比較してのメリットは大きく4点あります。
まず1つ目「どこでも使える」こと。
インターネット環境は必要ですが、インターネットさえあれば院外での利用も可能なため、先生のご自宅や、往診で使うことも可能です。
2つ目は「自由に使える」ことですね。
今までの主流であったオンプレミス型は、基本的にはWindowsのみ対応が基本となっており、メーカー指定のパソコンやプリンターのみ対応というケースがほとんどでした。しかし、クラウドではそのような制限がありません。
3つ目は「安心・安全」なこと。
クラウドは、データセンターに患者さんの情報を保管し、サーバーを院内に置く必要がありません。必要に応じてデータセンターにアクセスする形なので、ウイルス対策にも強いですね。仮に自分のパソコンがウイルスに感染しても、そのパソコン内に患者情報を持っていないので、感染したパソコンを破棄し、新しいパソコンを用意するだけですぐに復旧可能です。
また、データセンターはプロが管理しており、日本にいくつか点在しているような形で、互いにバックアップを取り合っています。例えば、ウイルスだけでなく、災害や水害などの対策としても万全です。
最後に「常に最新」ということですね。
データの更新はメーカー側が対応しているので、クリニックのスタッフさんや先生方が手動で更新をかけたり、バックアップを取る必要がありません。そういった日々の作業がなくなることは、業務負担が楽になることにつながるのではと思います。
尾中 2点目のメリットの「自由に使える」ところですが、Macでの利用は可能でしょうか?
山下 はい、Macでもご利用いただけます。今までの電子カルテでは、基本的にMacで使えるものがなく、Macユーザーの先生方もWindowsを使わざるを得なかった。しかし、クラウド型が出始めてからはMacでもご利用いただけるので喜んでいただけることが増えましたね。
尾中 先生の好きなデバイス環境や、慣れ親しんだ機器でご利用いただけるのはいいですよね。
もう一点、質問です。「常に最新」というところで、今年6月に診療報酬の改定がありましたが、そういった際も自動で更新されるのでしょうか?
山下 はい、自動で更新します。僕らも元々オンプレミスを取り扱っていたので、診療報酬改定などの大きな改定があった際は、その前後で結構大変なことは重々理解しております。
クラウド型だとセットの入れ替え等は全部メーカー側が切り替えてくれるので、スタッフさんが残業し、ずっと汗をかきながら作業する...みたいなことはありません。そのあたりもすごくご好評をいただいているところですね。
医療機器をクラウドシステムで揃えるメリット
尾中 続いて、電子カルテとPACSをクラウド型に揃えてご利用いただくメリットを私からご案内させていただきます。この場合のメリットは2点ほどあります。
まず1点目のメリットは機能面です。
電子カルテとPACS、どちらもクラウドシステムにしていただくことで、同一PC内にシステムを同居させることが可能となり、PC1台分を物理的に削減できます。
左のお写真がオンプレミス型の電子カルテとPACSの構成で、それぞれにパソコンが1台ずつ、マウスとキーボードもそれぞれに必要となります。机下にサーバーも必要です。
実作業としても、カルテの記載時は左のパソコン、DICOM画像の閲覧は右のパソコンを触る...といった感じでした。
電子カルテもPACSもクラウド型にし、同一パソコン内に同居させることで、右の写真のようにキーボードとマウスを共用でき、操作回数も削減できます。また、同一パソコン内で操作が可能なため、PACSの画像を電子カルテや紹介状に簡単に貼り付けることも可能です。
山下 どちらかがオンプレミスだった場合は、電子カルテ用とPACS用のパソコンがそれぞれ必要な上、そのパソコン間での貼り付けができず、患者さんの呼び出しだけしか連携しかできなかった。
お互いがクラウドだと、端末が一つで済む分、キーボード・マウスも一つで済んでデスク周りもすっきりしますし、紹介状に画像を貼り付けるなど今までできなかった挙動ができることもとても評判がいいですね。
尾中 メリットの2点目は、コスト面です。
従来のオンプレミスのシステムでは、約5年〜7年に一度、システムの入れ替えが発生し、その際に初期費用と同じぐらいの金額がリプレイス代として発生してました。
クラウド型のシステムは、その入れ替え費用がないため、5年・10年・15年と長くご利用いただければいただくほどコストを抑えていただくことが可能になっております。
あくまで目安ではありますが、オンプレミス型、クラウド型の費用感も紹介いたします。
オンプレミス型の電子カルテとPACSをご利用いただいた場合の導入時の初期費用は、電子カルテで約350万円、PACSで約150万円ぐらい、その他にも予約システムや問診システム、自動精算機などを入れると初期費用だけで約1000万円近くの金額が必要でした。そして、月額利用料として約15万円程度の費用が毎月発生しておりました。
一方、クラウドシステムの費用感です。
今回、価格の参考例として、エムスリーソリューションズのクラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」、予約・問診・決済が一体型になったDX化システム「デジスマ診療」、弊社のクラウド型PACS「LOOKREC」を導入した想定で算出していますが、初期費用はなんと170万円〜、月額利用料も約5〜6万円と、かなりコストを抑えた上で導入いただくことが可能です。
山下 改めて比較すると驚きの価格差ですね...。
オンプレミス型でDX化をしようとするとどうしても導入費だけでも高額になりがちな上に、ランニングコスト、リプレイスコストも上乗せされていくことを考えると、クラウド型のコストメリットは明らかですね。
参考例にもあるように電子カルテやPACS以外にも、最近のクリニック新規開業では、予約システムや問診システムなども入れられる方が多いですよね。
尾中 そうですね。医師の働き方改革や人手不足の解消等を目的とし、こういった快適システムを導入されるクリニックさんも多いです。
来患数が読みづらいクリニックの新規開業時には、できるだけコストを抑えてスタートできるクラウド型を選ばれる方が増えてきているのも納得です。
クラウド型PACS「LOOKREC」の紹介
セミナー中にご紹介させていただきました、クラウド型PACS「LOOKREC」は、主に4つの機能がございます。
1つ目は、DICOMデータを貯める機能。
2つ目は、ビューアで診察用に画像を見ていただく機能。
3つ目は、レポートシステムで画像について記載していただく機能。
4つ目は、他院様にDICOMのデータを共有する機能。
Googleのサービス機能を活用してデータを保存しており、インターネット環境がある場所であればどこでも画像をご覧いただくことができます。
また、これまではCD-ROMを焼いて他院様にお渡しされていたと思いますが、インターネットを介してDICOMデータのお渡しが可能です。
詳しい資料をご確認いただきたい方は、以下より無料で資料ダウンロードをいただけます。
Q&A
Q. クラウド型PACSは、使い続けてデータがたまると重くなるのでしょうか?
データが増えたからといって表示スピードが遅くなるというご心配は一切ございませんので、ご安心ください。
オンプレミス型のPACSの場合ですと、データがたまることでパソコンの動作や表示スピードが遅くなることもございましたが、クラウド型のPACSは、回線速度に依存して表示スピードが上下する形になります。
Q. LOOKRECは、どのクラウド電子カルテでも連携可能ですか?
現在、エムスリーデジカル様以外にも連携できるメーカー様は約5社ほどございます。
クリニック様でご検討されている電子カルテがありましたら、連携業者の方をご紹介させていただき、さまざまな連携ができるようにご調整をさせていただきます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
クラウド型システムは、場所やデバイスに縛られず、セキュリティ面の安全性、業務効率化やコスト削減に貢献できます。
また、電子カルテとPACSをクラウド型で揃えることで、機能面とコスト面の両方で大きなメリットが得られることがわかりました。
最新技術を駆使しながら安心安全にDX化を進めていき、より医療の質を向上していけるように努めていきたいですね。
おふたりとも、本日はありがとうございました!
なお、クラウド型PACS「LOOKREC」は、以下の無料資料より詳細をご確認いただけます。少しでも気になる方はぜひダウンロードしてみてください。
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また、電子カルテとは?といった基本的なことがまとまった記事や、開業時の医療機器の選定に関しては、以下の記事もご参照ください。