医療用画像管理システムPACSとは?課題や選び方のポイントも解説
PACS(Picture Archiving and Communication System)とは、デジタル画像を効率的に保存、取得、共有するための医療用画像管理システムです。
医療画像をデジタル形式で保存し、迅速かつ容易にアクセス可能にすることで、診断や治療の効率を劇的に向上させます。
本記事では、PACSが医療の世界にもたらす進化や課題について掘り下げ、その技術の理解と選び方のポイントについても紹介します。
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目次[非表示]
- 1.そもそもPACSとは?
- 1.1.RISとPACSの違い
- 1.2.HISとPACSの違い
- 2.PACSの歴史
- 3.PACSと併せて覚えたい「DICOM規格」について
- 4.PACSの導入によるメリット
- 5.PACSがもたらすセキュリティーとプライバシーの課題
- 6.PACSの選び方のポイント
- 6.1.オンプレミス型PACSがおすすめの医療機関
- 6.2.クラウド型PACSがおすすめの医療機関
- 6.2.1.クラウド型PACSのメリット
- 7.クラウド型PACS「LOOKREC」の導入事例4選
- 7.1.事例1. 松戸常盤平おなかと胃大腸カメラと内科のクリニック 様
- 7.2.事例2. 霞クリニック 様
- 7.3.事例3. 医療法人社団活寿会 ひざ関節症クリニック 様
- 7.4.事例4. N2クリニック四谷 様
- 8.PACSがもたらす医療業界の進化
- 9.まとめ
そもそもPACSとは?
PACSとは、Picture Archiving and Communication Systemの略で、医療用画像管理システムのことを指します。
一般撮影、CT、MRIといった画像撮影装置から受信した画像データを、保管・閲覧・管理することを目的としたシステムです。
現在は、超音波、内視鏡などの「非放射線機器の画像」も管理が可能で、各種検査装置から検査結果として作成されるデジタル画像データを一元管理するために利用されています。
またPACSとの関連が深いシステムには、次のようなものがあります。
- RIS(Radiology Information Systemsの略)
- HIS(Hospital Information Systemsの略)
これらとの違いについても解説します。
RISとPACSの違い
RISとはRadiology Information Systemsの略で、 放射線科情報システムのことです。
主に放射線機器による検査と、治療の予約から検査結果までの管理を行い、RISは画像に関連する情報管理、PACSは撮影画像自体を管理するという違いがあります。
近年では、超音波、内視鏡、眼底などの非放射線機器による検査と治療もRISによって一元管理できます。
HISとPACSの違い
HISとはHospital Information Systemsの略で、病院情報システムのことです。
病院内の各種情報システムの総称で、自動受付、電子カルテ、入退院管理、医事会計、薬局管理、診療予約などの各システムが含まれることが多く、患者情報や予約情報、検査情報などの内容を取得できます。
PACSが主に放射線画像データを専門に扱うシステムであるのに対し、HISは医療機関全体の情報を一元管理するシステムといえます。
PACSの歴史
1980年代当時、モダリティから発出される情報は、フィルムへの焼き付けが一般的でした。
特に多くのデータ(かつてはフィルム)をつくりだす医療機器としてCTとMRIがあります。
「PACS」と聞いても放射線科以外の医師にとってはあまり馴染みない言葉かもしれませんが、CTやMRI検査後に作成されるレポートは、どの診療科の医師でも見たことがあるはずです。
CTは、1970年代に日本に導入され、1970年代後半には全身用X線CTや超高速電子スキャンCTなど、大きく発展しました。
MRIは、1980年代に日本に導入され、大学病院などを中心に全国へ徐々に広がりました。
これらのモダリティは、患者にとっての負担が少ないだけではなく、精細な画像をつくりだすため診断に欠かせないものとなりました。
しかし、そこで問題になったのが年々増え続ける「フィルムの保管場所」の問題です。
日本においては患者のデータは医療法によって2年間の保管義務が定められており、大病院であるほど検査結果となるフィルムの保管スペースに頭を抱えていました。
加えて、可能であれば2年といわず、データをずっと持っていたい医師も少なくありませんでした。
こうした背景があり、フィルムからデジタルデータへという動きになり、開発が進められたのがPACSです。
当時のPACSはまだ小型・中型規模であり、機能や性能等は開発する企業に委ねられていました。
1990年代になるとPACSも大型化し、徐々に他の病院システム(HISやRIS等)との連携が求められるようになります。
1996年には厚生労働省が「医用画像の電子保存」に関する通知を出し、検査画像の電子化が認められるようになり、2008年にPACSによる診療報酬が引き上げられたことで全国的に広まりました。
PACSと併せて覚えたい「DICOM規格」について
DICOMとは、Digital Imaging and Communications in Medicineの略です。
医用画像プリンタ、医用画像システム、医療情報システムなどの間でデータ通信を行ったり、保存する方法について国際的に定められた標準規格のことをいいます。
CR(X線デジタル撮影装置)、CT、MRI、内視鏡など、各種検査機器(モダリティ)から発生する画像データは、DICOM規格でほぼ統一されています。
各モダリティで発生するデジタル画像のヘッダー部分には、患者指名や年齢、IDなどの患者情報をはじめとし、撮影施設や撮影者、撮影日時など規格で決められたタグが付けられた状態になっており、DICOM規格に準拠していれば、どの国のどのモダリティで撮影した画像でも、すべて同じルールでのタグが付加されています。
そのためDIOCM画像を読み取れるシステムであれば、どのようなシステムでも画像の閲覧が可能となります。
これらの画像を保存しておくサーバをDICOMサーバといい、DICOMサーバから必要な画像を素早く読み取って表示させるのがPACSです。
データの共有や持ち運びが簡単になった反面、 先述したようにDICOMヘッダーには患者情報などが多く組み込まれているため、フィルムに比べ情報の流出につながりやすいというデメリットがあります。
こうした課題への対策の一つが、厚生労働省が合評した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6版」 です。
ガイドラインでは、医療情報のデータ保存には守るべき「三原則」があると記されています。
項目 |
内容 |
---|---|
真正性 |
データが間違いなく正しいものであること
・データが改ざん、消去されていないこと
・作成と保存の責任が明確になっていること
|
見読性 |
欲しいデータが目に見える形で提供できること
・必要なときにすぐに提示できること
|
保存性 |
データが読み出し可能な形で保管されていること
・法令が定めた期間、情報を安全に保管すること
|
自分に合ったDICOMビューアの選び方について現役読影医が解説した 記事も参考にしてください。
PACSの導入によるメリット
PACSの導入によるメリットは、以下の通りです。
- フィルムレスな運用が可能で、保管場所が不要になる
- 画像情報の共有が容易になる
- 業務効率化につながる
メリット1. フィルムレスな運用が可能で、保管場所が不要になる
PACSを導入することでフィルムレスな画像検査の運用が可能になり、フィルムレスになることでフィルム保管場所という課題がクリアになります。
メリット2. 画像情報の共有が容易になる
PACSを導入することでデジタル化が可能になり、撮影から離れたところでの閲覧までの時間が短縮され、同時に複数の端末での閲覧が可能になります。
アクセス権限さえあれば見たいときに見たい画像をいつでも閲覧可能です。
メリット3. 業務効率化につながる
別の医療機関へ検査画像を渡すとき比較的簡易にコピーができ、メディアを利用するため持ち運ぶ手間も少なくなります。
また、電子カルテから必要なDICOM画像を瞬時に呼び出し、過去の画像との比較も容易にします。
PACSがもたらすセキュリティーとプライバシーの課題
検査画像がデジタル化(DICOM化)することで、フィルム保管場所の問題はクリアされてきました。
これは、画像枚数が膨大になる大病院だけではなく、クリニックも含むすべての医療機関において同様の効果をもたらしたといえます。
一方、PACSシステムは医療現場において不可欠なツールであり利便性は高いものの、セキュリティ面の課題が生じることも事実です。
医療画像は個人情報が含まれるデジタルデータであり、その扱いには厳重な管理が必要です。
フィルムの時代は、1検査1フィルムがセットだったため、紛失あるいは情報の流出という課題は今ほど大きくなく、利便性は低いものの、患者さんの安心につながっていました。
かつては「院内完結」が標準であり、院外とのDICOMデータのやり取りは、画像をコピーしたメディアを媒体とするか、医療機関同士を専用回線で接続する方法が一般的でした。
しかし、ネットワークを介して画像が共有されるPACSでは、不正アクセスやデータ漏洩のリスクも増大します。
医療法規に準拠したPACSを利用すること、患者のプライバシーとデータセキュリティを確保することは、医療機関にとって不可欠です。
PACSの選び方のポイント
PACSには、2種類のタイプが存在します。
- オンプレミス型PACS
- クラウド型PACS
医療機関のタイプ等により、どちらのPACSを選択するほうがいいかは異なります。
以下のポイントを参考にし、自院にあったものを選びましょう。
オンプレミス型PACSがおすすめの医療機関
オンプレミス型とは、病院内にサーバーや通信回線、専用のPACSシステムを構築し、自院の中で運用が完結するような形態です。
オンプレミス型が推奨されるのは、大容量かつカスタマイズ性などの高性能なPACSが求めるケースです。具体的には規模の大きな病院が該当します。
クラウド型PACSがおすすめの医療機関
クラウド型はであれば、オンプレミス型のように専用機器が不要でインターネットに接続できる環境であれば利用可能です。
専用機器が不要な分、リプレイス作業や、導入費・更新費が不要、もしくは低コストな場合も多く、クリニックや新規開業で初期費用を抑えたい医院におすすめです。
また、遠隔読影を多用する健診センターもCD-ROMに焼いたりデータを郵送せずとも、施設外へのデータ共有が容易になり、業務効率化につながります。
クラウド型PACSのメリット
DICOM画像をクラウド上に保管する主なメリットとして、以下のものがあげられます。
専用の画像サーバが不要なので、気軽に導入時しやすくコストメリットが大きい
更新費・維持費などのランニングコストがかかりづらく、更新作業などの手間もかからない
万が一の院内サーバのクラッシュ時(ソフト的故障や災害によるハード的故障など)にクラウド型ならデータ復旧が可能
郵送等のアナログ運用を脱却でき、患者情報の紛失リスクが軽減する
クラウド型を選択する場合は、強固なセキュリティ対策がとられているかが重要になります。
トライアルなどで動作に問題がないかを確認してから導入しましょう。
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クラウド型PACS「LOOKREC」の導入事例4選
CD-ROMの利用、もしくはオンプレミス型のPACSを利用していたものの、弊社のクラウド型PACS「LOOKREC」に切り替えられた事例をいくつかご紹介いたします。クラウド型PACSを導入するか迷われている方はぜひ参考にしてください。
事例1. 松戸常盤平おなかと胃大腸カメラと内科のクリニック 様
新しくクリニックを開業するにあたり、クラウド型電子カルテと相性のいいクラウド型PACSを探されていたという事例です。
開業のタイミングで医療機器を選定を考えられている医師の方は、選定時の注意点をまとめたこちらの記事もあわせて参考にしてください。
事例2. 霞クリニック 様
元々オンプレミスのPACSを利用していましたが、費用が高く、検査画像の共有が不便だと感じられていたことからクラウド型PACSに切り替えられた事例です。
事例3. 医療法人社団活寿会 ひざ関節症クリニック 様
提携MRI施設で撮影したデータをCD-ROMで使用・保管されていたものの、院内の複数箇所での同時閲覧ができず、院間共有を行う際の手間とコストがかかることに悩まれていました。
事例4. N2クリニック四谷 様
がん罹患の患者さまの状態を確認するためDICOMビューワは必須なものの、多大な初期費用を投じてサーバを用意するか迷っているなかLOOKRECを知り、導入実施に至った事例です。
PACSがもたらす医療業界の進化
日本の医療は現在、地域医療格差という医療問題が生じています。
また、画像診断は医療を遂行する上で急性・慢性疾患を問わず大きな役割を担う反面、画像診断の専門医である読影医は、人口100万人あたり 0.3人未満といわれるくらい不足しています。
さらに、日本の画像診断は世界に類を見ない多くの CT、 MRI 機器の存在と地域分散があり、「量と質の不均衡」が生じているのが現状です。
これらの問題の解決策として浮上してきたのが「遠隔画像診断」です。
2018年には、日本放射線科専門医会や日本医学放射線学会などが中心となり、「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」が公表されました。
これにより、DICOM画像を院外(他の医療機関)へ送ることや、院外の放射線科医に読影を依頼することが可能となり、現在は事実上、以下のことが認められています。
- PACSの画像情報を、遠隔画像診断用サーバを用いて、遠隔画像診断データセンターを介するあるいは直接に読影医の端末に送信すること
- 画像診断用端末を用いて読影すること
- 読影医は報告書を作成し、依頼元へと返送すること
遠隔画像診断の普及をさらに一歩進めたのが、PACSそのものを院外(クラウド)に置くという考え方です。
まとめ
長いフィルム時代を経て現在のPACSがあります。
今後、現代日本の医療地域格差解消の大きな一手となり得る遠隔画像診断。その必要性に対応するため、DICOM画像共有はこれまで以上に大きな役割を担うことになります。
弊社のクラウド型PACS "LOOKREC" は、専用機器が不要、導入費・更新作業や費用が不要と、手軽に導入可能。セキュリティ面においてもGoogle Partnerとして、世界最大級のプラットフォームを利用しているため安心してお使いいただけます。
クラウド型PACSの利用を検討されている医療機関の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。