医療用画像管理システムPACSとは?課題や選び方のポイントも解説
PACS(Picture Archiving and Communication System)とは、デジタル画像を効率的に保存、取得、共有するための医療用画像管理システムです。医療画像をデジタル形式で保存し、迅速かつ容易にアクセス可能にすることで、診断や治療の効率を劇的に向上させます。
本記事では、PACSが医療の世界にもたらす進化や課題ついて掘り下げ、その技術の理解と選ぶときのポイントについても紹介します。
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そもそもPACSとはどのようなもの?
PACSとは、Picture Archiving and Communication Systemの略で医療用画像管理システムのことを指します。一般撮影、CT、MRIといった画像撮影装置から受信した画像データを、保管・閲覧・管理・することを目的としたシステムです。現在は、超音波、内視鏡などの「非放射線機器の画像」も管理が可能で、各種検査装置から検査の結果として作成されるデジタル画像データを一元管理するために利用されています。
PACSとの関連が深いシステムには、次のようなものがあります。
RIS:放射線科情報システム(Radiology Information Systemsの略)
主に放射線機器による検査と、治療の予約から検査結果までの管理を行うシステムで、患者情報や予約情報、検査情報などの内容は、次のHISから取得する。近年では、超音波、内視鏡、眼底などの非放射線機器による検査と治療も、RISによって一元管理することができる
HIS:病院情報システム(Hospital Information Systemsの略)
病院内の各種情報システムの総称で、自動受付、電子カルテ、入退院管理、医事会計、薬局管理、診療予約などの各システムが含まれることが多い
PACSの歴史
1980年代当時のモダリティから発出される情報がフィルムへの焼き付けでした。しかし、年々増えるデータに対応するにはデジタル管理が必要になるだろうとの考えからPACSは生まれました。
PACSは放射線科以外の医師にとってはあまり馴染みない言葉かもしれませんが、CTやMRI検査後に作成されるレポートは、どの診療科の医師でも見たことがあるはずです。当時のPACSはまだ小型・中型規模であり、機能や性能等は開発する企業に委ねられていました。
特に多くのデータ(かつてはフィルム)をつくりだすモダリティとして、CTとMRIがあります。
CTは1970年代に日本に入り、1970年代後半には全身用X線CTや超高速電子スキャンCTなど、大きく発展しました。MRIは1980年代に日本に入り、大学病院などを中心に全国へ徐々に広がりました。
これらのモダリティは、患者にとっての負担が少ないだけではなく、精細な画像をつくりだすため診断に欠かせないものとなりました。しかしそこで問題になったのが、前述の「フィルムの保管場所」の問題です。
日本においては患者のデータは医療法によって2年間の保管義務が定められているため、大病院であるほど、検査結果となる「フィルムの保管スペース」の問題を抱えていました。加えて、可能であれば2年といわずデータをずっと持っていたい医師も少なくありませんでした。
こうした背景があり、フィルムからデジタルデータへという動きになり、開発が進められたのがPACSです。
1990年代になるとPACSも大型化し、徐々に他の病院システム(HISやRIS等)との「連携」が求められるようになります。1996年には厚生労働省が「医用画像の電子保存」に関する通知を出し、検査画像の電子化が認められるようになり、2008年にPACSによる診療報酬が引き上げられたことで、全国的に広まりました。
PACSと併せて覚えるDICOM規格
DICOMとはDigital Imaging and Communications in Medicineの略で、医用画像プリンタ、医用画像システム、医療情報システムなどの間でデータ通信を行ったり保存する方法について国際的に定められた標準規格のことをいいます。
CR(X線撮影機器)CT、MRI、内視鏡など、各種検査機器(モダリティ)から発生する画像データは、DICOM規格でほぼ統一されています。要は、モダリティで発生するデジタル画像のヘッダー部分に患者IDなどの患者情報、依頼科や依頼医師、撮影日時など規格で決められたタグが付けられた状態になっているものです。
「DICOM規格に準拠」していれば、どの国のどのモダリティで撮影した画像でも、すべて同じルールでのタグが付加されています。そのためDIOCM画像を読み取れるシステムであれば、どのようなシステムでも画像の閲覧が可能です。
これらの画像を保存しておくサーバをDICOMサーバといい、DICOMサーバから必要な画像を素早く読み取って表示させるのがPACSです。
検査画像がフィルムからDICOMデータとなり、フィルム保管場所の問題はクリアできます。しかしそれと並行してモダリティも進化し、検査も複雑化してきたため、今度はDICOMサーバのスペックや管理等の課題が生じています。
PACSの導入でできること
PACSの導入によってフィルムレスな画像検査の運用が可能になり、フィルムレスになることでフィルム保管場所という課題がクリアになります。
また、デジタル化することで撮影から離れたところでの閲覧までの時間が短縮され、同時に複数の端末での閲覧が可能になります。また、アクセス権限さえあれば見たいときに見たい画像をいつでも閲覧可能です。
もう少し発展して考えると、別の医療機関へ検査画像を渡すとき比較的簡易にコピーができ、メディアを利用するため持ち運ぶ手間も少なくなります。また、電子カルテから必要なDICOM画像を瞬時に呼び出し過去の画像との比較も容易にします。
ただし、データのコピーが比較的容易で持ち運びも簡単かつDICOMヘッダーには患者情報などが多く組み込まれているため、フィルムに比べ情報の流出につながりやすいというデメリットがあります。こうした課題への対策の一つがガイドラインです。ガイドラインでは、医療情報のデータ保存には守るべき「三原則」があると記されています。この三原則に則って医用画像を管理するのがPACSです。
項目 |
内容 |
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真正性 |
データが間違いなく正しいものであること
・データが改ざん、消去されていないこと
・作成と保存の責任が明確になっていること
|
見読性 |
欲しいデータが目に見える形で提供できること
・必要なときにすぐに提示できること
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保存性 |
データが読み出し可能な形で保管されていること
・法令が定めた期間、情報を安全に保管すること
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PACSがもたらすセキュリティーとプライバシーの課題
検査画像がデジタル化(DICOM化)することで、フィルム保管場所の問題はクリアされてきました。これは、画像枚数が膨大になる大病院だけではなく、クリニックも含むすべての医療機関において同様の効果をもたらしたといえます。
一方、PACSシステムは医療現場において不可欠なツールですが、PACSを利用することで利便性は格段に向上するも、セキュリティ面の課題が生じることも事実です。
医療画像は個人情報が含まれるデジタルデータであり、その扱いには厳重な管理が必要です。フィルムの時代は、1検査1フィルムがセットだったため、紛失あるいは情報の流出という課題は今ほど大きくなく、利便性は低いものの患者さんの安心につながっていました。
かつてのPACSは「院内完結」が標準であり、院外とのDICOMデータのやり取りは、画像をコピーしたメディアを媒体とするか、医療機関同士を専用回線で接続する方法が一般的でした。しかし、ネットワークを介して画像が共有されるPACSでは、不正アクセスやデータ漏洩のリスクも増大します。医療法規に準拠し、患者のプライバシーとデータセキュリティを確保することは、医療機関にとって不可欠です。
PACSがもたらす医療業界の進化
日本の医療は現在、地域医療格差という医療問題が生じています。
また、画像診断は医療を遂行する上で急性・慢性疾患を問わず大きな役割を担う反面、画像診断の専門医である読影医は、人口100万人あたり 0.3人未満といわれるくらい不足しています。
さらに、日本の画像診断は世界に類を見ない多くの CT、 MRI 機器の存在と地域分散があり、「量と質の不均衡」が生じているのが現状です。
これらの問題に対し浮上してきたのが「遠隔での画像診断」です。
2018年には、日本放射線科専門医会や日本医学放射線学会などが中心となり、「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」が公表されました。これにより、DICOM画像を院外(他の医療機関)へ送ることや、院外の放射線科医に読影を依頼することが可能となり、現在は事実上、以下のことが認められています。
- PACSの画像情報を、遠隔画像診断用サーバを用いて、遠隔画像診断データセンターを介するあるいは直接に読影医の端末に送信すること
- 画像診断用端末を用いて読影すること
- 読影医は報告書を作成し、依頼元へと返送すること
遠隔画像診断をさらに一歩進めたのが、PACSそのものを院外(クラウド)に置くという考え方です。
PACSを選ぶときのポイント
日本には現在、オンプレミス型のPACSとクラウド型のPACSが存在します。PACSを利用する医療機関等により、選択肢は異なります。
オンプレミス型PACSがおすすめの医療機関
オンプレミス型が推奨されるのは、規模の大きな病院で、大容量で高性能なものが求められるケースです。オンプレミス型とは、病院内にサーバーや通信回線、専用のPACSシステムを構築し、自院の中で運用が完結するような形態です。
クラウド型PACSがおすすめの医療機関
クリニック新規開業であれば、導入にかかるコストを0円まで抑えることが可能なクラウド型がおすすめです。更新時期を控え今後の更新を迷われているなどのケースも、更新不要のクラウド型が推奨されます。さらに、健診センターなど遠隔読影を多用するケースでも「クラウド型」であれば施設外とのデータ共有が容易になります。
DICOM画像をクラウド上に保管することには、次のようなメリットがあります。
- 院内に容量が膨大となる画像サーバを置く必要が無い
- 院内に画像サーバを置く場合、データの二重化となるため万が一どちらかの故障があっても業務への影響が無い
- 患者情報紛失リスクの軽減
ただし、クラウド型を選択する場合は、強固なセキュリティ対策がとられているか、トライアルなどで動作に問題がないかを確認してから導入することが必須要件となります。
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クラウド型PACS導入事例5選
CD-ROMの利用、もしくはオンプレミス型のPACSを利用していたものの、弊社のクラウド型PACS「LOOKREC」に切り替えられた事例をいくつかご紹介いたします。クラウド型PACSを導入するか迷われている方はぜひ参考にしてください。
事例1. 松戸常盤平おなかと胃大腸カメラと内科のクリニック 様
新しくクリニックを開業するにあたり、クラウド型電子カルテと相性のいいクラウド型PACSを探されていたという事例です。
開業のタイミングで医療機器を選定を考えられている医師の方は、選定時の注意点をまとめたこちらの記事もあわせて参考にしてください。
事例2. 霞クリニック 様
元々オンプレミスのPACSを利用していましたが、費用が高く、検査画像の共有が不便だと感じられていたことからクラウド型PACSに切り替えられた事例です。
事例3. 医療法人社団活寿会 ひざ関節症クリニック 様
提携MRI施設で撮影したデータをCD-ROMで使用・保管されていたものの、院内の複数箇所での同時閲覧ができず、院間共有を行う際の手間とコストがかかることに悩まれていました。
事例4. N2クリニック四谷 様
がん罹患の患者さまの状態を確認するためDICOMビューワは必須なものの、多大な初期費用を投じてサーバを用意するか迷っているなかLOOKRECを知り、導入実施に至った事例です。
事例5. 医療法人社団 健心会 みなみ野循環器病院 様
近隣クリニックや病院との画像連携を、もっと手早くリアルタイムに画像連携をしたいとクラウド型プラットフォームの利用を検討されていたことから、導入実施に至った事例です。
まとめ
長いフィルム時代を経て現在のPACSがあります。今後、現代日本の医療地域格差解消の大きな一手となり得る遠隔画像診断。その必要性に対応するため、DICOM画像共有はこれまで以上に大きな役割を担うことになります。
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