web問診とは?失敗しないシステム導入の流れや選び方、メリット・デメリットを解説
web問診とは、従来の紙の問診票ではなく、インターネット上で問診入力を行う新しい手法です。
業務効率化や患者の待ち時間短縮などさまざまなメリットが得られる一方で、自院に合ったシステムを導入しないと有効活用できないため、注意が必要です。
さまざまなタイプのweb問診システムが提供されているため、興味があってもどのシステムを選べばいいのか、判断に迷われている方も多いでしょう。
そこで、この記事ではweb問診のメリット・デメリットや各タイプの特徴、失敗しない選び方を解説します。
この記事を読むことで、web問診を効果的に導入できるようになり、患者満足度の向上を目指せます。
目次[非表示]
- 1.web問診とは
- 2.web問診のメリット
- 2.1.メリット1. 業務負担を軽減できる
- 2.2.メリット2. 患者の待ち時間を短縮できる
- 2.3.メリット3. 記入漏れや転記・読み取りミスを防げる
- 2.4.メリット4. 診療の質が向上する
- 2.5.メリット5. コストを削減できる
- 3.web問診のデメリット
- 3.1.デメリット1. ランニングコストがかかる
- 3.2.デメリット2. 患者側に一定のITリテラシーが必要
- 3.3.デメリット3. 医療スタッフにも一定のITリテラシーが必要
- 3.4.デメリット4. 情報量が増えてしまう
- 4.web問診システムのタイプとポイント
- 4.1.ポイント1. どの業務に特化したシステムか
- 4.1.1.病院・診療所業務向け
- 4.1.2.健診・人間ドック向け
- 4.2.ポイント2. 性能別
- 4.2.1.web問診特化型
- 4.2.2.簡易問診(他システム内包)型
- 4.3.ポイント3. 患者が問診回答するタイミング
- 4.3.1.来院前にwebサイトから記入するタイプ
- 4.3.2.医院で患者自身のスマホを使って記入するタイプ
- 4.3.3.医院でタブレット端末を用意し記入するタイプ
- 5.web問診システムの選び方のポイント
- 6.web問診システムの導入手順
- 7.まとめ
web問診とは
web問診とは、患者自身のスマホやPCを使ってインターネット上で問診票を入力できるシステムのことです。
従来は医療機関受診時に配布される紙の問診票に症状を記載していたため、下記のような弊害がありました。
- 紙のコストがかかる
- 問診内容の確認やカルテへの入力などの手間や、それに伴う人件費がかかる
- 問診票を記載する時間が長く、待合室が混雑する
web問診を活用することでこれらの課題解決が期待でき、医療機関側は患者が受診する前から患者の詳細な情報を把握できます。
待合室での待機時間の短縮や、それに伴う混雑緩和を期待できるweb問診は、特に新型コロナウイルス流行以降、導入を検討する医療機関が増えているようです。
web問診のメリット
web問診のメリットは主に下記の5つです。
- 業務負担を軽減できる
- 患者の待ち時間を短縮できる
- 記入漏れや転記・読み取りミスを防げる
- 診療の質が向上する
- コストを削減できる
メリット1. 業務負担を軽減できる
web問診を活用することで、業務負担を軽減できます。
紙の問診票の場合、受診した患者一人ひとりに直接問診票を配布し、記載後に回収し、さらにその情報を手動で電子カルテやレセプトに入力するという、多くの手間がありました。
しかし、web問診であれば患者自身が端末から入力し、その内容は直接電子カルテに反映されるため、医療スタッフの業務負担が大幅に削減されます。
メリット2. 患者の待ち時間を短縮できる
web問診の導入によって、患者の待ち時間を短縮できます。
紙の問診票に伴う時間は下記のとおりです。
- 受診後に問診票を受け取り、患者が記載するのに2〜5分
- 医療スタッフによって内容確認するのにさらに2〜5分
- その情報を電子カルテに入力するのにさらに2〜5分
当然、患者1人あたりに上記の時間がかかるため、患者が増えれば増えるほどこれらの作業に時間を取られ、患者の待ち時間も膨らんでしまいます。
web問診であれば、患者は自宅や通院の移動中に事前に問診内容を入力でき、その内容を直接電子カルテに反映させることもできるため、上記のような患者の待ち時間を大幅に削減できます。
待ち時間の削減は、患者満足度の向上や収益性の向上にもつながるため、そのメリットは少なくありません。
メリット3. 記入漏れや転記・読み取りミスを防げる
web問診の場合、記入漏れや転記・読み取りミスなどのリスクを軽減できます。
紙の問診票の場合、患者の記入漏れを見逃したり、手書きの文字を誤読してしまう、電子カルテに誤って転記してしまうなどヒューマンエラーが起こりやすいです。
しかし、web問診であれば記入漏れや入力ミスを未然に防ぐシステムを搭載できたり、手書き文字ではないため誤読するリスクも少ないです。
また、電子カルテと連携すれば、web問診の入力情報はそのまま電子カルテに反映されるため、転記ミスも予防できます。
メリット4. 診療の質が向上する
web問診によって、診療の質の向上が期待できます。
web問診では事前に患者の状態を医師が把握でき、患者が来院する前から必要な準備を十分に行えるためです。
感染症を強く疑う患者の受診に備えて感染防御デバイスを用意したり、また症状が重篤そうな場合は診察の順番を入れ替えるなど、患者の状態に合わせて最適な医療を提供できるようになります。
メリット5. コストを削減できる
web問診を導入すれば、初期コストはかかるものの、長期的にはコストを削減できる可能性があります。紙の問診票の場合に発生するコストは主に下記の通りです。
- スタッフの人件費
- 紙やペン・バインダーなどのコスト
- 保管による空間的コスト
さまざまなコストが発生しますが、web問診であればシステムの更新・保守管理に伴うランニングコストのみです。
また、web問診によるスムーズかつ質の高い診療は患者満足度の向上、ひいては患者増にもつながるため、コスト削減のみならず収益増加も見込めます。
web問診のデメリット
web問診にはメリットだけではなく、主に下記4つのデメリットも存在します。
- ランニングコストがかかる
- 患者に一定のITリテラシーが必要
- 医療スタッフにも一定のITリテラシーが必要
- 情報量が増えてしまう
デメリット1. ランニングコストがかかる
web問診のデメリットの1つが、ランニングコストです。
システムの保守管理や更新にかかる費用はもちろんのこと、用途に合わせてオプション機能やカスタマイズを途中追加したり、故障トラブルの対応などによって追加費用が発生します。
また、ランニングコストとは別に、導入する際にもシステムの設置や設定に初期費用がかかり、さらにはスタッフのIT教育にも人件費がかかります。
そのため、いくつかのシステムを慎重に比較し、自院の規模や用途にあったシステムを選定した上で、導入が経営的負担にならないか検討することも重要です。
デメリット2. 患者側に一定のITリテラシーが必要
web問診の導入にあたり、患者側に一定のITリテラシーが必要となります。
web問診ではスマホやタブレットを使ってweb問診を入力したり、病院内に設置されたQRコードを読み込んで入力する必要があるため、スマホ操作に不慣れだと入力が困難です。
特に高齢者にとって、スマホやPCを使ってのweb問診入力はハードルが高いでしょう。
デメリット3. 医療スタッフにも一定のITリテラシーが必要
web問診の導入にあたり、医療スタッフにも一定のITリテラシーが必要となります。
web問診に切り替えることで、入力について患者からの多くの質問が予想されるため、現場の医療スタッフは事前にリテラシーを身につけておく必要があるでしょう。
また、入力された電子データの集計や、電子カルテへの情報連携も、ある程度リテラシーがなければ行えず、むしろ紙の問診票より時間がかかってしまう可能性があるため、導入にあたって入念な教育が必要です。
デメリット4. 情報量が増えてしまう
web問診の設計を誤ると、情報量が増えすぎてしまうため、注意が必要です。
web問診システムは自由に内容をカスタマイズでき、予約システムとの連携や、予防接種の通知など、問診以外のさまざまなサービスを付帯できます。
欲張ってあれもこれも追加すると、あまりにも情報量が増えてしまい、患者がシステムを使いこなせなくなる可能性があるため、注意が必要です。
web問診システムのタイプとポイント
web問診システムにはさまざまなタイプのものがあり、それぞれ向き不向きな業務内容や特化した性能、患者の使用感は異なります。
自院の業務内容や求める性能にマッチしないと有効活用できず、導入に失敗してしまうため、事前にどのようなタイプを検討すべきか、把握しておくことが重要です。
ポイントは主に3つです。
- どのような業務内容に特化しているか
- どのような性能か
- どのように患者が問診を入力するか
ポイント1. どの業務に特化したシステムか
web問診システムは特化する業務内容によって下記の2つに大別できます。
- 病院・診療所業務向け
- 健診・人間ドック向け
病院・診療所業務向け
病院・診療所業務向けのweb問診システムは、医師や医療スタッフの業務負担の軽減を目的として設計されており、医療機関の業務効率化を重視するシステムです。
病院や診療所の場合、予約・受付・診察・検査・決済など、さまざまな工程を伴うため、より多機能なシステムが適しています。
病院・診療所業務向けのweb問診システムの多くは、web問診以外にも電子カルテ・予約管理・レセプトなど、さまざまな機能と連携できるため、業務効率化を目指せるでしょう。
健診・人間ドック向け
健診・人間ドック向けのweb問診システムは、健診に訪れた大人数の患者のデータ管理に特化したシステムです。
健診や人間ドックでは、多くの問診の質問事項に大人数の患者が答えるため、そのデータ管理やデータ精度が問題となります。
そこで、健診・人間ドック向けのweb問診システムでは記入漏れや整合性を自動でチェックでき、医療機関側は各患者の回答状況を一覧でチェックできるため、大人数のデータでも正確に管理可能です。
ポイント2. 性能別
web問診システムは性能別に下記の2つに大別できます。
メリット |
デメリット |
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web問診特化型 |
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簡易問診 |
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web問診特化型
web問診特化型のシステムは、その名の通り、問診票のweb化に特化しており、他の機能をあまり付帯していないシンプルなシステムです。
問診内容を細かく設定したり、好みに合わせてカスタマイズできるのが魅力です。
他システムとの連携など、煩雑な作業も不要で比較的容易に導入できますが、他機能を付帯していないため、個別でシステムを導入するコストが発生します。
多くの機能は望まず、紙の問診票をweb化したいと考える医療機関におすすめです。
簡易問診(他システム内包)型
簡易問診(他システム内包)型のシステムは、web問診とともに予約管理や電子カルテなどの機能が付帯されているシステムです。
web問診特化型のシステムと異なり、電子カルテや予約管理システムとともに導入できるため、コスト面や利便性でのメリットが大きい一方、問診機能自体は基本的なものに限られます。
問診内容は簡易的でいいから、他のサービスとセットで導入したい医療機関におすすめです。
ポイント3. 患者が問診回答するタイミング
web問診システムを利用するためには、インターネット環境やスマホ・PCなどの端末が必要不可欠です。
患者の年齢層やインターネット環境の有無に関わらず、どの患者でもweb問診を利用できるよう、主に下記の3つの対応方法が用意されています。
- 来院前にWebサイトから記入するタイプ
- 医院で患者自身のスマホを使って記入するタイプ
- 医院でタブレット端末を用意し記入するタイプ
来院前にwebサイトから記入するタイプ
来院前にwebサイトから記入するタイプでは、自宅や病院への移動中に問診票の入力が可能です。
また予約管理システムと連携しておけば、予約と同時にそのまま問診票を入力できます。
さらに、問診入力の時間を削減できるため、待合室の混雑を緩和できます。
一方で、このタイプはインターネット環境やスマホ・PCなどの端末を持っていない患者では利用できないため、注意が必要です。
医院で患者自身のスマホを使って記入するタイプ
医院で患者自身のスマホを使って記入するタイプでは、医院に設置したQRコードを患者に読み込んでもらい、患者自身のスマホからその場で問診票を入力してもらいます。
紙の問診票を配る手間や、問診内容を確認する手間が省けるため、受付の業務負担は軽減されますが、その場で患者が問診内容を入力する時間は削減できません。
また、このタイプも患者自身がQRコードを読み込むスマホなどの端末を所有している必要があるため、注意が必要です。
医院でタブレット端末を用意し記入するタイプ
医院でタブレット端末を用意し記入するタイプでは、医院が事前に用意したタブレット端末を使って患者に問診を入力してもらいます。
スマホを持たない高齢者やスマホの小さい画面ではうまく対応できない患者には優しいサービスです。
一方で、タブレット端末の導入により初期費用がかかり、その場での入力となるため問診内容を入力する時間は削減できません。
web問診システムの選び方のポイント
web問診システムを提供するメーカーは複数あり、それぞれのメーカーで特徴や強みが異なるため、自院のニーズや業務内容にあったシステムの選定に迷われる方も少なくないでしょう。
ここでは、web問診システムを選ぶためのポイントを3つ紹介します。
- 自院に合ったシステムタイプを選ぶ
- 問診設計のカスタマイズ性や柔軟性
- 周辺システムとの連携・拡張性
選び方のポイント1. 自院に合ったシステムタイプを選ぶ
まずは、自院に合ったシステムタイプを選びましょう。
前項で紹介したように、web問診システムにはさまざまなタイプがあり、選ぶタイプによって機能や適正ユーザーも異なります。
例えば、高齢者の多い医療機関でスマホ必須のweb問診を導入すれば、混乱は必須です。
常に混雑している医療機関であれば、問診以外のさまざまなサービスを付帯して一元管理可能なシステムを導入し、受診前にweb問診を入力してもらえば、業務効率化による混雑緩和が期待できるでしょう。
自院の患者層や規模、ニーズにあったシステムを選ぶことが重要です。
選び方のポイント2. 問診設計のカスタマイズ性や柔軟性
web問診システムを選ぶ際は、問診設計のカスタマイズ性や柔軟性を重視すべきです。
医療機関によって受診する患者の病状や質には偏りがあり、それに伴い問診で深掘りしたい情報も異なります。
そのため、問診内容を医療機関側が自由に設計できたり、カスタマイズできるかどうかで、問診の質にも大きな差が出ます。
また、デザイン性もよりシンプルなものにカスタムできれば、高齢者でも使いやすく、患者に受け入れてもらえるでしょう。
選び方のポイント3. 周辺システムとの連携・拡張性
web問診システムを選ぶ際は、周辺システムとの連携、つまり拡張性がどの程度かも重要です。
電子カルテとweb問診を連携できれば、web問診の内容を直接カルテに反映できるため、転記ミスや業務負担を軽減できます。
また、予約管理システムとweb問診を連携できれば、予約とともに問診入力が始まるため、患者の利便性はより向上します。
問診に特化した機能ではなく、決済や予約、診療など、業務全般の効率化を図りたい方は、より拡張性の高いシステムを選ぶべきです。
web問診システムの導入手順
web問診システムの導入手順は下記のステップです。
- 自院のニーズを確認する
- ニーズに合ったシステムの見積もりを比較し、マッチするシステムと契約する
- システムに合ったネットワークの構築や端末を揃える
- 自院に合った問診内容をカスタムする
- 院内周知し、スタッフ教育を進める
- 自院のHPなどにリンクを設置する
- 患者への周知を図る
先述したように、自院のニーズや規模・用途に合わないシステムを選ぶと有効活用できなくなるため、まずはニーズを確認し、その上でニーズに合ったシステムを選定しましょう。
導入後は、自院に合った問診内容を設計し、実際の使用法をスタッフに教育することが重要です
まとめ
この記事では、web問診のメリット・デメリットや各タイプの特徴、失敗しない選び方などについて紹介しました。
新型コロナウイルスの流行や医療業界全体のICT化を受け、web問診の導入を検討される医療機関も増えています。
自院の患者層やニーズを的確に見極め、自院にあったweb問診システムを選べば、業務効率化や患者の利便性向上など、さまざまなメリットが得られます。
一方で、選び方を間違えればコスト増や患者離れにつながる可能性もあるため、本記事を参考に、失敗しないシステム選びを心がけましょう。