
医療DXとは?メリットや懸念点、事例、推進方法をわかりやすく解説
医療DX(ディー・エックス)とは、医療・保健・介護に関する情報をデジタルで連携・活用し、業務効率化や医療の質向上、患者の利便性向上を目指す取り組みです。
単なる紙業務の電子化ではなく、電子カルテ情報の標準化や全国医療情報プラットフォームの整備、診療報酬改定DXなどを通じて、医療情報を安全かつ有効に活用できる体制を整えることが重要視されています。
本記事では、医療DXとは何かといった基本的な定義から、医療業界で求められる背景、政府の推進施策、導入メリット、懸念点、医療機関で進めるためのステップまでをわかりやすく解説します。

この記事の監修者
株式会社エムネス
メディカルソリューション本部長 執行役員
放射線診断専門医
島村 泰輝
2012年に名古屋市立大学医学部を卒業。同大学大学院医学研究科を修了し、医学博士を取得。放射線診断専門医。名古屋市立大学病院および地域の基幹病院での勤務を経て、2019年に株式会社エムネスへ入職。遠隔画像診断に従事する傍ら、医師視点を活かしたプロダクト開発・設計にも携わる。2025年1月より執行役員 メディカルソリューション本部長に就任。医学部生を中心とした学生団体「MNiST」の監修も務める。
目次[非表示]
- 1.医療DXとは?定義・目的・背景をわかりやすく解説
- 2.医療DXが求められる背景|日本の医療業界が抱える課題
- 3.医療DXの最新動向と政府の推進施策
- 4.医療DXのメリット
- 5.医療DXの具体例|医療機関で進む主な施策
- 5.1.施策事例1. カルテや処方箋の電子化
- 5.2.施策事例2. 予約・問診・診療のオンライン化
- 5.3.施策事例3. 公費負担医療制度の資格確認、費用請求のオンライン化
- 5.4.施策事例4. ビッグデータやAIの活用
- 6.医療DXの懸念点とは?推進前に確認したいリスクと対策
- 6.1.懸念点1. データ保護・セキュリティ管理
- 6.2.懸念点2. 医療従事者のITリテラシー
- 6.3.懸念点3. デジタル格差
- 6.4.懸念点4. 導入コスト
- 7.医療DXの推進を成功に導く!導入のための5ステップ
- 7.1.ステップ1. 医療現場の現状把握と課題の棚卸し
- 7.2.ステップ2. 課題に対する実践的・具体的なDX施策を選定する
- 7.3.ステップ3. 組織文化の変革と人材教育を進める
- 7.4.ステップ4. システム導入と運用のスタート
- 7.5.ステップ5. 費用対効果を計測し、改善を続ける
- 8.まとめ
医療DXとは?定義・目的・背景をわかりやすく解説

医療DXとは、保健・医療・介護に関する情報をデジタルで連携・活用し、医療現場の業務効率化や医療の質向上を目指す取り組みです。単なるデジタルツールの導入ではなく、医療データを安全に共有・活用できる仕組みを整えることが重要です。
ここでは、まずDXの意味を整理したうえで、医療分野における医療DXの具体的な定義や重要性、背景について解説します。
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは
医療DXのDXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略であり、デジタル技術によって業務の効率化や競争優位性の獲得を図り、消費者へのサービス向上を目指す変革のことです。
新型コロナウイルス流行に後押しされる形で、国内でも近年さまざまな分野・業界でDX化が進んでいます。
今後の医療業界においては、超高齢化社会やそれに伴う人材不足、さらには地域間格差の深刻化が予想されており、生産性の向上は必須課題となっています。医療の効率化や質の向上が期待できるDX化が強く求められています。
医療分野におけるDX(医療DX)とは
医療分野におけるDXとは、保健・医療・介護において発生する情報やデータを、クラウドなどの共通基盤を介して一元的に管理し、データの共通化や標準化を図ることで、より良質な医療の提供を目指すことです。(厚生労働省ホームページ「医療DXについて」より)
例えば、これまでバラバラに管理されてきた電子カルテやお薬手帳・予防接種歴などの医療情報も、デジタル化によってクラウドで一元的に管理することで、医療従事者はより情報を把握しやすくなります。
さらに、患者自身もマイナンバーカードで自身の医療情報にアクセスできることで、自発的な健康促進も期待でき、双方にとって有益です。
ほかにも、電子カルテの標準化や診療報酬改定の自動管理など、さまざまなデジタル化が進んでいます。
医療DXが求められる背景|日本の医療業界が抱える課題

日本の医療業界では、高齢化、人材不足、医師の働き方改革、紙や電話に依存したアナログ業務など、複数の課題が重なっています。医療DXは、こうした課題に対して業務効率化や情報共有の改善を図る手段として期待されています。
医療業界が抱えている課題で、医療DXの促進によって解決が期待できるものは以下の通りです。
- 人材不足
- 小規模医療機関の経営難
- 医師の働き方改革
- アナログ文化
厚生労働省が公表している「将来推計人口(令和5年推計)の概要」によれば、2070年には日本の総人口は8,700万人まで低下し、そのうち65歳以上が3,367万人(38.7%)にのぼると推計されています。
そのような状況で人手不足や診療報酬の低さから経営難に陥っている医療機関は少なくなく、特に小規模な医療機関では深刻な問題です。それに加え、医師の働き方改革が断行されたことにより、少ない労働時間で、これまで以上の診療をこなす必要があります。
これらの背景から、今後患者と医療従事者の需給バランスはさらに逼迫し、患者に提供できる医療の質や量が低下するのは間違いありません。国としても医療の効率化と質を担保できるよう、地域医療連携を推進するなどしています。
【参考】日本と世界の医療DXの状況比較
日本における医療DXは、諸外国と比較しても残念ながら遅れているのが現状です。
日本経済団体連合会「医療DXの推進状況と各国比較」によると、シンガポールでは、2011年に全国医療記録(NEHR:National ElectronicHealthRecord)という集中型の地域医療情報連携(EHR:ElectronicHealth Record)システムの構築を開始し、2024年には100%に近い医療機関が登録しています。
フランスではすでに「マイ健康情報スペース」と呼ばれるサービスによって、全国の医師・患者間で電子カルテ等の健康医療情報が共有可能です。同様に、イギリスでは「GPオンライン」、イスラエルでは「EITAN」と呼ばれるサービスを用いて医療情報を共有できています。さらにEUでは、各国間で診断時の患者情報や電子処方箋がやりとりできるようインフラ整備を進めています。
医療DXの最新動向と政府の推進施策
医療DXは、全国医療情報プラットフォームの整備、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DXなどを中心に進められています。制度や工程は段階的に更新されているため、医療機関は最新の政策動向を踏まえて対応を検討する必要があります。
一方で、医療現場では現在も紙やFAX、電話を前提としたアナログ運用が残っており、紙媒体でのデータ処理・保管を行っていることで無駄なコストや時間が発生しているのが現状です。
独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によれば、医療・福祉産業のDX取組状況はわずか9.3%にとどまっており、他産業と比較して進行状況が進みにくい状況にあることがわかります。
産業 | DX取り組み状況(%) |
|---|---|
金融業・保険業 | 45% |
情報通信業 | 45% |
不動産業・物品賃貸業 | 23% |
サービス業 | 23% |
製造業 | 23% |
卸売業・小売業 | 23% |
建設業 | 21% |
運輸業・郵便業 | 17% |
宿泊業・飲食サービス業 | 16% |
医療・福祉 | 9% |
独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」より抜粋し筆者作成
こうした状況を受け、自由民主党政務調査会は2022年5月、「医療DX 令和ビジョン2030」を提唱しました。これは、医療・介護分野における情報共有のあり方を抜本的に見直し、全国規模で医療情報を安全かつ効率的に活用できる社会基盤の構築を目指すものです。
現在、日本政府は医療DX推進本部を立ち上げ、主に以下の3つを柱として医療DXを推進しています。(参考資料「医療DXの推進に関する工程表(案)」)
- 全国医療情報プラットフォームの創設
- 電子カルテ情報の標準化等
- 診療報酬改定DX
医療DXの推進施策1. 全国医療情報プラットフォームの創設
全国医療情報プラットフォームとは、医療機関・薬局・介護事業者・自治体などが保有する医療情報を、安全に共有・活用するための基盤です。医療DXの中核となる取り組みの一つであり、患者情報を必要なタイミングで適切に連携できる環境整備が進められています。
従来は、紹介状や検査データ、処方情報などを紙やFAX、CD-ROMでやり取りするケースも多く、情報共有に時間や手間がかかるだけでなく、紛失や入力ミスなどのリスクもありました。
全国医療情報プラットフォームでは、こうした医療情報をデジタルで共有できるようにすることで、業務効率化や医療の質向上、地域医療連携の強化が期待されています。
現在は、オンライン資格確認や電子処方箋の普及に加え、「電子カルテ情報共有サービス」の整備も進められています。これにより、診療情報提供書(紹介状)や検査結果、アレルギー情報、処方情報などを医療機関同士で共有しやすくなり、重複検査の削減や、救急・災害時における迅速な情報共有などにもつながると期待されています。
また、地域医療連携や遠隔医療の推進にもつながるため、今後は医療機関単体ではなく、地域全体で医療情報を活用する時代へ移行していくと考えられています。(参考資料:厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテ情報の標準化等について」)
医療DXの推進施策2. 電子カルテ情報の標準化等
これまで電子カルテは、各医療機関が異なるベンダーや独自仕様で運用しているケースも多く、医療機関同士で情報共有を行う際に手間やコストが発生していました。
そこで政府は、電子カルテ情報の標準化を進めており、医療機関間でデータを円滑に共有できる環境整備を推進しています。
電子カルテ情報が標準化されることで、診療情報提供書や検査データなどをよりスムーズに連携しやすくなり、地域医療連携や救急医療、転院対応などの効率化が期待されています。
また、厚生労働省は「標準型電子カルテ」の整備も進めており、中小規模医療機関でも導入しやすい環境づくりが進められています。2030年頃までには、概ねすべての医療機関で電子カルテ導入を目指す方針も示されています。
電子カルテについては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
医療DXの推進施策3. 診療報酬改定DX
診療報酬改定DXとは、診療報酬改定に伴うシステム改修やマスタ更新、算定対応などを効率化するための取り組みです。
従来、診療報酬改定のたびに、医療機関やベンダーはレセコンや電子カルテなどのシステム改修対応に多くのコストと工数を要していました。特に中小規模の医療機関では、改定対応が大きな負担となるケースも少なくありません。
現在は、共通算定モジュールや電子点数表の整備が進められており、診療報酬改定時のシステム改修負担を軽減し、医療機関・ベンダー双方の効率化を図る方向で検討が進んでいます。
また、こうした診療報酬改定DXは、単なる事務効率化だけでなく、医療情報の標準化やシステム連携の促進にもつながる重要な施策として位置づけられています。(参考資料:厚生労働省「診療報酬改定DX対応方針」)
医療DXのメリット

医療DXのメリットは、医療機関の業務効率化だけではありません。患者の利便性向上、医療の質向上、予防医療への活用、災害時のデータ保全など、医療提供体制全体の改善につながる点が特徴です。医療DXのメリットは主に以下の4つです。
- 医療現場での業務効率化
- 医療における質・満足度の向上
- 予防医療につながる
- データの保存性が向上する
メリット1. 医療現場での業務効率化
医療DXによってさまざまな医療情報や事務作業がデジタル管理できるため、医療現場での業務効率化が図れます。
他医療機関からの資料取り寄せ、医療資源の在庫管理、経理関連業務など、これまで時間やコスト、手間のかかっていた作業が省略され、さらにはヒューマンエラーも予防できます。また、これらの業務に割いていた人件費削減にもつながるため、コスト削減も可能です。
クラウドシステムを利用した業務効率化について解説した以下の記事もぜひ参考にしてください。
メリット2. 医療における質・満足度の向上
医療DXによって医療機関は過去の患者情報を正確かつ迅速に取得できるため、患者に提供できる医療の質・満足度向上が目指せます。自施設には情報がなくても、過去の他院での診療情報があれば、過剰な検査や投薬を避けることもできます。
また、web問診ツールを導入すれば患者は問診票の記載などの手間が省けますし、オンライン診療が普及すれば、病院での待ち時間も削減可能となり、患者の満足度も向上できるでしょう。
メリット3. 予防医療につながる
医療DXによって、これまで以上に膨大なデータを一元的に管理・分析できるようになります。ビッグデータを活用することで、ある病気のリスク因子を予測でき、予防医療を促進できます。また、ビッグデータは新たな治療法や新薬の開発にも有用です。
メリット4. データの保存性が向上する
医療DXによってデータをクラウド上で管理することで、データの保存性が向上します。
これまで紙媒体で保存していたデータや、病院内に設置したサーバーにデータ保存する、いわゆるオンプレミス型電子カルテの場合、その医療機関に地震や火災が生じるとデータが全て失われる危険性がありました。
インターネット上のクラウドにデータ保存すれば、いつでも自由に情報を引き出すことができ、医療機関で災害が起きてもデータは守られます。
医療DXの具体例|医療機関で進む主な施策
医療DXは、電子カルテや電子処方箋、オンライン診療、web問診、AI活用など、さまざまな形で医療現場に導入されています。ここでは、医療機関で実際に検討しやすい代表的な施策を紹介します。
施策事例1. カルテや処方箋の電子化
カルテや処方箋を電子化することで、これまで必要としていた紙媒体のコストや保管スペースの削減が目指せます。
また、先述したようにクラウド上で管理すれば、データ損失のリスクも軽減できるのもメリットです。
施策事例2. 予約・問診・診療のオンライン化
予約受付や問診表の記載をオンライン化することで、受診の手続きに伴う時間や手間を削減でき、医師もスケジュールを管理しやすくなります。
また、診療自体もオンライン化することで受診の手間を省き、院内での感染リスクも軽減できます。オンライン上で診察ができるようになれば、遠隔地からの受診も可能となるため、地域間医療格差の是正にも有用です。
施策事例3. 公費負担医療制度の資格確認、費用請求のオンライン化
乳幼児医療費助成制度や障害者医療費助成などの公費負担医療制度を利用する場合、現状では医療機関でマイナンバーカードによる身分確認とともに、公費受給者証を窓口で提示する必要があり、二度手間です。そこで、公費受給者証をマイナンバーカードに一本化することで、手間を省くことができます。(参考資料:健康保険組合連合会「オンライン資格確認による公費負担医療制度の受給資格の確認について」)
また、レセプト請求もこれまで紙媒体や光ディスクで行われてきましたが、2024年4月1日以降は原則オンラインのみとなりました。これによりセキュリティの強化や利便性の向上が期待されます。(参考資料:厚生労働省「オンライン請求への移行に向けて」)
施策事例4. ビッグデータやAIの活用
先述したように、医療DXによってこれまでより膨大な医療情報を容易に管理できるようになります。
得られたビッグデータは、新薬や新たな治療方法の開発、予防医療の促進などに活用可能です。
また、医療情報をAIに学習させるためには膨大なデータが必要ですが、膨大なデータを効率よく得られる医療DXと組み合わせることで、より効果的に活用できます。
AI技術を活用することで、診断支援や治療計画の最適化、化合物の検索や患者の予後予測などに利用できます。
2024年末に行われたRSNA(Radiological Society of North Americaの略)・北米放射線学会の総会でもAIは大きなテーマとなっており、現地に参加した医師のレポートも以下の記事にまとめております。ぜひこちらもあわせてご覧ください。
医療DXの懸念点とは?推進前に確認したいリスクと対策
医療DXを進める際は、セキュリティ対策や導入コスト、医療従事者のITリテラシー、患者側のデジタル格差などにも注意が必要です。メリットだけでなく、導入前に想定されるリスクを把握しておくことが重要です。
医療DXの導入における懸念点は、主に以下の4つです。
- データ保護・セキュリティ管理
- 医療従事者のITリテラシー
- デジタル格差
- 導入コスト
懸念点1. データ保護・セキュリティ管理
医療DXにおいては、これまで紙媒体で管理していた医療情報を一元的にクラウド上で管理するため、情報漏洩やハッキングなどのリスクがあります。
サイバー攻撃や第三者の不正アクセス防止のためにも、強固なシステム設計はもちろんのこと、利用者もセキュリティ意識を高く保つことが重要です。
医療情報システムにおけるセキュリティ管理や、個人情報の安全な利活用に関するポイントが解説された、以下のセミナーレポートもあわせて参考にしてください。
懸念点2. 医療従事者のITリテラシー
医療DXが導入されても、医療従事者のITリテラシーが低ければ有効活用できません。
取り扱うには、トラブル対応やシステムアップデート・メンテナンスなど、医学的知識とはまた別の知識が必要となるため、専門人材の採用・育成や、全ての医療従事者のITリテラシーの向上が求められます。
懸念点3. デジタル格差
デジタル格差とは、なんらかの理由でデジタルツールを利用できない人と利用できる人を比較した時に、受けられる医療の質に格差が生まれることです。
例えば、医療過疎地に暮らす若者にとってオンライン診療は非常に有用ですが、オンライン診療に必要なPCやスマホを持たない高齢者にとってはメリットがありません。
医療DXが進めば進むほど、デジタル格差も広がっていく可能性が示唆されます。
懸念点4. 導入コスト
先述したように、デジタルツールの購入や人材育成にコストがかかるため、小規模な医療機関や跡継ぎのいないクリニックの場合、初期費用を回収できない可能性があります。
特にオンプレミス型のシステムは導入コストが高くつく傾向にあります。クラウド型のシステムをうまく活用していくことも有効なポイントと言えます。
また、政府は一定の要件を満たす企業や事業者を対象に「IT導入補助金」の交付も行っているため、こちらもあわせてチェックしてみると良いでしょう。
医療DXの推進を成功に導く!導入のための5ステップ

医療DXを成功させるには、システムを導入する前に現場課題を整理し、目的に合った施策を選ぶことが重要です。導入後も効果測定と改善を続けることで、業務効率化や患者サービス向上につなげやすくなります。
医療DXを実際に導入し成功させるためには、下記のようなステップが重要です。
- 医療現場の現状把握と課題の棚卸し
- 課題に対する実践的・具体的なDX施策を選定する
- 組織文化の変革と人材教育を進める
- システム導入と運用のスタート
- 費用対効果を計測し、改善を続ける
ステップ1. 医療現場の現状把握と課題の棚卸し
医療DXは「なんとなくデジタル化する」だけでは思ったような成果は得られません。まずは現場のボトルネックを正確に把握し、どの課題をDXで解決すべきかを考えましょう。
現状把握したい指標の一例としては、以下の項目が挙げられます。
- 紙運用率(紙カルテ、紙台帳、紙問診などの割合)
- 二重入力の発生箇所(電子カルテ・PACS間、受付〜診療のフローなど)
- 患者の平均待ち時間(予約〜受付〜診察までのリードタイム)
- 電話対応件数と対応時間(予約・問い合わせがどれだけ発生しているか)
- スタッフの時間外労働(残業時間)
- バックオフィス業務の工数(レセ作業、紙書類作成等)
- トラブル頻度(紙紛失、フィルム紛失、システムダウンなど)
- データ共有の負担(紹介状・画像CD作成業務の量)
これらの現状データを取得し、どのDX施策を優先的に取り組むとインパクトが大きいかを明確にし、無駄な投資を防ぎましょう。
ステップ2. 課題に対する実践的・具体的なDX施策を選定する
課題が明確になれば、その課題解決に対する実践的・具体的なアプローチを選定しましょう。
一例にはなりますが、以下のような課題とDX施策が考えられます。
- 【課題】患者の待ち時間を改善したい → web問診・順番受付システムの導入
- 【課題】情報連携を効率化したい → 電子カルテ標準化・クラウドPACSの導入
- 【課題】事務業務を削減したい → 自動精算機の導入
- 【課題】地域医療連携を強化したい → 紹介状共有システムの導入
それぞれの医療現場によって抱えている課題は異なるため、自院で何を改善させれば患者サービスの向上や業務効率化を図れるのか評価し、スモールスタートで始めましょう。
ステップ3. 組織文化の変革と人材教育を進める
従来のアナログな方法に依存し、デジタル化への理解に乏しい組織風土であるほど、システム導入をしただけで医療DXが成功することはありません。導入したシステムを組織文化に定着させるための体制作りと人材教育が不可欠になります。
組織文化の変革を進めるためには、医療DXに対する不安やネガティブなイメージを払拭するために以下を段階的に進めていく必要があります。
- DX担当者や推進リーダーを選任する
- ITに強い人材の確保、あるいは外部委託し、DX担当者の教育を行う
- 現場スタッフにDX化の取り組み内容を理解してもらう機会を作る
- システム導入時に集合研修を行う・自院に合わせた操作マニュアルを整備する
- アナログ運用を段階的に廃止し徐々に浸透させていくルール設定を行う
いきなり大規模にDX化を進めると、現場は混乱してしまいます。まずは担当者レベルの教育から、そして導入前に現場への共有会を設けて共通認識をもってもらうなど、スモールスタートでの運用をすることが重要です。
ステップ4. システム導入と運用のスタート
現場の課題解決を担える医療DXのシステム選定ができ、人材育成が整ったら、実際に見積もりを取り、導入するための準備を進めましょう。
また、よくある思い違いとして、医療DXの導入コストを無駄なコストとして捉え、システム導入が思ったように進まないことです。医療DXを推進する多くの場合、システム端末台やランニングコストなど、金銭的なコストが発生します。しかし、システム導入することで業務効率化が進み、結果として人的および時間のコスト削減につながり、安定した業務フローの構築や経営改善につながる可能性が大いにあります。
また、施設規模に見合った設備・システムを、まずはスモールスタートで導入することもポイントです。医療DXのシステム導入コストやランニングコストが高額となってしまうこともあり、特に小規模な医療機関では導入コストによって経営が圧迫される可能性もあります。オーバースペックになっていないかも含め、必ず見積もりをとって確認するようにしましょう。
ステップ5. 費用対効果を計測し、改善を続ける
DXの価値は、導入後に生まれます。導入した施策により、どの程度効果を発揮しているかを定量的に評価することが大切です。効果測定に使える、具体的な指標の一例は以下の通りです。
- 業務工数削減時間(受付・レセ業務・画像共有手間の短縮)
- 削減できた残業時間/人件費
- 患者待ち時間の改善
- 紹介患者数の増加(地域連携強化による)
- 紙・フィルム・CD-ROM等の物理コスト削減
- 医療安全の改善(ヒューマンエラー減少)
一概にコストとして計りづらいものもありますが、削減できたコスト・効果が出た指標や価値から、導入コスト・運用コストを差し引き、費用対効果を測定するといいでしょう。
費用対効果は、導入後の3ヶ月後、半年後など一定期間を設けて計測し、定期的に院内共有することで新たなDX施策も推進しやすくなります。
また、思ったように効果がでていない場合は、つまづいているポイントを整理して運用ルールを見直すようにしましょう。
まとめ
医療DXは、医療現場の業務効率化や医療の質向上を実現するための重要な取り組みです。制度動向や現場課題を踏まえ、自院に必要な施策から段階的に進めることが、無理のないDX推進につながります。
まずは自院の現状の課題を洗い出し、適切なデジタルツールの導入や人材育成を行うことで効果的に医療DXを導入し、業務効率化や無駄なコストの削減を目指しましょう。
クリニックで医療DXを実施するために意識したいポイントを以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
弊社のクラウド型医療情報管理共有システム「LOOKREC」は、クラウドPACSとしても利用でき、導入費用0円・更新費不要でご利用いただけます。医用画像の管理・共有をクラウド上で行えるため、コスト負担や運用負荷の軽減にもつながる選択肢の一つです。
また、Google Cloudを利用し、セキュリティ面にも配慮した運用が可能です。医療DXに向けたシステム導入を検討している方は、以下より資料をダウンロードし、ご検討の際にお役立てください。







