健康診断を効率化するには?巡回健診の業務工数を1/3以下に削減する術
各分野にてDX化が叫ばれる昨今、独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によれば、医療・福祉産業のDX取組状況はわずか9.3%と、他産業と比較して圧倒的に遅れていると言われています。
そのなかでも健診業務を専門とする健診センターや巡回健診は、受診者の数やレポートの転機数も多く、まだまだアナログ業務が多い業務のひとつです。医療DXが到来するなか、健康診断も同じく効率化を進めていく必要性が高まってきています。
この記事では、日頃から健診センターの方々とやりとりをする機会が多い弊社スタッフへのインタビューをもとに、医療現場や健診施設の生の声や現状についてまとめました。巡回健診の課題や業務工数を減らすための解決策についても解説するので、ぜひ最後までご一読ください。
巡回健診を効率化!
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医療業界全体のリソース
━━ まずは一般的な医療業界全体のリソースの話をふまえ、それらが健診施設の読影業務にどのような影響を及ぼしているか、そして青木さんが日々健診施設様の方から現場の声としていただく生の声もぜひお伝えいただきたいです。
青木さん(以下、青木) 令和4年に厚生労働省が公表した「医療提供体制の国際比較(OECS加盟国との比較)」をご覧ください。
まず「13床」という数字。こちらは日本国内の人口1000人あたりの病床数になります。この数字はOECD(経済協力開発機構)諸国と比べたときに人口あたりの病床数が圧倒的に多いことが読み取れます。
次に「12.5回」という数字。これは日本国民の1人あたりの年間の受診回数になります。これもOECD諸国と比較し、日本人はより多く病院に通っていることが読み取れます。
また「27日」という数字。こちらは1人当たりの平均在院日数です。あくまで平均値として、一度病院にかかると入院患者として1ヶ月弱、病院にいることになります。これもOECD諸国と比較すると入院期間・在院日数が長いことが読み取れます。
最後に、2.5人という数字。こちらは現在の日本の人口1000人あたりの医師(ドクター)の数です。こちらもOECD諸国と比較したところ、今までとは打って変わって人口比での医師の数、いわゆる医療を提供する側のリソースは比較的少ないことが読み取れます。
これらはあくまで一般的な数字ですが、人口1000人あたりの病床数・年間1人当たりの病院に行く頻度及び受診回数・入院患者の平均の在院日数は、OECD諸国と比較して高い反面、医療サービスの提供者側である医師の数が少ないのが今の日本の医療の現状となっています。
━━ こういったリソース不足を表す数字が一般的であるにも関わらず、なぜ日本ではレベルの高い医療サービスを提供できるのでしょうか。
青木 最近ですと「医療ツーリズム」という形で、海外の富裕層の方々が、日本の質の高い医療を求めて訪日されることも多々あります。
では、なぜリソース不足であるにも関わらず、日本ではレベルの高い医療サービスを提供できるのか。それを裏付けるデータとして、厚生労働省が令和元年に日本の医師を対象にした「令和元年 医師の勤務実態調査」の結果の一部をご紹介します。
日本には、約30万人強の医師がいると言われてますが、その上位1割にあたる約3万人強のドクターの年間時間外労働時間は1,824時間になるという調査結果がでました。
1824時間を単純に計算すると、1日7時間以上の時間外労働をしている状態で、一部のドクターによる重労働、過重労働によって、レベルの高い医療サービスが担保できている状態なんです。
しかし、こういった法外な医師の時間外労働時間が問題視され、医師の働き方を見直そうと医師の働き方改革が始まり、年間の時間外労働時間を、おおよそ半分の960時間にまで上限を下げようという目標設定を厚労省側が示されています。
健診施設における課題感と今後の展望
━━ 健診施設においても同様の状態なのでしょうか?
青木 釈迦に説法ではありますが、人口あたりのCTやMRIといった医療画像を撮影する検査機器・モダリティ数は、OECD諸国と比較し日本は圧倒的に多い現状です。
ここまでの一般的な医療業界のリソース不足の話と、放射線領域では読影医の数が少ない状況にも関わらず、生み出すモダリティの数が多い。
これらが健診読影業務に与えている影響としてよく聞く話としては、病院の一般診療の業務後、つまり夕方以降の残業時間帯に読影対応されている施設様が多いことです。
ただ、先ほどもお示しした通り、今後はいわゆる医師の働き方改革によって、医師の残業時間の規制が必然的に厳しくなっていきます。
各健診施設様が課題として今抱えているのが、夕方以降の健診特例業務の時間が確保できない未来がすぐそこまでやってきているということです。
━━ これまでと同様の読影体制やリソースだと業務が回らず、読影のプロセスや工程を効率化する必要があるということですね。
青木 そのとおりです。読影リソースの持ち方、読影の前工程や読影後の機関システムに取り込む後工程の全体のプロセスの運用を見直し、より効率化を図らなければ、今までと同じ件数をさばけないといった課題感を持たれている健診施設様がとても多いです。
さらに、多くの健診施設様では、定年を迎えた放射線診断専門医の方々を再雇用し読影をされており、必然的に古くからの運用スタイルやアナログ運用が継続されているケースが多いんです。
昔ながらの紙に記入されたアナログ運用の読影は、現場の職員や放射線技師の方々が転記作業を行ない、最終的に院内の機関システムや健診システムに取り込むため、業務負荷がかかります。
━━ 少し話を変えて、健診施設の展望として現場の方々からよく聞くお話しはありますか?
青木 日々営業活動させていただく中で、日本の人口推移が減少するにあたって、今抱えている受診者数も比例し減少することを危惧する声は現場の方々からもよくお聞きします。
中長期的に健診施設の経営を考えている施設様ですと、大きく2つの観点があります。
ひとつは、今いる受診者さんに、来年・再来年と引き続き自施設を利用いただくために受診者の囲い込みたいといった観点。もう一つが、そもそも今の健診対象エリアを拡大、もしくは都道府県レベルで県境を超えて、自分たちの健診対象施設の領域を広げたいといった観点です。
これらの2つの観点を展望として見据えていらっしゃる施設様は多いですね。
巡回健診とは?巡回健診における運用方法と課題
━━ 健診エリアを拡大する手段はどのようなものがあるのでしょうか。
青木 健診エリアの拡大の手段として、巡回健診、いわゆる巡回車の運用があるかと思います。
巡回健診とは、健康診断を受診する方が健診センターや病院に足を運ぶのではなく、健診を行う施設側がホテルの会議室や公民館などの会場に出向いて行う健康診断になります。もしくは、観光バス程度の大きさの巡回健診車を利用するケースもあります。
巡回健診は、社員数が多く健診の予約を取るのが大変な会社や、仕事が多忙で受診時間を短時間で終了させたいといったニーズがある会社が利用するケースが多いですね。
今、巡回車を持たれている施設様は、巡回車を使い、より効率的に対象エリアを拡大しています。また、今は巡回車を持っていないけれども、今後エリアの拡大をするなかで、巡回車の購入を検討したいという声もお聞きしますね。
━━ 巡回健診となると健診自体の運用方法や、読影業務に影響がある部分についても教えてください。
青木 まず、一般的な巡回健診現場の運用についてお話しします。
巡回健診は、基本的に巡回先では臨時の検査ナンバー(アクセッションナンバー)、いわゆる匿名画像として巡回車の中でその場で撮像した画像を管理します。
そして、巡回車が帰還後、USBか何かで巡回車の中からデータ画像を引き抜いて、院内のシステムに取り込んでいきます。つまり、夕方以降にこういった作業をされるケースが多いです。
帰還後には、現場の職員や技師の方々が、検査ナンバーと、院内で管理している患者IDとの突合作業を手作業で夕方から始めることになります。ですので、読影作業自体がスタートするのは、早くても翌日以降になります。そして、読影終了後のレポートを健診システムに取り込んでいく。
ざっくりとですけれども、こういった運用をされている施設様が多いんです。
ただ、この運用だと読影が開始されるまでに時間を要します。
さらに、読影業務がアナログな運用をされている施設様の場合、最終的な機関システムへの転記の作業などの手間も考慮すると、読影の結果が出るまで約1週間ほどの営業日かかる施設様が多い印象です。また、巡回健診のエリアが広い施設の場合、読影完了後、健診の総合判定結果の変却が、10日から2週間程度かかってしまうケースもあります。
最近お話を伺った東京の施設様では、北海道の事業所の健診を受注していました。
巡回車を北海道まで運び、北海道内を1週間かけて巡回を行っているものの、巡回車を回収するまでに時間がかかります。
少しでも早く読影を始められるよう、社員が出張健診先に赴き、撮影画像だけを抜き出して施設に持ち帰ったり、郵送対応で東京の施設に送るといった運用をされていました。
クラウドソリューションを利用すれば健診業務の効率化が叶う!
━━ アナログ運用をされている健診業務や巡回車健診の現場からは、どのような課題感をお持ちなのでしょうか。
青木 巡回健診をされている施設の方々からご相談いただく課題感として多いのが、巡回車が帰ってこないと読影を開始できないといった物理的な壁を打破したいということ。
これらはクラウドソリューションを利用すれば解決できます。
弊社の主力サービスである、クラウド型DICOMデータプラットフォーム「LOOKREC」をご活用いただいた場合、読影を始めるまでのプロセスを大幅に短縮化できます。
具体的には、巡回車の方にネット環境に接続できるPCを用意し、撮影した画像をクラウド側にアップロードします。そうすれば巡回車が帰還せずとも、クラウドにアップロードされた時点から読影を始めることができます。
クラウド上でデータを扱うので、物理的な距離や人の手を返さず転記作業なども発生しないため、これまでの運用が効率化され業務のスピード感があがったというお声をお聞きします。
また、もう1点、健診施設様からよく聞く課題としては、巡回健診や健診センターでは、一斉に大量の読影依頼がくるため、読影リソースが足りなくなるということです。
特に、4月・5月の集団健診の繁忙期になると、読影件数が増え業務負荷が集中し、その結果、受診者への結果返却のスピード感が鈍化することもよく聞く話のひとつです。
エムネスでは、現役の放射線診断専門医が立ち上げた会社で、先ほどお伝えしたクラウドソリューションである「LOOKREC」と、遠隔読影の事業も展開しております。
遠隔読影の事業では、業界最大級の常勤読影医が10名以上在籍しており、診断やレポートの質をご評価いただくことも多く、LOOKRECをご契約いただくと同時に遠隔読影もご契約されるケースがほとんどです。
しかし、施設様によっては、既に院内の読影体制が整っている場合もあります。
例えば、放射線診断専門医がいる院内リソースで読影を完結させている施設様や、既存のベンダーと長年の関係がある施設様もいらっしゃいます。
その場合は、既存の読影システムのインフラ刷新という形で提供しています。
ですので、施設様それぞれの事情に応じて、読影システムのみの提案も可能です。
読影システムを導入する場合、読影を行う先生方へのオンボーディングや使用方法のレクチャーもご案内いたしますので、安心して導入いただけるようにサポートいたします。その点はぜひご安心ください。
━━ 健診数を増やしていきたい、効率化を測りたいといった健診施設の方々の参考になれば嬉しい限りですね!現場での声も踏まえてのお話し、ありがとうございます!