
経営改善に繋がる!クラウド型PACSのメリット・オンプレミスシステムとの違いを徹底解説
近年、電子カルテを筆頭に医療用管理システムであるPACSでも、クラウド型の導入が浸透しています。
クラウドシステムは、初期費用やサーバー管理の手間を抑え、災害対策にも強いことから、新規開業クリニックを中心にスタンダードになりつつあります。しかし、「オンプレミスシステムとの違いがわからない」「具体的な導入メリットを知りたい」という声も少なくありません。
本記事では、ソリューションエンジニアとしてクラウド導入に携わる鳥畑と内藤にてクラウド型PACSと従来のオンプレミス型との違いをわかりやすく解説。さらに、具体的なメリットの提示、そしてエムネスのクラウド型PACS「LOOKREC」を活用した医療DXの事例もご紹介します。
そもそもPACSとは何かといった基本的な内容は、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。


クラウド化が進む医療情報システムの市場動向
―― まずは簡単にクリニックにおける医療情報システムの市場動向について教えてください。
鳥畑貴詩(以下、鳥畑) 近年、医療情報システムの世界では大きな変化が起きており、特に2022年から2023年に新規開業したクリニックにおいては、約70%がクラウド型電子カルテを採用しています。電子カルテのクラウド化がスタンダードになりつつあると言えるでしょう。
――その中でPACSの市場はどうなっているのでしょうか。
鳥畑 PACS全体の市場規模自体は約600億円で横ばい傾向にありますが、市場の中でクラウド型PACSの導入施設数が着実に増加しています。電子カルテのクラウド化に伴い、親和性の高いクラウド型PACSがクリニックを中心に今後も増加していくだろうと予測できます。
PACSにおけるクラウドとオンプレミスの違いとは?
―― 「クラウド」という言葉がでてきましたが、そもそもクラウドシステムの特徴について教えてください。
内藤洋俊(以下、内藤) 多くの医療機関ではオンプレミスサーバーを使って画像管理をしていると思います。オンプレミスとは院内にサーバーを設置し、そこで画像を管理したり、医師に見てもらったりする形態です。
一方のクラウドとは、院外の環境に画像を保管する形でインターネットを経由することで医師に見てもらったり、病院連携で使うことができます。

内藤 わかりやすく例えるなら、オンプレミスは「タンス預金」、クラウドは「銀行預金」と想像してみてください。焦点となるのは安全性と利活用です。
タンス預金の場合、自分の目の届く範囲で管理はできますが、家が火事になったり泥棒に入られたりするリスクがあります。また利活用する場合、タンスから現金を取り出して運んだり、支払ったりする必要があります。
一方、銀行預金の場合、管理はすべて銀行がしてくれるので防災対策や盗難対策は必要ありません。ネットバンキングを使えばインターネット経由での支払いや投資など、利活用も簡単にできます。

―― たしかにタンス預金に比べると銀行預金の方が安全性が高く、利活用もしやすそうです。
内藤 今の例えはお金でしたが、画像も同様です。オンプレミスの場合は、病院側でサーバー管理をする必要があります。利活用についても、その都度CD-ROMやUSBのような記憶媒体にデータを格納して持ち出さなければなりません。
一方、クラウドであれば、サーバー管理はクラウドベンダーがしてくれますし、インターネット経由で画像の閲覧や共有が簡単にできるのでメリットが大きいと言えます。
―― なるほど!わかりやすい例えですね。これからシステムを導入する場合は、クラウドシステムの利用を考慮したほうがよいのでしょうか。
内藤 そうですね。クラウドの特性を最大限に活用できるよう設計された「クラウドネイティブ」のシステムを選ぶことをおすすめしています。例えば当社のPACS「LOOKREC」もクラウドネイティブのシステムです。
オンプレミス型と比較!クラウド型PACSがもたらす4つのメリット
―― 従来のオンプレミス型PACSと比較すると、クラウド型PACSにはどのようなメリットがありますか。
鳥畑 大きなメリットとしては導入コストを抑えられる点です。また基本的にクラウド型PACSの保守や管理は事業者が行うので、クリニックの先生やスタッフがサーバーに関する専門的な知識を持つ必要がありません。
一方でカスタマイズの自由度や通信環境の依存に関しては、現状オンプレミス型PACSの方が優位ですが、近年のネットワーク高速化や技術進歩によって、その差は小さくなることが見込まれています。

―― クラウド型PACSのメリットは他にもありますか。
鳥畑 クラウド型PACSにはコスト削減の他にも、「拡張性」「災害対策とバックアップ」「柔軟なアクセスが可能」といったメリットがあります。
先ほどお伝えしたとおりサーバー設置のための初期費用が抑えられる他、維持するためのメンテナンスコストも大幅に削減することが可能です。
また、検査画像のデータ量が増え続けても、クラウドであれば柔軟に容量を拡張でき、院内に大きなサーバーを抱える必要もありません。
――それが「コスト削減」と「拡張性」ですね。残り二つの「災害対策とバックアップ」「柔軟なアクセスが可能」についても教えてください。
鳥畑 災害対策(BCP対策)とバックアップについても、データ自体が国内データセンターで冗長化されて保管されるので、万が一の災害時にもデータが守られ、迅速な復旧を可能にします。
またクラウドなのでインターネット環境さえあれば、場所を選ばず安全にデータにアクセス可能です。例えば院外からの画像確認や、他院とのデータ連携がスムーズに行えます。

医療DXや柔軟な働き方にも繋がる!クラウド型PACS「LOOKREC」とは?
―― エムネスの医療情報管理共有システム「LOOKREC」について教えてください。
鳥畑 LOOKRECは「ためる」「見る」「記録する」「共有する」の四つの基本機能で、お客様のさまざまな課題を解決するプラットフォームです。
LOOKRECはGoogleクラウドプラットフォームを利用しているため、院内にサーバー設置の必要がなく、インターネットブラウザだけで画像の閲覧が可能。電子カルテと一台のパソコンだけで完結することができます。
院内にサーバーを置かないので、定期的なサーバーリプレイスの必要がなく、オンプレミスに比べ安価に容量追加が可能です。

―― 「LOOKREC」は、現在どのくらいの施設で導入されているのですか。
内藤 2021年4月時点では約140施設に導入されていましたが、2025年10月時点では1,600施設を突破し、約11倍に伸びています。
また、検査画像の数でみてみると、2025年8月末日時点で1,700万件の検査画像が保存されています。画像サイズにすると約880TB(テラバイト)です。
―― すごい量のデータですね!ちなみに4つの基本機能に「記録する」「共有する」とありますが、クラウド型PACSとしての使用用途以外でも活用できるのでしょうか。
鳥畑 LOOKRECにはレポートシステムが搭載されているので、保存した画像を見ながら読影記録を作成することも可能です。
また、クラウドの特性を活かした遠隔読影の環境として活用もできます。閲覧用URLを発行するだけで他科へコンサルテーションを依頼できたり、非常勤医師が来院せずとも自宅での読影が可能になります。
内藤 エムネスでは遠隔読影センターを保有しているので、LOOKRECのオプションとして遠隔読影サービスを利用いただくことも可能です。
その他のオプションでは、3Dビューアをご利用いただけたり、最近はエルピクセル社の診断支援AI「EIRL」がオプションとして使用できるようになりました。これにより日常の読影作業にAIが組み込まれ、業務負担の軽減にもつながると考えています。
―― 「LOOKREC」をうまく活用すれば柔軟な働き方が実現できそうですね。
鳥畑 クラウド型PACSとしてはもちろん、施設間の画像共有におけるハブとしての機能も果たします。従来のようにCD-ROMやUSBなどの物理媒体で共有する必要がなく、紹介先の医療機関と安全に画像データの共有が可能です。これにより患者の待ち時間やスタッフの作業の手間、CD-ROMの作成にかかるコスト削減を実現します。
また、クラウドを介して画像を先に共有することでスムーズな病院間連携を実現し、地域医療や救急の課題解決の一助にもなることも考えています。
――今後クラウド型PACSが普及していく中で、LOOKRECは医療の質を向上させるプラットフォームとしての価値を発揮できそうですね。ありがとうございました!
LOOKRECや遠隔読影などエムネスのサービスについては以下の無料ダウンロード資料よりご確認いただけます。ぜひご検討ください。
また、本記事内にも出てきた医療DX、地域医療連携、医師の働き方改革など医療業界で話題の内容は、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらの記事もぜひ参考になさってください。







