
医療AIの現状と導入効果とは?医療現場の未来が変わる画像診断支援AI×クラウド型PACSの連携【セミナーレポート】
ChatGPTをはじめ、さまざまなAI技術が徐々に私たちの身の回りにも浸透し始めています。もちろん医療の現場においてもAI技術を活用したさまざまなソリューションが登場しています。
今回は、医療AIを取り巻く現状や日本の画像診断市場が抱える課題、画像診断支援AIが診療にもたらす効果をエルピクセル株式会社の西田氏に、エルピクセル社の画像診断支援AI「EIRL(エイル)」とクラウド型PACS「LOOKREC」の連携についてエムネスの内藤に解説していただきました。
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医療AIの現状とは?画像診断支援AIが解決できる課題
―― まずは医療AIを取り巻く状況を教えてください。
西田美和氏(以下、敬称略) 医療AIの国内市場は、2035年までに563億円の市場規模拡大が見込まれています。また、医療画像におけるAIの海外の市場規模で見てみても2032年までに142億ドル(約2兆円)の市場規模拡大が見込まれており、今後もまだまだ成長していく市場だと言われています。

―― すごい市場規模ですね!国内のプログラム医療機器(SaMD)はどのように変化しているのでしょうか。
西田 2023年5月時点では322だった製品数が、2025年3月時点では382に増えています。SaMD全体は年々増加していますが、特に画像診断支援系のSaMDが圧倒的に多い状況です。

―― 日本の画像診断市場における課題についても教えてください。
西田 日本の放射線科医の潜在的業務量は米国の約2.7倍あり、医師にかかる負担が非常に大きな状況です。さらに国内でも都道府県間の地域差が大きく、放射線科医の負担軽減は喫緊の課題であると言えます。
さらに画像診断の見落としも大きな課題です。実際に画像診断の見落としによって患者の死亡につながったケースもあります。意図せず見落としが発生してしまうリスクが常にあると考えてよいでしょう。このような課題解決を担うのが画像診断支援AIとなります。
現在製品化されている画像診断支援AIの対象領域や機能

―― 日本国内で認可取得済みの画像診断支援AIにはどのようなものがあるのでしょうか。
西田 現在、日本国内で認可取得済み製品の対象領域としては、頭部MRIやCT、胸部CT・X線、腹部MRI、眼底カメラ、咽頭カメラ、マンモグラフィ、乳房超音波、上部・下部内視鏡検査製品など広範囲にわたります。
―― 画像診断支援AIの機能はどういった機能があるのでしょうか。
西田 画像診断支援AIには、主に「病変検出支援機能」「病変鑑別支援機能」「自動計測・領域可視化機能」といった3つの機能があります。
一つ目は、CADeと呼ばれる病変検出支援機能で、病変候補の位置を自動検出し、診断を支援する機能を持っています。
―― 二つ目の機能「病変鑑別支援機能」とはどういったものでしょうか。
西田 病変鑑別支援機能とは、CADxと呼ばれるものです。病変の検出だけでなく、良性・悪性の鑑別や疾患の進行度といった質的な診断に関する情報を提示するAI機能になります。
――三つ目の機能「自動計測・領域可視化機能」についても教えてください。
西田 三つ目の「自動計測・領域可視化」の機能とは、疾患の検出をするものではなく、特定の領域を抽出したり、自動計測を行ったりする機能になります。
画像診断支援AIの役割と導入メリット!得られる3つの効果
―― 実際に臨床現場にて診断支援AIを活用するとなった場合、AIはどのような立ち位置になるのでしょうか。
西田 ご存知のとおり、医師法においては「診断は医師が行う」と定められています。その中で「AIは診療プロセスの中で医師主体判断のサブステップにおいて、その効率を上げて情報を提示する支援ツールにすぎない」「判断の主体は少なくとも当面は医師である」と定義されています。
AIはあくまでも医師の補助ツールであり、医師に代わって診断を行うことができないのが現在の状況です。
―― 医師の補助ツールとして画像診断支援AIを導入すれば、どのような効果を得られるのでしょうか。
西田 画像診断支援AIを導入することで得られる効果は大きく三つあります。
まず一つ目は医療の質の維持です。医師不足の状況の中で、診断の質を保つことが求められていますが、医師も人間ですから疲労によって質が下がることもあります。画像診断支援AIは一定の性能で診断支援をすることができるので、医師の診断の質を維持するサポートが可能です。

―― AIは疲れ知らずですしね。他の効果についても教えてください。
西田 二つ目はAIのダブルチェックによる安心感が得られる点です。読影に十分な時間をかけられない、あるいは疲労に伴う見落としへの不安など、医師にかかる精神的負担は非常に大きなものがあります。
この状況のなかで画像診断支援AIを使ってダブルチェックをすることで、心理的・身体的な負担の軽減が期待できます。

三点目の効果は、AIを活用することで計測の手間とばらつきの軽減が実現可能です。検査によっては定量的な数値ではなく、医師の主観的な判断に委ねられることもあるため、結果にばらつきが生じることもありますが、AIを使った自動計測をすれば手間なく定量化ができ、客観的な数値で確認できるメリットがあります。

クリニック・中核病院における画像診断支援AIを活用した読影体制事例
―― 画像診断支援AIを導入されている現場では、どのような使われ方をされてますか。
西田 クリニックのように医師が1名で読影をしている場合は、まずは医師が読影をし、その後AIによるダブルチェックを実施します。AIの結果を含め、最終的に医師が診断をする形で使われています。
一人で読影せざるを得ない状況でも、AIによるダブルチェック体制によって心理的・身体的な負担の軽減が実現可能です。

―― 複数の医師が読影をしている場合はどのようにAIが使われるのでしょうか。
西田 まずは一次読影医がオリジナル画像とAIの検査結果を確認し、一次読影の結果を作成します。続いて二次読影医もオリジナル画像を確認し、二次読影結果としてまとめます。場合によっては二次読影医もAIの結果を確認してレポートを作ります。
一次読影医をAIがサポートすることで、二次読影医に頼り切らない体制の構築が可能です。

―― 画像診断支援AI「EIRL」を導入している医師からは、どのようなコメントが寄せられているのでしょうか。
西田 まずは地域のかかりつけクリニックの事例です。こちらのクリニックではX線検査を行った際、すべての症例に対してAI解析を実施しています。
ある日、80歳女性の胸部X線画像を撮影して画像を確認し「大丈夫」とお伝えしていたのですが、その後AIの解析結果を見ると見落としがあったことが発覚しました。この一例だけで費用対効果があったとコメントをいただいています。
―― まさに画像診断支援AIを活用し、解析結果の見落としを回避できた事例ですね。
西田 ほかにも、がん治療を行う中核病院の事例もあります。放射線診断専門医が圧倒的に不足しており、日常の読影業務に支障をきたしていることから画像診断支援AIを導入しました。
あるときAIが一時的に使えなくなったのですが、このときに読影を一旦保留する医師が出始めたそうです。画像診断支援AIを使い続けることで、読影にAIが手放せなくなったとコメントをいただきました。
―― AIを導入していることは、他院との差別化にも繋がりそうですね。
西田 実際に脳ドックで画像診断支援AIを導入し、他院との差別化を図っているクリニックもあります。医師による二重読影に加え、AIでのトリプルチェックをすることで、患者への結果説明の際にAIの解析結果を見せながら説明でき、コミュニケーションツールとしても活用しているそうです。
AIを活用することは、見落とし防止だけでなく他院との差別化や検査のリピートにも繋がっていくと言えます。
―― 受診者目線で医療AIはどのように映っているのでしょうか。
西田 当社では大阪・関西万博での次世代医療機器等体験コーナーに出展した際に、受診者から「以前AI脳ドックを受けた」「AIが入っている医療機関を知りたい」といったコメントを多くいただきました。受診者にとっても医療AIに対する認知は確実に広がっているようです。
業務効率化や一次読影も視野に!AI診断の今後の進化

―― 今後、画像診断支援AIはどのように進化していくのでしょうか。
西田 まずは業務フロー全体の効率化です。例えば検査リストを優先度順に並べ替えたり、読影レポートが自動生成されるAIが考えられます。
―― 業務効率化はAIの得意分野ですから、実現の可能性は高そうです。
西田 また網羅的に診断を支援し、一次判断を任せられるAIに期待が寄せられています。現状は医師のダブルチェックに使われていますが、画像内の所見をAIがすべて拾い上げ、そこで所見のあるものだけを医師が診るといった形で一次診断をAIに任せられるような未来が来ると考えています。
―― AIが一次診断をできるようになれば医師の作業負担も減りそうです。
西田 画像情報だけでなく、血液検査や遺伝子情報、問診や病歴、心電図などの情報をAIが解析し、医師が普段実施している複合的な判断ができるAIが増えれば、より医師の負担も軽減できそうです。
―― 今後のAI活用では、疾患の検出だけでなく、業務効率化につながる付加価値が求められるということですね。
クラウド型PACS「LOOKREC」と画像診断支援AI「EIRL」が連携可能に!医療現場にもたらす未来とは

―― 続いて、クラウド型PACS「LOOKREC」と「EIRL」の連携についてお話いただきます。まずは「LOOKREC」について簡単に紹介をお願いします。
内藤洋俊(以下、内藤) LOOKRECには「ためる」「見る」「記録する」「共有する」の四機能があります。オンプレミスのPACS機能に当たるのが「ためる」「見る」機能、レポートシステムに当たるのが「記録する」機能です。他の病院に画像を「共有する」機能はクラウドならではのものになります。
―― LOOKRECのオプションとして画像診断支援AI「EIRL」が利用できるようになったとお聞きしました。どのような流れで利用できるのでしょうか。
内藤 図の①~④の流れは「LOOKREC」を使った通常の流れです。⑤では保存した画像から事前に設定した条件に合致するものをクラウドを通じて「EIRL」のサーバーに送ります。新しいシステムを導入したりワークフローを変えずに、自然な形で画像診断支援AI「EIRL」をご利用いただけます。

―― データ連携にはどの程度の時間がかかるのでしょうか。
内藤 約2~8分程度です。そこから⑥の「EIRL」側での解析が行われ、結果が当社のサーバーに返ってきます。こちらは1~2分程度かかります。検査画像のアップロードから解析結果の保存まで、トータル5~15分程度を見込んでいます。
結果は「LOOKREC」の画面に「AI」のアイコンがついた状態で表示されるため、普段「LOOKREC」を使うのと同じ操作でAIを活用することが可能です。
―― AIを活用することによって、クラウド型PACSは将来的にどのように変わっていくとお考えですか。
内藤 私たちが普段Amazonで買い物をするように、ユーザーがその日に使いたいAIを自由に選択できる未来が実現できるのではないかと考えています。
また既存のプラットフォーム上でAIの仕組みを取り入れることができれば、ユーザーはAIベンダーと一件一件契約する必要がなくなるため、よりAIの活用が身近に感じられるようになるのではないかと思います。
―― 普段利用しているプラットフォーム上でAIを活用できるようになれば、より業務効率化や医師の負担軽減が実現できそうですね!ありがとうございました。
診断支援AI「EIRL」とクラウド型PACS「LOOKREC」の連携に関するQ&A
Q.LOOKRECと連携可能なLPIXELの製品は?
A.現状は胸部X線画像から肺結節候補域を検出できる「EIRL Chest Nodule *1」、胸部X線画像における包括的な読影支援ができる「EIRL Chest XR *2」、脳MRA画像から脳動脈瘤の検出支援ができる「EIRL Brain Aneurysm *3」の3製品との連携が完了しております。
*1 製造販売承認番号:30200BZX00269000 販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL X-Ray Lung nodule
*2 製造販売承認番号:30400BZX00285000 販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest XR
*3 製造販売承認番号:30100BZX00142000 販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL aneurysm
Q.A Iの対象とする画像に設定できるフィルターは?
A. DICOMタグの中身はおおよそ対象となります。文字列の部分一致・完全一致、数値での大なり・小なり、検査日や生年月日での設定が可能です。ただし、年齢はDICOM画像上では文字列として保存されているため数値の対象外となります。
Q.LPIXELでEIRLを導入するとなった際の費用はどのくらいかかりますか?
A. LOOKRECの通常の月額費用にプラスし、EIRLのオプション代金が月額利用料に加算される形になります。個別でお見積もりいたしますのでご興味のある方はお問い合わせください。
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また、画像診断AIやPACSについての基礎的な内容をまとめた以下の記事もぜひ参考にしてください。







