夜間・救急時の医師の働き方改革!クラウド嫌いな私がクラウドを選んだ理由とは?【セミナーレポート】

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24時間365日休むことなく動き続ける医療現場では、夜間や休日を問わず業務を行う医師が多数おり、医師の業務負担軽減が急務とされています。

2024年4月より「医師の働き方改革」が施行され、時間外労働時間の上限が定められましたが、なかなか改善が進んでいないのが現状だと言えます。医師の働き方改革の一環として注目されているのがICT技術の活用です。

本セミナーでは前半に株式会社エムネス 診療放射線技師・医療情報技師・医用画像情報専門技師の須藤 優からクラウド技術を使った医師の働き方改革について、後半では大船中央病院 放射線科 主任 診療放射線技師・上級医療情報技師・医用画像情報専門技師の青木 陽介氏より、夜間救急時に医師が病院に来ることなく、クラウドを活用し画像参照ができる環境構築をされた事例をそれぞれお話いただきました。

登壇者プロフィール_大船中央病院 放射線科主任 青木技師

登壇者プロフィール_株式会社エムネス須藤技師

目次[非表示]

  1. 1.「医師の働き方改革」と現状
  2. 2.クラウドは医療画像の管理に適さない
  3. 3.クラウド嫌いの私がクラウド型PACS『LOOKREC』の導入に踏み切った理由
  4. 4.「医師から医師」へのタスクシフト・タスクシェア
  5. 5.ICT導入は働き方改革につながるが課題も多い

「医師の働き方改革」と現状

━━ 医師の業務負担軽減を目的とした「医師の働き方改革」が2024年4月より施行されました。概要を教えてください。

須藤優(以下、須藤) 2024年4月以降、医師の時間外労働の時間上限が定められました。原則、年960時間、月100時間未満という制限が設けられています。

【セミナーレポート】医師の働き方改革_医師の時間外・休日労働時間上限の水準

また厚生労働省も「医師の働き方改革」.jp という専用ホームページを設け、本格的に医師の長時間労働改善に向けた取り組みをしています。


━━ 実際の医師の働き方の現状はどのようになっているのでしょうか。

【セミナーレポート】医師の働き方改革_病院常勤勤務医の週労働時間の区分割合

須藤 令和元年に行われた医師の勤務実態調査の結果として、病院常勤医の週労働時間の区分別割合データが出ており、40%以上の医師が960時間の上限を超えていることが分かります。

また上位10%を見ると、時間外が年1824時間、中には2880時間の医師もいます。これは週100時間以上勤務、残業時間に換算すると月200時間を超えており、非常に負荷の大きな労働状況と言えるでしょう。

時間外労働の理由として一番多いのは「患者対応・ケア」の72%です。次いで「事務作業」、今回のテーマにも関連する「緊急対応」が約60%を占めています。

【セミナーレポート】医師の働き方改革_医師の時間外労働の理由

このような状況の中で、医療従事者の勤務環境改善がどのように取り組まれているかの調査結果も出ています。最も多いのが「補助職」、つまり医師事務作業補助者や看護補助者の配置、次いで「当直明け勤務者に対する配慮」、タスクシフトの文脈にも通じる「チーム医療・多職種連携」などが挙げられています。

【セミナーレポート】医師の働き方改革_医療従事者の勤務環境改善に関する主な取組について

━━ 勤務環境改善の取り組みには「ICT・IoT技術の活用」も挙げられています。

須藤 そこでお話したいのが「改革につながるクラウドシステム」です。特に夜間救急時の専門医へのコンサルに注目してお話をします。

救急外来に患者さんが来て、CTやMRを撮ったときに、当直の医師では判断がつかず、専門の診療科の医師や上級医にコンサルテーションをしたいというケースは少なからずあると思います。

従来であれば、医師に電話やメールで状況を知らせて指示を仰ぐのが一般的ですが、それではお互いに共通の画像を見ているわけではないので意思疎通が難しく、結果的に医師に病院まで来てもらわなければならず、医師の負担増にもつながります。

そこで貢献できるのがクラウド技術の活用です。クラウドに画像を上げることで、病院側も自宅にいる医師側も同じ画像を見ながらコミュニケーションが取れるため、正確に診断ができます。医師もすぐに病院に向かうべきか、指示を出すだけで良いかの判断ができるので、夜間救急時の負担減少にクラウド技術が貢献できると考えています。

クラウドは医療画像の管理に適さない

━━ 青木さんは「クラウド嫌い」であることを標榜されていますが、それはなぜでしょうか。

青木陽介氏(以下、青木) 私は大船中央病院でPACSや画像系のシステムを中心としたシステム管理の仕事も担当しています。もちろんクラウドを完全否定しているわけではなく、Gmailをはじめ、さまざまなクラウドサービスを使っています。

ただ、クラウドは従量課金制であり、データ容量が大きくなりがちなPACS画像を管理するには不向きだと考えており、医療にクラウドを活用するメリットを見いだせないことから「クラウド嫌い」を掲げています。


━━ データ容量を増やさずに運用することはできないのでしょうか。

青木 確かに5年経過したデータは削除したり、圧縮したりして容量を節約する方法もあります。しかし当院では2003年のPACSにアクセスするケース、例えば「慢性疾患の患者さんのデータを振り返りたい」、あるいは「がん治療後の長期的なフォローアップをしたい」といったニーズが一定数あるため、単純に削除や圧縮することができません。

そこで当院ではオンプレミスでデータを管理をする方が体制に合っていると考え、画像は消さずに極力永久保管を目指すということで院内のコンセンサスを取っています。


━━ 他にもクラウド嫌いの理由はありますか。

青木 例えばセキュリティポリシーを含めたクラウド運用管理のルールは、ユーザーとクラウドメーカーで結びます。しかし、メーカー側には法律の専門家がおり、その人たちが約束事を決めているため、事実上メーカーが運用管理ルールを握っています。
法律の素人である一般ユーザーが定款を読み込み、完全に理解するのは事実上不可能なため、一定の不安要素が残るといった面でも、医療画像の管理にクラウドは使わないと決めています。

クラウド嫌いの私がクラウド型PACS『LOOKREC』の導入に踏み切った理由

━━ 大船中央病院では救急外来対応もしています。専門医へのコンサルテーションが必要な場合には、どのように対応しているのでしょうか。

青木 2000年頃から携帯電話のカメラ機能とメール機能を使っていました。画像が表示されているビューア画面の写真をカメラで撮影し、それを病院の外にいる医師に送って指示を仰ぐ方法です。病院の携帯端末で撮影した画像を、医師個人の携帯に送っていたわけです。

今どきの個人情報管理の観点からすると、これは明らかにNGですよね。さらに画像が歪んでしまったり、部屋の照明が映り込んでいたり、さらには画質が悪かったりで、そのような画像では正確な診断ができるわけがなく,患者さんの大まかな状況を把握する程度のことしかできないことも問題でした。しかし、ないよりはあったほうがいいという現場からのニーズも根強く、簡単にやめることもできないくらい現場では重宝されていました。

さすがに何らかの手を打たなければということで、この度、当院では救急対応のコンサル体制を維持・運営するにクラウド型PACS『LOOKREC』を導入しました。


━━ LOOKREC導入の決め手はあったのでしょうか。

青木 まず操作性です。LOOKRECはUIが非常に分かりやすいので、画像診断が専門でない医師でもマニュアルなしで使えるのは大きいですね。

次に金銭的負担の軽さです。LOOKRECは従量課金ですが、当院での用途は「ミニPACS」であり、コンサルテーションが済んだら画像を削除するので容量をほぼ使っていません。

またセキュリティに関しては、エムネスという会社の特徴かもしれませんが、質問には何でも答えてくれる点もポイントです。特に責任分界点を聞いたときに明確に回答をいただけました。またGoogleのプラットフォームを使って提供されているので、セキュリティを含めた技術的な問題にも不安はありませんでした。

さらに機能要件の将来性、例えば欲しい機能や改善点を出したときに、エムネスはユーザーとの距離感が近く、非常にフットワーク軽く対応してくれそうな印象を受けました。

結論として、LOOKRECであればクラウド導入に懐疑的な私でも、問題なく導入できると考えました。

LOOKRECを選んだ理由

━━ LOOKRECを導入して、何か変化はありましたか。

青木 以前のように画像を携帯端末から送るだけだと、例えば「1スライス前の画像が見たい」というようなリクエストに柔軟に対応できませんでした。

LOOKRECならスタディー単位で画像を送ることができるので、院内にいるのと同じ感覚で全てのスライスの画像を確認できます。医師がストレスを感じることなく画像を閲覧できるので、臨床的な判断ができるようになったという意見がありました。

この「場所を選ばず院内にいるのと同じ感覚」で画像を確認できることこそが、医師の働き方改革に貢献できるポイントだと思います。

LOOKRECクリニック_資料ダウンロードボタン

「医師から医師」へのタスクシフト・タスクシェア

━━ 冒頭の須藤の話では医療従事者の勤務環境改善策として「タスクシフト」というワードが挙がりました。タスクシフトについてはどのようにお考えでしょうか。

【セミナーレポート】医師の働き方改革_タスクシフト/タスクシェア

青木 タスクシフトと似た言葉に「タスクシェア」がありますが、この二つは何が違うのか、簡単に説明します。

タスクシフトは、医師が行っていた業務を他の職種の人にお願いする、移動することです。
一方のタスクシェアは、医師の業務を複数の職種で分け合うことを指します。双方を上手に組み合わせることで医師の働き方改革を実現するという考え方になります。

医師の働き方改革の指標となるのが残業時間(時間外労働)です。残業時間を少しでも短くするために、業務内容を病院全体・医療業界全体で見直しましょうというのがタスクシフト・タスクシェアであり、厚生労働省も分かりやすく解説した漫画をホームページに載せています。

参考資料:いきサポ「マンガで学ぼう!医師の働き方改革


━━ タスクシフト・タスクシェアについて課題に感じることはありますか。

青木 タスクシフト・タスクシェアは医師から他の職種に業務を移す、あるいは他の職種と一緒に行うといった形で「医師から他の職種へ」という構図が見て取れます。職種を超えて業務を再配置して効率化し、最終的に患者さんへのメリットである医療の質が下がらなければ問題はありません。

一方で「医師から他の職種」ではなく「医師から医師」へのタスクシフト・タスクシェアはできないかという発想も必要だと考えています。医師同士、つまり診療科を越えて一人の患者さんを診るチーム医療ではなく、複数の診療科の違う切り口を持った医師が入ることでタスクシフト・タスクシェアはできないかということです。

医師同士のタスクシフト・タスクシェアを救急の現場に当てはめて考えると、当直医師の専門外の患者が来たときに、帰宅してしまった専門医師に患者の画像を送り一緒に診ることができれば、正確に情報を伝えあうことができます。専門医師がその場にいなくても患者の状況が分かるというのは最強の時短ではないでしょうか。

ICT導入は働き方改革につながるが課題も多い

━━ 厚生労働省のホームページではICT活用で業務を可視化・効率化することを推奨しています。

青木 ICTは導入することがゴールではなく、導入したツールを使いこなすフェーズに入ってからが勝負です。また、セキュリティ問題や個人情報保護対応など、ICTを活用する上で避けて通れない問題があります。つまりユーザー側のITリテラシーが重要になります。これらの問題は「少しパソコンに詳しい」というくらいで医療情報担当者になった人にとって、非常に荷が重いものです。

医療情報担当者にはICT知識だけでなく、経験や技術、部門を越えて調整するコミュニケーション能力など、幅広い能力が求められます。非常にレベルの高い仕事が要求されるわけです。
またITスキルを持った医師が優遇されていない点も問題です。医師免許とIT系国家資格の中でも最高峰の資格である「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」を持っている医師が、ある病院に「私を雇いませんか」と持ちかけたところ、医師の年収よりも下がったという事例もあるそうです。

国はICTを使って医療を良くしていくことを掲げ、さらにセキュリティ対策も医療機関の責任であると言っている割には、そこに対する補助がないどころか、人件費も捻出できない状況です。「そもそもの理解が足りていないのでは」とすら感じてしまいます。

そうは言っても医師の働き方改革にデジタルツールの活用は欠かせません
​​​​​​​当院もLOOKRECがそこに貢献してくれるツールになれば嬉しいですし、今後もICTという切り口から働き方改革につながる環境を構築していければと思います。


  医療ICTの必要性や課題とは?活用事例や導入メリットも解説 近年、教育や防災などさまざまな業界でICT化が進んでおり、医療業界においてもICT化を促進する傾向が高まっています。 医療ICTが進めば業務の効率化・安全性の向上・患者サービスの向上など数多くのメリットが得られ、医療業界の抱える課題解決にもつながります。 しかし、医療ICTを適切かつ効果的に導入するためには、メリットだけでなくデメリットや実際の活用事例を知り、自施設にうまく活かすことが重要です。 この記事では、医療ICTの必要性や課題・実際の活用事例やデメリットも紹介します。 この記事を読むことで、失敗せずに医療ICTを導入できるようになり、現場における業務負担や人手不足などの課題解決につながるでしょう。 株式会社エムネス

━━ 課題の多い医師の働き方改革ですが、まずは各病院に合ったICTツールを導入することがポイントになりそうですね。本日はありがとうございました。




執筆者:エムネス マーケティングチーム
執筆者:エムネス マーケティングチーム
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