医療ICTの必要性や課題とは?活用事例や導入メリットも解説
近年、教育や防災などさまざまな業界でICT化が進んでおり、医療業界においてもICT化を促進する傾向が高まっています。
医療ICTが進めば業務の効率化・安全性の向上・患者サービスの向上など数多くのメリットが得られ、医療業界の抱える課題解決にもつながります。(参考資料:総務省「医療分野におけるICTの利活用に関する検討会報告書」第2章 医療分野におけるICTの利活用の在り方 )
しかし、医療ICTを適切かつ効果的に導入するためには、メリットだけでなくデメリットや実際の活用事例を知り、自施設にうまく活かすことが重要です。
この記事では、医療ICTの必要性や課題・実際の活用事例やデメリットも紹介します。
この記事を読むことで、失敗せずに医療ICTを導入できるようになり、現場における業務負担や人手不足などの課題解決につながるでしょう。
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目次[非表示]
- 1.医療ICTとは
- 1.1.ICTとITの違いとは
- 2.日本の現状から見る医療ICT化の必要性
- 3.医療業界を取り巻く現状と課題
- 4.医療ICT化の活用事例やトレンド
- 4.1.1. 遠隔診療(オンライン診断・遠隔画像診断など)
- 4.2.2. カルテやお薬手帳の電子化
- 4.3.3. RFID
- 4.4.4. 地域医療情報連携ネットワーク
- 4.5.5.AIの活用
- 5.医療ICT化を導入するメリット
- 5.1.メリット1. 業務効率化を図れる
- 5.2.メリット2. 患者満足度の向上が見込める
- 5.3.メリット3. 地域医療連携・病診連携が活性化し医療格差が縮まる
- 5.4.メリット4. 新薬や治療法の研究・開発が活性化する
- 6.医療ICT導入の課題・デメリット
- 6.1.課題・デメリット1. セキュリティリスク
- 6.2.課題・デメリット2. 維持コスト
- 7.まとめ
医療ICTとは
ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、日本語で情報通信技術のことを指します。
これはつまり、スマホやPC、インターネット、テレビ会議システムなど、新たな情報技術を持つ通信機器・ソフトウェアを駆使して、多様なサービスを提供することの総称です。
医療におけるICTの代表例がオンライン診療で、医師の少ない僻地でもPCやスマホを使うことで、医師と患者がこれまでにない形で情報を共有(コミュニケーション)ができます。
このように、医療ICTの導入によって利便性や患者サービスの向上など、さまざまなメリットが得られます。
ICTとITの違いとは
2000年11月に制定されたIT基本法が日本におけるITの広がりのきっかけであり、ITとはInformation Technologyの略です。
日本語で情報技術という意味であり、ITとはその技術そのものを意味していますが、徐々にIT技術が浸透するとともに、IT技術を使って何ができるのか、が重視されるようになりました。
そこで、IT技術を駆使して新たなコミュニケーションやサービスを創造する意味で、Communicationという言葉を追加したICTという概念が生まれました。
日本の現状から見る医療ICT化の必要性
日本の医療業界は現状、下記のような課題を抱えています。
- 異次元とも言える超高齢化社会と少子化
- 医療現場における人材不足
- 医療機能の偏在
- 医療従事者1人当たりの負担増
- 国民1人当たりにおける医療費の負担増
厚生労働省が発表している「将来推計人口(令和5年推計)の概要」からも今後の日本は超高齢化社会と少子化が深刻化することがほぼ確実であり、生産年齢人口の低下に伴い医療現場における人材不足や、医療機能の偏在が予想されます。
当然、医療従事者1人当たりの負担は増し、医療費の自己負担割合が少ない高齢者が増加することで国民1人当たりにおける医療費負担の増加も予想されるため、事態は深刻です。
これらの課題解決のためにも、業務効率化を図れる医療ICTの必要性が年々高まっています。
医療業界を取り巻く現状と課題
このような背景から医療ICT化はもはや急務であり、政府が主体となって推進していますが、まだまだ課題だらけです。
独立行政法人情報処理推進機構の報告「DX白書2023」によれば、多くの産業がある中で医療業界のDX取り組み状況はわずか9%と、他産業と比べて著しく遅れていることがわかります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ICTを活用することで事業や経営はもちろん、社会の枠組みや生活に変革をもたらすことを指すため、医療DXの遅れすなわち、医療ICTの遅れとも言えます。
現状をさらに理解するためには、電子カルテやオーダリングシステムの普及率も重要なデータです。
一般病院 |
一般診療所 |
||||
年度 |
400床以上 |
200〜399床 |
200床未満 |
||
電子カルテ 普及率(%) |
平成20年 |
38.8% |
22.7% |
8.9% |
14.7% |
平成23年 |
57.3% |
33.4% |
14.4% |
21.2% |
|
平成26年 |
77.5% |
50.9% |
24.4% |
35.0% |
|
平成29年 |
85.4% |
64.9% |
37.0% |
41.6% |
|
令和2年 |
91.2% |
74.8% |
48.8% |
49.9% |
|
オーダリングシステム |
平成20年 |
82.4% |
54.0% |
19.8% |
- |
平成23年 |
86.8% |
62.8% |
27.4% |
- |
|
平成26年 |
89.7% |
70.6% |
36.4% |
- |
|
平成29年 |
91.4% |
76.7% |
45.6% |
- |
|
令和2年 |
93.1% |
82.0% |
53.3% |
- |
どちらの普及率も年々増加傾向ではありますが、小規模な病院や診療所ではまだ普及率が低いことがわかります。
次に、厚生労働省の「第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会資料」によれば、2021年4月〜2022年4月の間に電話やオンラインでの診療を実施できると登録した医療機関数の推移は14〜15%台に留まり、ほとんど頭打ちです。
さらに、厚生労働省の「地域医療情報連携ネットワークの現状について」 によると、地域における病院や薬局、他施設が患者の情報を電子化して共有・閲覧できるシステム「地域医療情報連携ネットワーク」は、地域によってシステムが全く機能していない、もしくは利用が低調であることが問題点として指摘されています。
このように、医療ICTは急務と言いつつ、広がりが不十分であるのが現状です。
医療ICT化の活用事例やトレンド
ここでは、医療ICTの実際の活用事例やトレンドを6つ紹介します。
- 遠隔診療(オンライン診断・遠隔画像診断など)
- カルテやお薬手帳の電子化
- 電子タグ
- 地域医療情報連携ネットワーク
- AIの活用
1. 遠隔診療(オンライン診断・遠隔画像診断など)
医療ICTの代名詞とも言えるのが、オンライン診療や遠隔画像診断などの遠隔診療です。
遠隔診療によって、時間や場所を問わず医療を提供できるようになるため、医療の地域間格差是正につながります。
処方できる薬に制限があるものの、患者の受診体験の効率化、待ち時間軽減や、受診による院内感染リスクの低減などもオンライン診療のメリットです。
さらに、オンライン診療における初診料は、令和4年の診療報酬改定で214点→251点に増加しており、今後参入する医療機関の増加も見込まれます。(参考資料:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項II(情報通信機器を用いた診療)」)
2. カルテやお薬手帳の電子化
カルテやお薬手帳の電子化も医療ICTの代表例です。
クラウド上にデータ管理する電子カルテであれば、他医療機関との情報共有や会計の自動化などが可能となり、既存の紙カルテより効率的です。
また、お薬手帳は持ってくるのを忘れたり紛失によって内容を確認できないケースが少なくありませんが、電子化することで簡単に確認できます。
3. RFID
医療ICTとして、RFIDの導入もおすすめです。
RFIDとは「Radio Frequency Identification」の略で、専用の電子タグを人やモノに装着することで、無線通信でその情報が自動で取得できるシステムのことです。
患者にRFIDをつけることで患者のバイタルをどこにいてもリアルタイムで把握できます。
また、医療機器にRFIDをつけることで機器の使用頻度の集計や在庫の把握、正確なメンテナンスなどが可能となります。
4. 地域医療情報連携ネットワーク
先述した地域医療情報連携ネットワークも医療ICTの1つです。
地域医療情報連携ネットワークとは、その地域の病院や薬局、他施設が患者の情報を電子化して共有・閲覧できるシステムです。
これによって、効率的な患者情報の共有、急性期から在宅・介護医療の連携構築、過剰な検査や投薬の防止などの効果が期待されます。
5.AIの活用
AIの活用も医療ICTの1つです。
医療情報のデータ化によって、これまでとは比較にならないほどの医療情報を管理・分析でき、そのビッグデータをAI技術に活用できます。
病気の診断、治療法の最適な選択、手術支援、医薬品の開発など、医療のあらゆる場面でAI技術が進んでおり、医師の負担軽減や医療の質の向上に寄与しています。
医療ICT化を導入するメリット
医療ICT化を導入することで得られるメリットは、主に下記の4つです。
- 業務効率化を図れる
- 患者満足度の向上が見込める
- 地域医療連携・病診連携が活性化し医療格差が縮まる
- 新薬や治療法の研究・開発が活性化する
メリット1. 業務効率化を図れる
医療ICT化によって、業務効率化を図れます。
これまで人力でアナログに行っていた業務・作業の多くが、医療ICTによって自動化されるためです。
カルテ入力やカルテ内の情報検索・他医療機関からの医療情報取得・医薬品等の在庫、物流管理などの作業が自動化され、業務効率化とともに医師・看護師の負担も軽減されます。
メリット2. 患者満足度の向上が見込める
医療ICT化によって、患者満足度の向上が見込めます。
業務効率化は、患者の待ち時間の軽減やゆとりのある診療時間の確保につながるためです。
また、オンライン診療の普及によって通院の手間や院内感染のリスクが軽減され、精神的・肉体的負担も軽減されます。
メリット3. 地域医療連携・病診連携が活性化し医療格差が縮まる
医療ICT化によって地域医療連携・病診連携が活性化し、医療格差を縮めることができます。
オンライン診療が普及すれば、医療従事者の不足する地域にも遠隔で医療を提供できるため、全国どこでも最適化された医療を提供できるようになるためです。
また、地域医療情報連携ネットワークの拡充によってその地域における病診連携が活性化し、急性期から在宅医療まで包括的に患者のケアができます。
メリット4. 新薬や治療法の研究・開発が活性化する
医療ICT化によって新薬や治療法の研究・開発を活性化できます。
これまでとは比較にならない規模のビッグデータを簡単に管理・分析できるようになるためです。
薬物動態の予測や医薬品候補分子の検索など、これまで時間やコストのかかっていた作業が自動化・効率化されることで、より新薬開発は活性化するでしょう。
医療ICT導入の課題・デメリット
医療ICT導入の課題・デメリットは主に下記の2つです。
セキュリティリスク
維持コスト
課題・デメリット1. セキュリティリスク
医療ICTでは患者情報をインターネットやクラウド上に保存するため、サイバー攻撃や情報漏洩・第三者の不正アクセスなどのセキュリティリスクを伴います。
しかし、下記のような対策によってリスクを軽減できます。
- 強固なパスワードの設定
- 使用するIT機器のアクセス制御などの確認
- システムの定期的なアップデート
- セキュリティ対策ソフトの導入
取り扱う医療情報は繊細なデータのため、医療ICT化を進めるとともにセキュリティリスクを軽減に努めましょう。
課題・デメリット2. 維持コスト
医療ICTには維持コストがかかる点も課題です。
IT機器の購入自体も当然コストがかかりますが、導入したIT機器のメンテナンスやベンダーに支払う利用料など、維持コストも継続的にかかります。
さらに、これらの機器を取り扱うための人材確保や、人材教育にもコストがかかります。
コストを抑えるためには、施設規模に見合わない不必要な機器・機能は導入しないように、必要最低限のスモールスタートでICT化を進めると良いでしょう。
まとめ
この記事では、医療ICTの概要やメリット・デメリット、実際の活用事例について紹介しました。
医療ICTには維持コストやセキュリティリスクなどの課題は残るものの、業務効率化やそれに伴う負担軽減・患者サービスの向上など得られるメリットも大きいです。
例えば、エムネスの提供する医療支援クラウドサービス「LOOKREC」は、検査画像をクラウド上に低価格で保存・管理でき、高レベルの読影診断も可能です。
少子高齢化やそれに伴う人材不足など、さまざまな課題を抱える日本において、医療ICTは今後よりニーズが高まっていくことが予想されます。
ぜひこれを機に医療ICTを導入し、人材不足の解消や業務負担の軽減を目指しましょう。
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