
チーム医療とは?重要性やメリット・課題、職種ごとの役割と多職種連携のポイントを解説
チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・療法士・技師など、複数の医療専門職がそれぞれの専門性を生かしながら連携し、患者さんに最適な医療を提供する体制のことです。
医療の高度化や少子高齢化、医師の働き方改革などを背景に、医療現場では一つの職種だけですべての課題に対応することが難しくなっています。そのため、各職種が役割を分担し、情報を共有しながら患者さんを支えるチーム医療の重要性が高まっています。
また、チーム医療を実現するうえでは、多職種連携が土台になります。多職種連携とは、異なる専門職が互いの役割を理解し、目的や情報を共有しながら連携することです。近年では、医師の業務負担軽減を目的としたタスクシフト・タスクシェアの推進とも関係が深く、医療の質と安全性を維持しながら効率的な医療提供体制を構築するうえで欠かせない考え方となっています。
この記事では、チーム医療の定義や重要性、メリット、現場で起こりやすい課題に加え、多職種連携を進めるためのポイントについて解説します。

この記事の監修者
株式会社エムネス
メディカルソリューション本部長 執行役員
放射線診断専門医
島村 泰輝
2012年に名古屋市立大学医学部を卒業。同大学大学院医学研究科を修了し、医学博士を取得。放射線診断専門医。名古屋市立大学病院および地域の基幹病院での勤務を経て、2019年に株式会社エムネスへ入職。遠隔画像診断に従事する傍ら、医師視点を活かしたプロダクト開発・設計にも携わる。2025年1月より執行役員 メディカルソリューション本部長に就任。医学部生を中心とした学生団体「MNiST」の監修も務める。
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チーム医療とは?

チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・療法士・技師など複数の医療職が専門性を持ち寄り、情報共有と役割分担を行いながら、患者さん中心の医療を提供する体制のことです。
厚生労働省の「チーム医療の推進について」では、チーム医療について「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」とされています。
従来の医療現場では、医師を中心とした医療提供体制が一般的でした。しかし、医療の高度化や患者ニーズの多様化が進む中で、医師だけでなく、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリ職、検査技師、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな職種が専門性を生かして連携する必要性が高まっています。
チーム医療を実現するうえで土台となるのが、多職種連携です。多職種連携とは、異なる専門職が情報を共有し、それぞれの役割を理解しながら、患者さんにとって最適な医療やケアを提供するために連携することを指します。
つまり、チーム医療は「患者さんを中心に多職種が協働する医療体制」であり、多職種連携はその体制を機能させるための具体的な連携方法といえます。
近年では、地域における医療資源の不足や在宅医療の需要増加を背景に、一つの医療機関内だけでなく、病院・診療所・介護施設・福祉施設などが連携して患者さんを支える地域医療連携の必要性も高まっています。地域全体で患者さんを支えるという意味では、地域医療連携も広い意味でのチーム医療の一つといえるでしょう。
チーム医療の重要性と必要性

チーム医療は、医療現場を取り巻く環境変化を背景に、必要性が高まっています。患者さんに安全で質の高い医療を提供し続けるためには、一つの職種だけで対応するのではなく、多職種が役割を分担し、それぞれの専門性を生かしながら連携する体制が求められます。
チーム医療が必要とされる主な理由は、以下のとおりです。
- 医療の高度化により、複数の専門職による判断や支援が求められている
- 少子高齢化により、医療・介護・福祉を含めた包括的な支援が必要になっている
- 医師の働き方改革により、タスクシフト・タスクシェアを含めた業務分担が求められている
- 患者さんの身体面だけでなく、心理面・社会面まで含めた支援が必要になっている
医療技術が高度化する現代では、診断や治療、薬剤管理、栄養管理、リハビリテーション、退院支援など、患者さんを支えるために必要な専門領域が広がっています。医師や看護師だけですべてに対応するのではなく、各分野の専門職が連携することで、より多角的な視点から患者さんを支援できます。
また、少子高齢化の進行により、慢性疾患を抱える患者さんや、入退院を繰り返す患者さん、在宅医療や介護支援を必要とする患者さんも増えています。こうした患者さんには、急性期の治療だけでなく、回復期、慢性期、在宅療養までを見据えた継続的な支援が求められます。
さらに、2024年から医師の働き方改革が施行され、医師の長時間労働の是正や業務効率化がより強く求められるようになりました。医師が担ってきた業務の一部を他職種へ移管・共同化するタスクシフト・タスクシェアを進めるうえでも、チーム医療の考え方が前提になります。
ただし、単に業務を分担するだけでは、医療の質や安全性を維持することはできません。各職種が患者さんの状態や治療方針を共有し、自分の役割を理解したうえで連携することで、はじめてチーム医療として機能します。
チーム医療のメリット
チーム医療のメリットは、質の高い医療の提供だけでなく、医療従事者の負担軽減、情報共有の促進、患者満足度の向上につながる点にあります。チーム医療の主なメリットは下記の4つです。
- メリット1. 質の高い医療の提供
- メリット2. 医療従事者の負担軽減
- メリット3. 情報共有の促進
- メリット4. 患者満足度の向上
メリット1. 質の高い医療の提供
チーム医療によって、より質の高い医療の提供が可能となります。
各分野の専門家が連携して1人の患者さんに対して医療を提供するため、1つの疾患に対して複数の視点から診療に当たることができます。
例えば、専門性の異なる職種が連携することで、医師だけでは把握しきれない生活背景、服薬状況、栄養状態、リハビリの進捗、心理的な不安なども含めて、患者さんを多角的に支援できます。複数の視点から患者さんの状態を確認できるため、より適切な治療方針やケアにつなげやすくなります。
メリット2. 医療従事者の負担軽減
医療現場では、医師や看護師などの医療従事者が、本来の専門業務以外の業務も多く担っているケースがあります。
例えば医師の場合は、診療情報提供書の作成や診療記録の入力など、本来の診察業務の他にも書類業務をはじめとして、たくさんの業務が存在します。
近年ではこれらの事務作業をサポートしてくれる医師事務作業補助者を導入することで業務負担を軽減する医療機関も増えていますが、実際はまだまだ医師が行っているのが実情です。
他にも、病棟や外来へのクラーク配置や、薬剤師の病棟配置による業務分担など、多職種が連携することで医療従事者の負担軽減を目指せる点がチーム医療のメリットです。
メリット3. 情報共有の促進
刻一刻と変化する患者さんの状態に合わせて最適な医療を提供する必要があるため、チーム医療において医師同士だけではなく、看護師、放射線技師、検査技師、ケースワーカー、ソーシャルワーカーなど多職種での情報共有は必要不可欠であり、自ずと多職種間での情報共有が促進されます。
また、密な情報共有はそのまま医療安全の向上にもつながるため、チーム医療における大きなメリットと言えます。
メリット4. 患者満足度の向上
チーム医療のメリットの1つが、患者満足度の向上です。
患者さんが看護師に症状を伝えた際、すぐに医師や理学療法士が患者さんの元を訪れ「看護師から聞いたのですが〜」と話せば、患者さんはとても安心することでしょう。
実際の研究でも、医師や看護師の多職種連携は有意に患者満足度を向上させることを示しており、より満足度を向上させるためには患者さんが医療従事者間の連携を実感することが重要であるとしています。(参考資料「患者満足度を規定する要因の検討 ー医療従事者の職種間協力に着目してー」)
チーム医療に携わる主な職種と各職種の担う役割

チーム医療に携わる主な職種と担う役割の一例は下表の通りです。
職種 | チーム医療においての役割 | 主にどのようなチーム形成時に必要になるか |
|---|---|---|
医師 | ・診断や治療方針の決定 | ほとんど全てのチームに必要 |
看護師 | ・多職種間の調整役 | ほとんど全てのチームに必要 |
医療事務 | ・受付、予約管理、書類整備などの業務 | ・周術期管理チーム |
薬剤師 | ・薬剤の適正使用を促す | ・感染症対策チーム |
管理栄養士 | ・患者の栄養管理・指導 | ・摂食・嚥下チーム |
技師 | ・検体検査の分析 | ・医療機器安全管理チーム |
療法士 | ・患者のリハビリ計画の立案 | ・リハビリテーションチーム |
臨床工学技士 | ・医療機器の保守・点検・操作 | ・医療機器安全管理チーム ・医療安全管理チーム など |
公認心理師 | ・患者家族の心理的支援 | ・リハビリテーションチーム |
言語聴覚士 | ・会話や食事に関するリハビリ支援 | ・リハビリテーションチーム |
福祉士 | ・福祉サービスの紹介、案内 | リハビリテーションチーム |
医療ソーシャルワーカー | ・患者家族の相談窓口 | リハビリテーションチーム |
参考資料:チーム医療推進協議会
チーム医療の具体例・実践例
チーム医療の具体例 | 主な関係職種 | 主な役割 |
|---|---|---|
栄養サポートチーム | 医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、リハビリ職など | 栄養状態を評価し、治療や回復を支援する |
感染制御チーム | 医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など | 院内感染の予防・対策を行う |
緩和ケアチーム | 医師、看護師、薬剤師、心理職、ソーシャルワーカーなど | 身体的・精神的苦痛を和らげる |
在宅療養生活支援チーム | 医師、訪問看護師、ケアマネジャー、介護職など | 退院後の在宅療養を支援する |
チーム医療は、診療科や病院の機能に応じてさまざまな形で実践されています。厚生労働省の資料「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」でも、栄養サポートチーム、感染制御チーム、緩和ケアチーム、在宅療養生活支援チームなど、複数の実践例が示されています。
例えば、栄養サポートチームでは、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、臨床検査技師などが連携し、患者さんの栄養状態を評価しながら治療や回復を支援します。手術前後の患者さんに対して栄養介入を行うことで、術後在院日数の短縮や合併症の減少、転帰の改善を目指す取組も紹介されています。
また、在宅療養生活支援チームでは、医師、在宅医、訪問看護師、保健師、ケアマネジャーや介護保険施設などの地域福祉関係者などが連携し、退院後も患者さんが在宅で療養生活を継続できるよう支援します。
このように、チーム医療は院内の専門チームだけでなく、退院支援や在宅医療、地域医療連携の場面でも活用されています。患者さんの状態や医療機関の役割に応じて、必要な職種が連携し、切れ目のない医療・ケアを提供することが重要です。
チーム医療の課題と対策
チーム医療の今後の課題は主に下記の3つです。
- 課題1. 医療従事者の人材不足
- 課題2. チーム医療に対する不十分な教育
- 課題3. コミュニケーションエラー
課題1. 医療従事者の人材不足
チーム医療の今後の課題として医療従事者の人材不足が挙げられます。
日本では今後も少子高齢化の進行が見込まれており、医療・介護を必要とする高齢者が増える一方で、医療を支える人材の確保はさらに難しくなると考えられます。
理想的なチーム医療の実現には多分野の専門家を揃える必要がありますが、多くの病院では人材不足によって実現できない可能性があります。
そこで、課題解決のためにはタスクシフト・タスクシェアの促進が必要不可欠です。
タスクシフト・タスクシェアとは、これまである職種が担っていた業務を他の職種にシフト(移管)することやシェア(共同化)することです。
特に最近では看護師の人材不足が顕著で、手術中の器械出しを臨床工学士にタスクシェアする医療機関も増えています。
アメリカではすでに一般的ですが、医師をサポートする職種のPA(Physician Assistant)や、看護師と医師の中間のような役割を担うNP(Nurse Practitioner)などの新たな職種が日本でも拡充できるかが課題です。
課題2. チーム医療に対する不十分な教育
チーム医療に対する教育が不十分である点も課題です。
チーム医療の推進に関する議論は以前から進められてきましたが、医療機関によって教育体制や実践状況には差があります。そのため、チーム医療の考え方を十分に学ぶ機会がないまま、多職種連携を求められている医療従事者も少なくありません。
連携が不十分であれば、各職種がその技量や専門性を如何なく発揮することは困難であり、提供する医療の質も低下してしまいます。
そこで、課題解決のためには各医療機関での定期的な研修はもちろんのこと、医学生の時からIPEについての教育を受けることが重要です。
IPEとはInterprofessional Eduationの略で、チーム医療推進協議会では「複数の領域の専門職者が連携およびケアの質を改善するために、同じ場所で共に学び、お互いから学び合いながら、お互いを学ぶこと」と定義しています。
すでに多くの医学部でIPE教育が導入されており、今後その効果が医療現場にもたらされる可能性が高いです。
課題3. コミュニケーションエラー
チーム医療では、多職種連携の中でいかにコミュニケーションエラーを減らすことができるかも重要な課題です。多職種が連携するということは、それだけ情報伝達にミスも生じやすく、また役割分担が不透明で業務に漏れが生じるリスクも上がります。
医療現場では、情報共有の不足や伝達ミスが、医療安全上のリスクにつながることがあります。特に多職種が関わるチーム医療では、誰がどの情報を確認し、どの職種へ共有するのかが曖昧なままだと、対応の遅れや業務の抜け漏れが起こりやすくなります。
そのため、チーム内での役割分担や責任範囲を明確にし、患者さんの状態や治療方針を確実に共有できる仕組みを整えることが求められます。
そこで、課題解決のためにはチーム内での役割分担や責任の所在を明確にし、より密にコミュニケーションをとることが肝要です。
チーム医療における多職種連携コミュニケーションのポイント

チーム医療を成功させるためには、多職種連携による円滑な情報共有とコミュニケーションが不可欠です。他職種とのコミュニケーションで大切なポイントは、主に以下の4つです。
- ポイント1. 尊重する姿勢をもつこと
- ポイント2. 目標を明確にすること
- ポイント3. 密にコミュニケーションをとること
- ポイント4. ICTツールを活用すること
ポイント1. 尊重する姿勢をもつこと
他職種連携が必要になるチーム医療では、異なる専門性をもつさまざまな職種が関わる多職種連携が必要となります。領域が異なる多職種が関わりあうと、視点や意見の違いが生まれることがあります。しかし、それらの違いを理解したうえで、お互いに尊重する姿勢をもって連携すれば、多角的な課題解決へとつながっていきます。
ポイント2. 目標を明確にすること
チーム医療を円滑に回すために、まずはチーム内での目標を明確にしましょう。
目標を明確にすることでチームとして進むべき方向性が全員に共有されるため、より大きな成果を挙げられる可能性が上がります。
また、共通の目標を設定することで、各職種がそれぞれやるべきことを自覚し、役割分担や協力する方法を相互に認識できるようになります。
ポイント3. 密にコミュニケーションをとること
チーム医療には円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。
円滑なコミュニケーションを取るためには、密に連携を図ることが大切です。連絡頻度が上がることで、情報共有の促進や医療安全の向上が期待できたりケアレスミスが減り、最終的には患者満足度の向上につながります。
会議室での対面式カンファレンスはもちろんのこと、Web会議や電子カルテ上のメモ機能など、さまざまな方法を駆使してコミュニケーションをとると良いでしょう。
ポイント4. ICTツールを活用すること
チーム医療を円滑に回すためには、ICTツールを上手に活用することも重要です。
対面式のカンファレンスは細かなニュアンスや文字では伝わりにくい情報を伝達するときに有効ですが、一方で多職種で時間や場所を合わせる必要があり、またリアルタイムな情報共有は困難であるため忙しい医療者にとって負担になることがあります。
そこで、クラウドなどのICTツールを情報共有のために活用すれば、情報を正確かつ迅速に把握できるため、チーム医療のさまざまな課題解決にも役立ちます。ICTツールにより事前に情報共有したり、文字でのコミュニケーションで十分足りる場合はお互いの時間を尊重しつつ、チーム医療としての役割を果たすことが可能になります。
まとめ
今回の記事では、チーム医療のもたらすメリットや円滑に促進するための注意点について解説しました。
働き方改革や少子高齢化によって医療現場では医療需給の逼迫が深刻化しており、その中でより高度で安全、かつ効率的な医療を患者さんに提供するためには、チーム医療の推進は必要不可欠です。
またチーム医療を円滑に回すためには、他職種と連携し、チーム全体で目標や情報を共有し、普段から密にコミュニケーションを取ることが肝要です。
対面式のコミュニケーションはもちろんですが、クラウドなどのICTツールも十分に活用し、より質の高いチーム医療を目指しましょう。
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