遠隔画像診断とは?費用相場やメリット・デメリット、読影依頼の流れを解説

【サムネイル】遠隔画像診断とは?費用相場やメリット・デメリット、読影依頼の流れを解説

日々の臨床経験の中で、自身の読影能力に自信が持てない場合や多忙で読影に多くの時間を割けないことにお悩みの先生も少なくないでしょう。

そこで、画像診断の効率性や診断の質の向上を目指せる遠隔画像診断がおすすめです。

遠隔画像診断を導入すれば、距離に関わらずオンラインで繋がった放射線診断専門医に読影を依頼できます。

一方で、さまざまなデメリットや注意点もあるため、導入を検討されている場合は事前に把握しておくと良いでしょう。

この記事では、遠隔画像診断のメリット・デメリットや費用相場、導入の流れについて詳しく解説します。この記事を読むことで、所属する医療機関で遠隔画像診断を導入すべきかどうか、判断できるようになるでしょう。

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監修者情報:島村泰輝(放射線診断専門医)

監修者情報:川野倫作(放射線診断専門医・IVR専門医)

目次[非表示]

  1. 1.遠隔画像診断とは
    1. 1.1.遠隔画像診断の種類
  2. 2.遠隔画像診断を導入するメリット
    1. 2.1.メリット1. 医療の質の向上
    2. 2.2.メリット2. 医師不足の解消
    3. 2.3.メリット3. 多様な働き方の実現
    4. 2.4.メリット4. 検査機器の稼働率向上
    5. 2.5.メリット5. 紛失リスクや情報漏洩リスクが低い
  3. 3.遠隔画像診断を導入するデメリット
    1. 3.1.デメリット1. 導入や維持のコスト
    2. 3.2.デメリット2. セキュリティ面でのリスク
    3. 3.3.デメリット3. 提携する医療機関・事業者を探す必要がある
  4. 4.遠隔画像診断の費用の内訳と相場
    1. 4.1.遠隔読影の費用対効果とは
  5. 5.遠隔読影の流れ|実施するための3ステップ
    1. 5.1.ステップ1. 病院で撮影を実施
    2. 5.2.ステップ2.遠隔読影の実施機関へ画像を送付
    3. 5.3.ステップ3.実施機関からレポートが届く
  6. 6.まとめ


遠隔画像診断とは

遠隔画像診断とは

遠隔画像診断とは、ICTを活用してCTやMRI、核医学等の放射線画像検査の読影及び診断を、当該検査を実施した医療機関以外の場所で行う医療行為を指します。

医療機関で撮影された放射線画像検査を、放射線診断専門医が常駐する提携医療機関や、遠隔画像診断支援サービスを提供している外部事業者に送信し、読影・診断を行ってもらいます。

遠隔画像診断の普及によって、地理的な制約なく質の高い医療を提供できるようになりました。

特に、下記のような医療機関では遠隔画像診断の導入がおすすめです。

  • 自施設の放射線科医が人員不足もしくは不在
  • 医療過疎地で近隣に読影可能な医師がいない
  • 専門外の領域の読影を行う機会が多い
  • 検査機器の稼働率が低い
  • 働き方改革をより推進したい

遠隔画像診断を導入すれば、近隣、もしくは自施設に読影可能な医師がいない場合や、自身の読影に自信を持てない場合、外部の医療機関に常駐する放射線診断専門医に読影してもらうことができます。

日本放射線科専門医会が発表した「放射線科医の数と業務量の国際比較 ー日本放射線科専門医会ワーキンググループ報告」によれば、人口100万人あたりのCT・MRI装置数は世界でも群を抜いている一方で、稼働率の低さが問題視されています。

そこで、遠隔画像診断を導入すれば、読影・診断を役割分担できるため、より効率的に検査を行えるようになり、検査機器の稼働率が低迷している医療機関の課題解決にもおすすめです。

また、これまで読影に大きな時間や労力を割いていた医師も、遠隔画像診断によって読影を外注すれば業務効率化が図れるため、働き方改革の推進にも役立ちます。

遠隔画像診断の種類

では、遠隔画像診断ではどのような検査で利用されているのでしょうか?

遠隔画像診断サービス連合会のアンケート調査によれば、2019年度における各検査の遠隔画像診断の利用率は下表の通りです。

各検査の遠隔画像診断の利用率(2019年度)
種類
割合

CT/MRI

45.6%

RI(PET-CT含む)

0.4%

単純X線(胸部)

32.1%

単純X線(消化管造影)

16.0%

単純X線(マンモグラフィ)

3.9%

その他

2.2%

参考資料:特定非営利活動法人 メディカルイメージラボ「遠隔画像診断


このデータからも分かる通り、ほとんどの場合CT/MRIや単純X線(胸部)の読影において遠隔画像診断が利用されていることがわかります。

単純X線(胸部)は、肺炎や気胸・肺がんなどの肺疾患や、心臓や大動脈の形状の評価に用いられることが一般的です。

CT/MRIは、全身の腫瘍の検索や転移の有無の評価、出血や梗塞の評価など、その用途は多岐に渡ります。

一方で、乳がんのスクリーニングに有用な単純X線(マンモグラフィ)や、骨・心臓・脳などの疾患評価に用いられるRI(PET-CT含む)で遠隔画像診断を利用しているケースは稀なようです。

遠隔画像診断を導入するメリット

メリット

遠隔画像診断を導入するメリットは主に下記の5つです。

  1. 医療の質の向上
  2. 医師不足の解消
  3. 多様な働き方の実現
  4. 検査機器の稼働率向上
  5. 紛失リスクや情報漏洩リスクが低い

メリット1. 医療の質の向上

遠隔画像診断を導入するメリットとして、医療の質の向上が挙げられます。

単純X線やCT/MRIなどの画像は、もし診断を誤ればその後の治療方針や患者の命を左右しかねません。

読影を専門とする放射線診断専門医へ遠隔画像診断を依頼することで、より良質な医療を提供できます。

メリット2. 医師不足の解消

遠隔画像診断の導入によって医師不足を解消できます。

放射線診断専門医不在の地方病院や医療過疎地などでは十分に医師を確保することが難しいですが、遠隔画像診断を用いればオンラインで検査画像を共有できるため、距離に関係なく放射線診断専門医の診断を受けることができます。

また、読影業務が負担となっている医師にとっては読影を外注することで業務負担を軽減できる点もメリットです。

メリット3. 多様な働き方の実現

遠隔画像診断の導入によって、読影を依頼する医師も、読影を行う医師も、多様な働き方を実現できます。

先述したように読影業務を外注することで読影依頼する医師の業務負担を軽減できるため、他の業務に時間を時間を割くことができます。

また、読影を行う医師は自宅でも作業可能です。特に最近ではインターネット通信を行いオンラインで画像やレポートのやりとりをすることが主流となっています。

人員不足・労働負担が問題視されている放射線科医にとって、遠隔画像診断の実装はより多様な働き方を可能にするでしょう。

メリット4. 検査機器の稼働率向上

遠隔画像診断の導入によって、検査機器の稼働率向上が期待できます。

日本では人口100万人あたりのCT・MRI装置数は世界でも群を抜いている一方で、読影や診断などの業務が負担となり効率的に検査を実施できていないケースや、読影に自信がなく検査を躊躇しているケースも散見され、稼働率の低さが問題視されています。

遠隔画像診断を導入することで読影や診断などの業務負担が軽減され、より質の高い診断を行えるため、これらの課題解決につながるでしょう。

メリット5. 紛失リスクや情報漏洩リスクが低い

遠隔画像診断のメリットの1つは、特に最新の通信技術を用いることによって検査データの紛失リスクや情報漏洩リスクが低いことが挙げられます。

遠隔画像診断を安全に運用するためのガイドライン「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」では遠隔画像診断で利用するインターネットは、セキュリティ対策を十分に施したものを使用するように規定されています。

物理的な運搬である郵送やCDあるいはDVDを用いて宅配便等を利用した画像の授受と比較すると、最新の技術で高いセキュリティレベルで患者の検査画像を管理・共有することで安全性が確保できる事になるでしょう。

遠隔画像診断を導入するデメリット

デメリット

遠隔画像診断を導入するデメリットは主に下記の3つです。

  1. 導入や維持のコスト
  2. セキュリティ面でのリスク
  3. 提携する医療機関・事業者を探す必要がある

デメリット1. 導入や維持のコスト

遠隔画像診断のデメリットは、導入にも維持にもコストがかかる点です。

遠隔画像診断の実装において、よりシームレスなやりとりを希望する際には電子的な画像およびレポートのやりとりが重要となります。その際に適切な通信環境とPACS等のシステム構築が必要不可欠であり、さらには情報漏洩への対策も徹底する必要があるため、これらの仕組み作りにコストがかかります。

導入した後も、システムの保守・管理・運用のための月額費用や、読影内容によってさまざまなコストが発生します。

サービスを提供する企業によってコストは異なるため、自施設の画像検査の利用状況に合ったサービスを選ぶことが肝要です。

デメリット2. セキュリティ面でのリスク

セキュリティ面も遠隔画像診断のリスクの1つです。

撮影された画像や患者の個人情報を通信技術を用いてやりとりする際に、主にインターネットを使うため第三者の不正アクセスやサイバー攻撃などによって情報漏洩するリスクがあります。
専用線を用いた秘匿回線によるデータ通信も可能ですが、その場合通信利用料が極めて高額になります。

インターネット回線を用いた場合を含め、日本医学放射線学会では遠隔画像診断を安全に運用するためのガイドラインを策定しており、セキュリティ対策やネットワーク管理において遵守すべき内容が明記されています。

インターネットを介した遠隔画像診断を利用したい時はガイドラインに沿ってサービス提供しているかを確認することでリスクをコントロールできるかどうかの判断材料となります。

デメリット3. 提携する医療機関・事業者を探す必要がある

遠隔画像診断を利用するためには、提携する医療機関・事業者を探す必要があります。

兵庫県における遠隔画像診断の実施状況調査結果によれば、遠隔画像診断を依頼する医療機関が58%にも及ぶ一方で、遠隔画像診断を提供する医療機関はわずか5%でした。(参考資料:兵庫県健康福祉部健康局医務課「令和3年度 医師対医師(DtoD)遠隔医療 実施状況調査結果について」)

このことからも分かる通り、医療機関同士で提携する場合は選択肢に限りがあります。

一方で、遠隔画像診断支援サービスを提供している外部事業者と提携する場合、コストや診断の精度はもちろんのこと、対応スピード、カスタマーサポートなどのサービス面も事業者によって異なるため、選定には慎重を期すべきです。


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遠隔画像診断の費用の内訳と相場

遠隔画像診断の費用の内訳と相場

読影画像診断には、月額費用はもちろんのこと、読影依頼を行うたびにさまざまなコストが発生します。
遠隔画像診断の各費用と相場は下表の通りです。

遠隔画像診断の各費用と相場
費用
内容
相場

初期費用

システム導入やネットワーク設定、機材購入に関わる費用

80,000~150,000円

月額費用

システムの保守・運用、データ管理などのランニングコスト

30,000〜50,000円

読影費用

画像診断1件あたりに発生する費用であり、検査によって費用は異なる

2,000〜4,000円

部位加算

撮影部位に応じて加算される費用であり、複数部位ほど高額となる

一部位あたり1,000〜3,000円

スライス加算

一定枚数以上の読影になると発生する費用

500円〜

時間外対応料金

緊急対応や夜間・休日の対応の際に追加で発生する費用

1件1,000円以上


各費用は提携する事業者によって異なるため、必ず複数社で見積もりを取ることが重要です。

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遠隔読影の費用対効果とは

遠隔読影を導入する前に、遠隔読影の費用対効果についても理解しておきましょう。

仮に比較的安価に契約できたとしても、夜間や休日の緊急対応が契約に含まれていない場合、結局自施設の読影医を招集することとなり、サービスを有効活用できない上に人件費が嵩んでしまう可能性があります。

一方で、遠隔読影を適切に導入すれば新たに読影医を雇用するよりも費用を抑えられる可能性もあります。

遠隔読影の場合は初期費用がかかりますが、月額費用は上表の通り数万円程度であり、読影費用や加算を考慮しても年間の費用は読影医1名の費用より安価となる可能性が高いです。

さらに、遠隔画像診断支援サービスで読影を担うのは放射線診断専門医であるため、一般の読影医よりも診断の質を担保できます。

以上の点から、遠隔読影の費用対効果を考える際に費用のみで選ぶのでは無く、自施設の月々の依頼件数や読影医の質、契約内容やサポート体制などを総合的に鑑みて何を優先するのか(納期、質、至急読影の有無等)も事前に決めておくと良いでしょう。

​​​​​​​何を重要視するとうまくいくのか分からない時は、その旨を業者に相談するとアドバイスをもらえることもあります。

遠隔読影の流れ|実施するための3ステップ

ステップ

ここでは、実際に遠隔読影を行う流れを、3ステップに分けて解説します。

  1. 病院で撮影を実施
  2. 遠隔読影の実施機関へ画像を送付
  3. 実施機関からレポートが届く

ステップ1. 病院で撮影を実施

まず初めに、病院やクリニックで撮影を実施します。

この際、検査機器の設定や撮影条件が不適切な場合、読影医師が正確に診断することが困難となるため、十分注意して撮影を行いましょう。

ステップ2.遠隔読影の実施機関へ画像を送付

撮影が完了したら、遠隔読影の実施機関へ画像を送付します。

インターネットを介して画像情報を共有する遠隔画像診断では、撮影から読影までにかかる時間は非常に短いです。CDやDVDを用いた遠隔診断を行う場合はデータを焼き付ける必要があります。その際は患者取り違えに十分注意が必要です。

ステップ3.実施機関からレポートが届く

遠隔画像診断を依頼した医療機関から画像が届いたら、受け手となる読影医は読影を行い、その診断結果を含む読影レポートを作成します。

読影レポートには画像の所見やそれに伴う診断結果はもちろんのこと、患者氏名・性別・生年月日などの個人情報が多分に含まれるため、十分なセキュリティ体制のもとで行われる必要があり、特にインターネット回線を利用する場合は暗号化されたデータ通信をしていることが望ましいです。

まとめ

この記事では遠隔画像診断の概要やメリット・デメリット、実際の導入の流れなどについて解説しました。
 
医用画像のデジタル化やフォーマットの統一、通信技術の向上など、医療におけるIoT活用が促進したことと、放射線科医不足や検査機器の稼働率低迷など、さまざまな要因が影響して、近年急速な広まりを見せる遠隔画像診断。

読影業務を外注できることで業務負担を軽減できるだけでなく、放射線診断専門医による読影によって診断の質も担保できます。

一方で、契約内容や提携する事業者によっては費用対効果が上がらない可能性もあるため、本記事を参考に、選定には慎重を期すべきです。


エムネスでは、常勤読影医約10名により、迅速かつ質の高い読影を提供する遠隔画像診断サービスに定評があります。

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H1113(ペンネーム)
H1113(ペンネーム)
2014年に都内の医学部を卒業後、患者様の健康を守るべく臨床医として約10年間医療現場で活動。現在も麻酔科として急性期病院にて勤務。その傍ら執筆や発信活動を開始し、これまでに執筆した医療・健康系の記事は300を超える。

※導入時に訪問を伴う対応が必要な場合は、別途費用が発生する場合がございます。