
遠隔画像診断とは?費用相場やメリット・デメリット、遠隔読影依頼の流れを解説
遠隔画像診断とは、医療機関で撮影したCTやMRIなどの医用画像をオンラインを介して放射線診断専門医に送り、読影レポートを返却してもらう仕組みです。
慢性的な放射線科医不足や検査件数の増加、働き方改革の流れから普及が進んでいますが、導入にあたり注意点もあるため、事前に把握しておくと必要があります。
この記事では、遠隔画像診断のメリットや導入する際の注意点、費用相場、導入の流れについて詳しく解説します。この記事を読むことで、所属する医療機関で遠隔画像診断を導入すべきかが判断できるようになります。ぜひ参考にしてください。
約10名の放射線診断専門医が常勤している読影センターを保有!
遠隔画像診断の導入事例をぜひ参考にしてください。
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遠隔画像診断とは

遠隔画像診断とは、ICTを活用してCTやMRI、核医学等の放射線画像検査の読影及び診断を、当該検査を実施した医療機関以外の場所で行う医療行為を指します。
医療機関で撮影された放射線画像検査を、放射線診断専門医が常駐する提携医療機関や、遠隔画像診断支援サービスを提供している外部事業者に送信し、読影・診断を行ってもらいます。
日々の臨床経験の中で、慢性的な読影医不足で困っている、自身の専門外などで読影能力に自信が持てない、多忙すぎて読影に多くの時間を割けないなどの悩みを解決するには、画像診断の効率性や診断の質の向上を目指せる遠隔画像診断の導入がおすすめです。
遠隔画像診断の普及が進む背景
日本放射線科専門医会が発表した「放射線科医の数と業務量の国際比較 ー日本放射線科専門医会ワーキンググループ報告」によれば、人口100万人あたりのCT・MRI装置数は世界でも群を抜いている一方で、稼働率の低さが問題視されています。
そこで、遠隔画像診断を導入すれば、読影・診断を役割分担できるため、より効率的に検査を行えるようになり、検査機器の稼働率が低迷している医療機関の課題解決にもおすすめです。
また、これまで読影に大きな時間や労力を割いていた医師も、遠隔画像診断によって読影を外注すれば業務効率化が図れるため、医師の働き方改革の推進にも役立ちます。
遠隔画像診断がおすすめな医療機関
遠隔画像診断の普及によって、地理的な制約なく質の高い医療を提供できるようになりました。特に、下記のような医療機関では遠隔画像診断の導入がおすすめできると言えます。
- 自施設の放射線科医が人員不足もしくは不在
- 医療過疎地で近隣に読影可能な医師がいない
- 専門外の領域の読影を行う機会が多い
- CTやMRIなどの検査機器の稼働率を改善したい
- 働き方改革をより推進したい
遠隔画像診断を導入することで、近隣、もしくは自施設に読影可能な医師がいない場合や、自身の読影に自信を持てない場合、外部の医療機関に常駐する放射線診断専門医に読影してもらうことで自信をもった医療提供が可能となります。
一般診療での遠隔画像診断の上手な使い方を現役医師が解説した、以下のセミナーレポートもぜひ参考にしてください。
各検査における遠隔画像診断の利用率
遠隔画像診断サービス連合会のアンケート調査によれば、2019年度における各検査の遠隔画像診断の利用率は下表の通りです。
種類 | 割合 |
|---|---|
CT・MRI | 45.6% |
単純X線(胸部) | 32.1% |
単純X線(消化管造影) | 16.0% |
単純X線(マンモグラフィ) | 3.9% |
RI(PET-CT含む) | 0.4% |
その他 | 2.2% |
参考資料:特定非営利活動法人 メディカルイメージラボ「遠隔画像診断」
このデータからも分かる通り、ほとんどの場合CT/MRIや単純X線(胸部)の読影において遠隔画像診断が利用されていることがわかります。
単純X線(胸部)は、肺炎や気胸・肺がんなどの肺疾患や、心臓や大動脈の形状の評価に用いられることが一般的です。
CT/MRIは、全身の腫瘍の検索や転移の有無の評価、出血や梗塞の評価など、その用途は多岐に渡ります。
一方で、乳がんのスクリーニングに有用な単純X線(マンモグラフィ)や、骨・心臓・脳などの疾患評価に用いられるRI(PET-CT含む)で遠隔画像診断を利用しているケースは稀なようです。
遠隔画像診断を導入するメリット

遠隔画像診断を導入するメリットは主に下記の5つです。
- 医療の質向上
- 医師の地域偏在解消と業務負担の軽減
- 検査機器の稼働率向上
- 働き方改革の推進
- データ紛失・情報漏洩のリスクを低減
メリット1. 医療の質向上
遠隔画像診断を導入するメリットとして、医療の質の向上が挙げられます。
単純X線やCT/MRIなどの画像は、もし診断を誤ればその後の治療方針や患者の命を左右しかねません。読影を専門とする放射線診断専門医へ遠隔画像診断を依頼することで、より良質な医療が可能になります。
メリット2. 医師の地域偏在解消と業務負担の軽減
放射線診断専門医不在の地方病院や医療過疎地などでは十分に医師を確保することが難しいですが、遠隔画像診断を用いればオンラインで検査画像を共有できるため、距離に関係なく放射線診断専門医の診断を受けることができます。
また、読影業務が負担となっている医師にとっては読影を外注することで業務負担を軽減できる点もメリットです。
メリット3. 検査機器の稼働率向上
遠隔画像診断の導入によって、検査機器の稼働率向上が期待できます。
日本では人口100万人あたりのCT・MRI装置数は世界でも群を抜いている一方で、読影や診断などの業務が負担となり効率的に検査を実施できていないケースや、読影に自信がなく検査を躊躇しているケースも散見され、稼働率の低さが問題視されています。
自施設以外での遠隔画像診断のリソースを確保することができれば、検査機器の空き時間を利用した上で健診の予約を受けることができ、収益性の改善も見込めます。健診事業についての以下の記事もぜひ参考にしてください。
メリット4. 働き方改革の推進
読影業務を外注することで読影依頼する医師の業務負担を軽減できるため、他の業務に時間を時間を割くことができます。結果として医師の働き方改革の推進にもつながります。
また、最近ではインターネット通信を行いオンラインで画像やレポートのやりとりをすることが主流となっており、遠隔読影を請け負う医師は自宅での作業も可能な場合が多いです。
人員不足・労働負担が問題視されている放射線科医にとって、遠隔画像診断の実装はより多様な働き方を可能にするといえるでしょう。
メリット5. データ紛失・情報漏洩のリスクを低減
最新の通信技術を用いることによって検査データの紛失リスクや情報漏洩リスクが低いことが挙げられます。
遠隔画像診断を安全に運用するためのガイドライン「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」では遠隔画像診断で利用するインターネットは、セキュリティ対策を十分に施したものを使用するように規定されています。
郵送やCDあるいはDVDを用いた物理的な運搬にて画像の授受と比較すると、最新の技術で高いセキュリティレベルで患者の検査画像を管理・共有することで安全性が確保できるといえます。
クラウドシステムに関するセキュリティに関しては、医療情報システム管理者が以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご確認ください。
遠隔画像診断を導入する際のデメリット・注意点

遠隔画像診断を導入するデメリットや注意点は主に下記の3つです。
- 導入や維持コストが発生する
- セキュリティ要件を満たす必要がある
- 依頼先(医療機関や事業者)の選定
デメリット・注意点1. 導入や維持コストが発生する
遠隔画像診断の実装において、よりシームレスなやりとりを希望する際には電子的な画像およびレポートのやりとりが重要となります。その際に適切な通信環境とPACS等のシステム構築が必要不可欠であり、さらには情報漏洩への対策も徹底する必要があるため、これらの仕組み作りにコストがかかります。
特に導入時の初期設定に高額なコストがかかる場合があったり、導入後も、システムの保守・管理・運用のための月額費用や、読影内容によってさまざまなコストが発生します。
サービスを提供する企業によってコストは異なるため、自施設の画像検査の利用状況に合ったサービスを選ぶことが肝要です。
デメリット・注意点2. セキュリティ要件を満たす必要がある
撮影された画像や患者の個人情報を通信技術を用いてやりとりする際に、主にインターネットを使うため第三者の不正アクセスやサイバー攻撃などによって情報漏洩するリスクがあります。専用線を用いた秘匿回線によるデータ通信も可能ですが、その場合通信利用料が極めて高額になります。
インターネット回線を用いた場合を含め、日本医学放射線学会では遠隔画像診断を安全に運用するためのガイドラインを策定しており、セキュリティ対策やネットワーク管理において遵守すべき内容が明記されています。
インターネットを介した遠隔画像診断を利用する際は、ガイドラインに沿ってサービスを提供している事業者であるかを必ず事前に確認しましょう。
デメリット・注意点3. 依頼先(医療機関や事業者)の選定
遠隔画像診断を利用するためには、提携する医療機関・事業者を探す必要があります。
兵庫県健康福祉部健康局医務課「令和3年度 医師対医師(DtoD)遠隔医療 実施状況調査結果について」によれば、遠隔画像診断を依頼する医療機関が58%にも及ぶ一方、遠隔画像診断を提供する医療機関はわずか5%と、医療機関同士で提携する場合は選択肢に限りがあることがわかります。
一方で、遠隔画像診断支援サービスを提供している外部事業者と提携する場合、コストや診断の精度、対応スピード、カスタマーサポートなどのサービス面など事業者によって異なります。外部事業者を介して遠隔画像診断支援サービスを依頼する際はその辺りを考慮し慎重に選定しましょう。
遠隔画像診断の費用相場とコスト構造

読影画像診断には、月額費用はもちろんのこと、読影依頼を行うたびにさまざまなコストが発生します。遠隔画像診断の各費用と相場は下表の通りです。
遠隔画像診断における費用の内訳と相場
費用 | 内容 | 相場 |
|---|---|---|
初期費用 | システム導入やネットワーク設定、機材購入に関わる費用 | 80,000~150,000円 |
月額費用 | システムの保守・運用、データ管理などのランニングコスト | 30,000〜50,000円 |
読影費用 | 画像診断1件あたりに発生する費用であり、検査によって費用は異なる | 2,000〜4,000円 |
部位加算 | 撮影部位に応じて加算される費用であり、複数部位ほど高額となる | 一部位あたり1,000〜3,000円 |
スライス加算 | 一定枚数以上の読影になると発生する費用 | 500円〜 |
時間外対応料金 | 緊急対応や夜間・休日の対応の際に追加で発生する費用 | 1件1,000円以上 |
各費用は提携する事業者によって異なるため、必ず複数社で見積もりを取ることが重要です。
エムネスでは、クラウドを介した遠隔画像診断を提供しており、初期費用やランニングコストを抑えた運用が可能です。常勤医師が約10名・継続率は驚異の97%と高品質・高サポートのエムネスの遠隔読影については、以下よりお気軽にお問い合せください。
遠隔画像診断の流れ

ここでは、実際に遠隔読影を依頼するとなった際のおおまかな流れを3ステップに分けて解説します。
- 検査機関で撮影を実施
- 遠隔読影の実施機関へ画像を送付
- 実施機関からレポートが届く
ステップ1. 検査機関で撮影を実施
まず初めに、病院やクリニックで撮影を実施します。
検査機器の設定や撮影条件が不適切な場合、読影医師が正確に診断することが困難となるため、十分注意して撮影を行いましょう。
ステップ2. 遠隔読影の実施機関へ画像を送付
撮影が完了したら、遠隔読影の実施機関へ画像を送付します。読影レポートには画像の所見やそれに伴う診断結果はもちろんのこと、患者氏名・性別・生年月日などの個人情報が多分に含まれるため、十分なセキュリティ体制のもとで行われる必要があります。
インターネットを介して画像情報を共有する遠隔画像診断では、暗号化されたデータ通信をしていることが望ましいです。
CD-ROMやUSBなどの物理媒体を送付し遠隔診断を行う場合は、データを焼き付ける必要があります。その際は患者取り違えに十分注意が必要です。
ステップ3. 実施機関からレポートが届く
遠隔画像診断を依頼した医療機関から画像が届いたら、受け手となる読影医は読影を行い、その診断結果を含む読影レポートを作成します。
インターネットを介した遠隔読影の場合は、撮影からレポートが返却されるまでにかかる時間は非常に短いです。一方、アナログでの郵送の場合は、時間がかかる点に留意しましょう。
実際にアナログ郵送を実施していた検査機関は結果返却までに3週間かかっていた現状が、クラウド型DICOMデータプラットフォーム「LOOKREC」を活用いただき、最短2〜3日での返却まで短縮した事例も多数ございます。以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
遠隔読影の費用対効果とは
遠隔読影を導入した場合の効果測定として、費用対効果についても理解しておきましょう。
遠隔読影の費用対効果を考える際には、費用のみで判断するのは危険です。自施設の状況を整理した上で、何を優先するのかを事前に決めたうえでコストと見合う依頼先を決めることで、導入後の費用対効果の良し悪しの判断がつきやすくなります。
<コスト以外の評価軸の一例>
- 引き受け可能な検査件数
- 読影品質
- サポート体制
- 返却納期(至急読影・夜間読影の有無)
遠隔読影をうまく導入すれば、新たに読影医を雇用するよりも費用を抑えられる可能性もあります。遠隔読影の場合は初期費用がかかりますが、月額費用は上表の通り数万円程度であり、読影費用や加算を考慮しても年間の費用は読影医1名の費用より安価となる可能性が高いです。さらに、遠隔画像診断支援サービスで読影を担うのは放射線診断専門医であるため、一般の読影医よりも診断の質を担保できます。
一方で、比較的安価に遠隔読影サービスを導入できた場合でも、夜間や休日の緊急対応が不可であれば、結局自施設の読影医を招集することとなり、サービスを有効活用できない上に人件費が嵩んでしまう可能性もあります。自施設に必要な要件を満たした遠隔読影サービスの契約内容になっているかは事前に必ずチェックしましょう。
まとめ
医用画像のデジタル化やフォーマットの統一、通信技術の向上など、医療におけるIoT活用が促進したことと、放射線科医不足や検査機器の稼働率低迷など、さまざまな要因が影響して、近年急速な広まりを見せる遠隔画像診断。
読影業務を外注できることで業務負担を軽減できるだけでなく、放射線診断専門医による読影によって診断の質も担保できます。
一方で、契約内容や提携する事業者によっては費用対効果が上がらない可能性もあるため、本記事を参考に、選定には慎重を期すべきです。
エムネスでは、常勤読影医約10名により、迅速かつ質の高い読影を提供する遠隔画像診断サービスに定評があります。
また、独自のPACSのクラウドプラットフォーム「LOOKREC」では、画像データの受け渡しやレポート提出が全て完結するため、迅速かつ効率的に遠隔画像診断サービスを利用できます。
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