読影医とは?放射線科医や技師との違い、読影医の需要と今後の展望
読影医とは、医療業界では放射線科診断医のことを指すことが一般的です。医療機関で撮影された画像所見を読影をし、さまざまな画像機器を取り扱う昨今の医療現場においては必要不可欠な存在です。
一方で、医療現場では読影医の人員不足や遠隔画像診断の普及などの要因から、読影医の需要は急速に高まりつつあります。
そこで、この記事では読影医の業務内容の概要や、診療放射線技師との違い、将来性などについて詳しく解説します。
この記事を読むことで、読影医を目指す上での道筋や適性が把握できるため、是非ご一読ください。
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目次[非表示]
- 1.読影医とは?
- 1.1.放射線科医とは
- 2.読影医と放射線技師の違い
- 3.読影医が扱う主な検査と技術
- 3.1.単純X線(レントゲン)
- 3.2.CTスキャン
- 3.3.MRI
- 3.4.超音波検査
- 4.放射線診断専門医になるための過程
- 5.読影医の需要と今後の展望
- 5.1.将来性と需要の動向
- 5.2.読影医不足が深刻な課題に
- 5.3.AIによる読影医の役割の変化
- 5.4.遠隔画像診断という選択肢
- 6.まとめ
読影医とは?
医療業界では読影医=放射線科診断医として捉えることが一般的です。
読影とは、医療機関で行われるさまざまな画像検査の所見を正確に診断し、病気の性状を分析することです。
放射線科医とは
放射線科医とは日本専門医機構の定める放射線科領域カリキュラムを修了した医師のことであり、X線をはじめとするさまざまなエネルギー(電磁波・超音波・磁場など)の性質をよく理解し、このエネルギーを臨床の場で有効に活用できる専門家です。
わかりやすく言えば、読影能力を高めるための専門的なカリキュラムを専攻し、他の診療科の医師よりも読影能力の高い医師と言えます。
読影医がさまざまな診療科の医師を含むのに対し、他の診療科の医師が放射線科医を標榜することはできません。
さらに、放射線科医は専門とする診療内容によって下記の2つに大別されます。
- 放射線診断専門医
- 放射線治療専門医
放射線診断専門医とは、まさに読影医として頂点に立つ存在であり、頭部から胸部、腹部、骨関節など全身のあらゆる部位の画像診断を高いレベルで行える放射線科医です。
放射線診断専門医であれば、他の診療科の読影医よりも的確に画像診断することが可能であり、侵襲度や被曝など各検査法の特徴を考慮した上で、最適な検査法の決定・推奨なども可能です。
一方で、放射線治療専門医とは放射線照射によるがん治療を専門とする放射線科医のことを指し、がんに対して体外もしくは体内から放射線を照射することで、がんの除去や縮小を目指します。
放射線治療専門医も放射線科医である以上、もちろん読影能力は高いですが、放射線診断専門医とは求められる役割が異なります。
読影医と放射線技師の違い
読影医や放射線科医と混同されやすい職種が「診療放射線技師」です。
診療放射線技師とは、放射線専門医の指示のもとで放射線照射機器を用いたさまざまな業務を行う国家資格を有する職種であり、具体的には下記のような業務を行います。(参考資料:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「診療放射線技師」)
- 放射線照射機器を用いた画像撮影
- 放射線被曝の管理
- 放射線照射機器の点検・管理
一方で、診療放射線技師は医師免許を有していないため、患者に対する診察・治療や画像所見に対する診断を行うことはできません。
ただし、放射線科医は多くの医療機関で不足している中、放射線機器の取り扱いには高い安全性が求められるため、放射線機器に対して深い知識や経験を持つ診療放射線技師の存在が必要不可欠です。
読影医が扱う主な検査と技術
今日の医療現場ではさまざまな画像検査が用いられており、より良い画像診断を行うためには、それぞれの特性や特徴を把握しておく必要があります。
読影医は主に下記のような検査を扱います。
- 単純X線(レントゲン)
- CTスキャン
- MRI
- 超音波検査
単純X線(レントゲン)
読影医が扱う画像検査の中で最も一般的な検査が単純X線(レントゲン)です。
単純X線は、臓器や組織によるX線の吸収度の違いを利用して、照射機からX線を体に向けて一方向に照射することで体内の臓器や組織の形状を評価する検査です。
より高密度な組織(骨など)ほどX線を吸収するため、レントゲンフィルムには白く写ります。
一方で、より低密度な組織(脂肪や空気を多く含む臓器)ほどX線を吸収せずに透過されるため、レントゲンフィルムには黒く写ります。
1枚の撮影は数分程度で完結し、全身に幅広く用いられる検査ですが、X線を一方向から照射するため、複数の臓器・組織が重なる部位(縦隔や下腹部など)を評価するには不向きです。
臨床現場では主に下記のような目的で用いられます。
肺炎・気胸などの肺疾患の評価
心臓や大動脈の形状の評価
消化管穿孔や腸閉塞などの消化管疾患の評価
骨折や脊椎疾患の評価
CTスキャン
一方向からの照射を行う単純X線に対し、CT(Computed Tomography)スキャンはX線をさまざまな角度から照射することで体の断面を画像化できる検査です。
連続した断面の画像を作成することで、体内を立体的に評価できます。
利用している放射線はX線であるため、原理はレントゲンと同様であり、臨床現場では主に下記のような目的で用いられます。
- ほぼ全てのがんの検索
- 出血病変の検索
- レントゲンでは評価しづらい病変の検索・評価
- 血管の評価
さらに、造影剤を投与してCTスキャンを行う造影CT検査では、臓器や血管にコントラストがつくため、より詳細に評価できます。
MRI
レントゲンやCTスキャンがX線を用いるのに対し、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)は強力な磁石と電波を使って発生させた電磁波を体に照射する検査です。
電磁波を照射することで体内の水素原子が共鳴し、振動した水素原子からは微弱な電磁波が発生するため、この電磁波を受信して画像化することで撮影部位の性状や形態を評価できます。
全身を評価できる点ではCTスキャンと同じですが、MRIはCTスキャンと比較して下表のような特徴を持ちます。
MRIが優れている点 |
MRIが劣っている点 |
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濃度分解能の低いCTスキャンでは、子宮や卵巣、前立腺、膀胱、直腸などが隣接する骨盤領域を評価しにくいですが、濃度分解能が高いMRIであれば評価が容易です。
またCTスキャンでは、X線を吸収しやすい骨の影響で骨周囲の組織にアーチファクトと呼ばれるノイズが発生しやすくなりますが、MRIではアーチファクトが少なく、頭蓋骨で囲まれた脳の評価に優れています。
さらに、水素原子の電磁波を評価することで、その物質の形態のみならず性状も評価できるため、血液や体液の流れや拡散を可視化でき、血管の走行や梗塞の有無の検索にも有用です。
ただし、空気を描出できないため肺病変の評価には不向きであり、骨の情報を得ることもできません。
超音波検査
超音波検査とは、超音波を発するプローブを用いて、体内の臓器から返ってきた超音波を画像として描出する検査です。
超音波を用いるため、被曝することなく安全に検査を受けることができ、臨床現場では主に下記のような目的で用いられます。
- 肝臓や胆嚢などの消化器疾患の評価
- 血管の性状や血栓の有無の評価
- 腎臓や膀胱などの泌尿器科疾患の評価
- 子宮などの産婦人科疾患の評価
- 心臓などの循環器疾患の評価
一方で、骨や空気は超音波をほとんど通さないため、骨に囲まれた脳などの部位や骨そのもの、もしくは肺などの多量の空気を含む臓器の評価には向きません。
また、画像の描出には高い技術が必要であり、検査の精度は検査する人の技術に左右されます。
放射線診断専門医になるための過程
放射線診断専門医になるためには以下の5つの過程が必要です。
- 医学部卒業後、初期研修を2年
- 初期研修終了後、放射線専門医研修カリキュラムを3年
- 専門医試験受験
- 専門医試験合格後、放射線診断専門医研修カリキュラムを2年
- 診断専門医試験受験
医学部卒業後、2年間の初期研修を経てから日本専門医機構の定める放射線科領域カリキュラムで3年間、放射線科医としての研鑽を積む必要があります。
その3年間で学会が定める経験症例数や学会発表単位の基準を満たした場合、専門医試験を受験できます。
晴れて専門医試験に合格すれば、放射線診断専門医、もしくは放射線治療専門医のいずれかの研修カリキュラムを2年間研修し、研修終了後に診断専門医試験に合格することが放射線診断専門医になるために必要な過程です。
なお、放射線診断専門医と放射線治療専門医の資格を同時に有することはできないため、自身の選択したい専門医研修カリキュラムを選択する必要があります。(参考資料:公益社団法日本医学放射線学会 放射線診断専門医制度規定)
読影医の需要と今後の展望
読影医を目指す医大生や医師にとって、読影医の需要や今後の展望は気になるところでしょう。
結論から言えば、読影医の需要は今後さらに増加することが見込まれ、将来性は明るいです。
その背景には下記のような要因が挙げられます。
- 放射線科医の不足
- AIの普及
- 遠隔画像診断の普及
上記の要因が放射線科医の需要にどのような影響を与えるか解説します。
将来性と需要の動向
放射線科医の需要や将来性はさまざまな要因に左右されますが、先述したように概ね明るいです。
日本の超高齢化は深刻であり、生産年齢人口は激減することが予想されるため、医療業界全体として、医療を必要とする多くの高齢者に対して少ない人員で対応する必要があります。(参考データ:総務省「市町村合併の推進状況について」「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」)
特に放射線科医不足は深刻であり、多くの医療機関では放射線科医不在の中で読影の専門でない医師が読影を行っているため、画像診断見落としによって医療訴訟に至るケースも少なくありません。(参考資料:岡山県医師会報誌第1490号 )
そのような現状に対し、国は診療報酬の画像診断管理加算増額などの対策を行っており、医療安全、病院経営両方の側面からも放射線科医の重要性や需要が増しています。
読影医不足が深刻な課題に
今の医療業界において、読影医、中でも放射線科医不足は深刻です。
日本放射線科専門医会の報告によれば、下記のようなデータが得られています。
- 人口100万人当たりの放射線科医数世界最下位
- 医師全体における放射線科医の割合はわずか2%
- 放射線科医が常駐する医療機関は全体の20%以下
- 放射線科医一人当たりの読影件数世界1位
- 人口100万人当たりのCT・MRI検査件数世界2位(1位はアメリカ)
- 放射線科医の年間増加率5%未満
以上のデータより、日本では大量の検査機器を有しているにも関わらず、その検査を扱う放射線科医が圧倒的に不足していることが分かります。
そのため、放射線診断専門医などの高い読影能力を持つ医師の需要は高いのが現状です。
AIによる読影医の役割の変化
一方で、近年ではAIの発達によって読影医の仕事が奪われるのではないかという声も散見されます。
865名の医師を対象にしたアンケート調査では、AIの進化によっていずれ淘汰される可能性のある診療科の筆頭が放射線科でした。
実際に、Google社が開発したAIと医師の肺がん診断能力を比較した実験では、AIの方が医師よりもがん症例を5%多く検出し、偽陽性率(実際には病気でないにも関わらず病気と診断される割合)を11%以上削減したそうです。
今後さらに医療業界のAI化は進んでいくことが予想されますが、まだ現状のAI技術では、画像上で動いていない臓器に病変の有無を指摘することしかできません。患者の病態を深ぼるまでには及んでおらず、また手術後などの複雑な症例には対応しきれません。
さらにAIには、医師に必要不可欠な責任能力がありません。そのためAIは医師の代わりになるというよりも、病変の見逃しを防止するなどの医師の診療支援が主な役割となっています。
人手不足で労働負担の大きい放射線科医にとって、AIは敵ではなくむしろ強力な味方として捉えるべきでしょう。
遠隔画像診断という選択肢
遠隔画像診断という新たな選択肢が登場したことで、放射線科医の需要はさらに高まっています。
遠隔画像診断とは、医療機関で撮影された検査画像をオンラインで遠方の放射線科医と共有することで、専門医の少ない地域や医療過疎地でも画像診断の質を担保するシステムのことです。
遠隔画像診断を用いることで、放射線科医は自宅で読影を行えるため、医療偏在化の弊害を解消できるだけでなく、多様な働き方も実現可能にします。
近年では遠隔画像診断に関する保険点数の算定範囲も拡大されており、今後更なる広がりが期待されます。
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まとめ
この記事では、読影医になる過程や将来性について解説しました。
読影医は患者や検査機器の数に対して圧倒的に不足しているため、多くの医療機関では十分な質や量の読影医を確保できておらず、専門外の医師が読影を余儀なくされているのが現状です。
読影医不足を解決する手段として遠隔画像診断の利用がおすすめです。
特に、エムネスの提供する遠隔読影サービスは、画像データをクラウド上で共有することで、常勤約10名の専門読影医が迅速かつ正確に読影・診断してくれます。
レポートは通常3〜5日ほどで返却されますが、至急の場合は最短1時間でも返却可能なため、読影に自信が持てない方や、読影の手間を少しでも軽減したい方は是非利用を検討してみてください。