現役技師長が解説!読影しやすい画像撮影のポイントとは?【セミナーレポート】
医療DXや遠隔画像診断の活用が進む中、読影医のスキルに加え、読影前の画像撮影も診断結果に大きな影響を及ぼします。
今回は、霞クリニック 技師長である上田 英弘氏をお招きし、「読影しやすい画像撮影のポイントとクラウドシステムによる遠隔画像診断」をテーマに解説いただきました。
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目次[非表示]
- 1.霞クリニックのシステム概要
- 2.的確な画像撮影・画像診断を行うポイントとは?
- 2.1.ポイント1. 最適な濃度調整
- 2.2.ポイント2. 断面の方向
- 2.3.ポイント3. 目的に合わせたスライス厚
- 2.4.ポイント4. 有効な視野サイズ(FOV)
- 2.5.ポイント5. 撮像
- 3.依頼内容やカルテ情報を読み解くポイント
- 4.Q&A
霞クリニックのシステム概要
━━ まずは上田さんが勤める、霞クリニックのシステム概要と環境について簡単に教えてください。
上田氏(以下、上田) 霞クリニック内の特徴は、LOOKREC(ルックレック)というクラウドサービスを利用した診断を行っている点です。検査が終わったらモダリティからLOOKRECに画像をアップロードし、診断医がLOOKREC上で確認する診断フローとなっています。
一般的には、検査終了後に確定画像をCD-ROMに書き込みをし、画像診断レポートを同梱したうえで患者様に手渡しする、もしくは紹介元の医療機関に郵送します。しかし、この運用だと紛失や自然災害による遅延などが発生し、紹介元に届かないリスクもあります。また、紹介元医療機関では、CD-ROMやレポートが届くまで検査結果がわからないので、診療を開始するまでに時間がかかるというデメリットが発生します。
しかし、クラウド連携を図ることでこれらは解決できます。
まず、画像や診断レポートを紹介元の医療機関が閲覧・ダウンロードが可能となり、紛失リスクを回避できます。さらに、検査結果や画像はクラウドにあるため、患者様の受診前に診断レポートが閲覧可能となります。
次に、霞クリニック内の環境についても簡単に触れさせていただきます。
当院では、放射線技師がモダリティで撮影を行うと、参照画像端末に撮影画像が自動転送されます。そして、同施設内にいる常勤の診断医が撮影後すぐに0次読影を行いつつ、日常的に情報共有ができる環境を整備しています。
このような環境のため、放射線技師と診断医間でも「どのような画像が読影しやすいのか」といったことも、日常的にコミュニケーションが取れる状態です。
的確な画像撮影・画像診断を行うポイントとは?
━━ 読影しやすい画像を撮影するポイントにはどんなものが挙げられるでしょうか?
上田 的確な画像診断を行ううえで、読影しやすい画像撮影を心がけることが重要です。読影しやすい画像撮影のポイントを一つずつ解説していきます。
- 最適な濃度調整
- 断面の方向
- 目的に合わせたスライス厚
- 有効的な視野サイズ(FOV)
- 撮像
ポイント1. 最適な濃度調整
最適な濃度調整は、ご存じの方も多いかと思いますが、ウィンドウレベル(WL)とウィンドウ幅(WW)を調整することを指し、目的に合わせてWL/WWを固定させて転送することが重要です。
例えば、腹部領域の撮影では、コントラスト差が小さいため、WL/WWを調整し、コントラスト差を見えやすくすることがポイントです。
ポイント2. 断面の方向
基本的には横断像で画像を取得することに加えて、直交する一方向を追加することで、読影しやすい検査になります。例えば、冠状断面像の追加が有効です。解剖学的構造の可視化や病変の評価、画像処理の応用につながります。
撮像技術の一工夫として、位相エンコード方向を変更(AP方向からFH方向)することで、蠕動運動によるアーチファクトを回避できます。
ポイント3. 目的に合わせたスライス厚
CTは、薄いスライス厚(1mm)ほど、微細な身体の構造や小さな病変を明瞭に把握できるうえ、MPR作成も容易となります。一方で、スライス枚数が増加してしまうと、読影医の負担が大きくなってしまいます。
スキルアップとして、X線CT撮像ガイドライン~GALACTIC~(改訂3版)をおすすめします。標準的な撮影法や画像診断のコツを学ぶ参考にしてください。
MRIは、複数種類のシーケンスで撮像するケースでは、同じ方向(Ax/Cor/Sag)でスライス厚を揃えることで、読影しやすい検査となります。
特に前立腺がんのMRI画像診断においては、T2強調像、拡散強調像、Dynamic造影像など、3つの所見を組み合わせて評価を行うため、スライス厚やスライス位置を揃えることが重要です。
ポイント4. 有効な視野サイズ(FOV)
視野サイズは、一般的に拡大観察するとピクセルサイズが大きくなってしまうため、画像が劣化します。そこで、FOVを絞り、ピクセルを小さくすることで、画質を担保できます。
骨折精査のCT画像において、高分解能な撮影を行った場合でも、DFOVを小さくし、的確な画像診断につなげる必要があります。
ポイント5. 撮像
MRIの撮像ポイントは以下の通りです。
- 脊椎のAxは椎間孔も含める
- 乳腺DynamicのMIPは3方向が有用である
- 頭部ルーティンにT2*やSWIも含める
- 軟部腫瘤はT2強調画像、T1強調画像のみで良いのか吟味する
頸椎や腰椎を診る時は、椎間孔の評価が必要です。Sagで神経根を確認し、Axの範囲を決定しましょう。
Dynamic画像は、造影剤を入れながら定時的な時間経過に伴う画像推移を診るものです。血流動態を診ながら、写真を診る必要があるため、MIPにすることで見た目が分かりやすくなります。また、3方向から撮像することで、奥行きの把握につながります。
頭部ルーティンは、撮像種類が複数あります。
例えば、T1強調画像とT2において橋の右側において、低信号である場合、(実際は血管集)T2*強調画像もしくはBold画像を撮影しておくことで、適切な評価を実現できます。
軟部腫瘤の撮像においては、脂肪併用T2強調画像とT1強調画像のみでは、正しい信号値や解剖情報が分からないケースがあります。そのため、脂肪抑制を併用しないT2強調画像を追加することで、正しい色や筋肉の状態を的確に把握できます。
依頼内容やカルテ情報を読み解くポイント
━━ 読影依頼の内容やカルテ情報を読み解くうえでのポイントもあれば教えてください。
上田 依頼内容やカルテ情報から、最適な撮像手法について検討することも重要です。例えば、半月板損傷疑いのある患者さんで、ルーティンがT2強調画像とT1強調画像にしている場合、潰れてしまうことがあるため、プロトン強調画像を加えると見やすくなります。
また、腰背部痛の胸腹部CT検査は、基本的には横断像と冠状断像で問題ないと思われます。しかし、痛みがあり腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折、腎臓結石、尿路感染症などが考えられる場合には、追加での画像作成を検討すべきです。
後頭頚部痛に関して、頭部MRAの撮影範囲にVAを含ませ、解離の除外を行い、必要であればプロトン強調画像のCorを撮影することが効果的です。その他、スポーツ歴の有無も事前にヒアリングしておくことで、追加すべき撮像を検討する際の判断材料となります。
━━ ちなみに上田さんは生成AIや医療AIの発展についてはどのようなお考えでしょうか?
上田 活用すべきであると考えます。診断に最適な画像提供を手助けしてくれる医療AIツールの導入もおすすめです。
例えば、乳がんが疑われる患者さんの乳腺の撮像もCAD for Breast MRIを利用することで、調べるべき指標を表示してくれます。また、EIRL Chest CTは、肺野領域の小さな結節を見つけるのに役立ちます。関心領域を抽出し、体積と最大径を測定できます。
また、カルテ内容をChatGPTに入力することで、ある程度の精度を担保した回答を得られます。検査前に考えられる病名を把握しておくと、検査の精度も高まるでしょう。
Q&A
Q1. 体格のよい患者のMRI撮影ポイント
━━ プロスポーツ選手も受診するスポーツクリニックを経営しています。先日、ラグビー選手の肩のMRIを撮影しましたが、身体が大きすぎてコイルが通常通り巻けず苦労しました。このような患者さんの撮影をする際の注意点を教えて下さい。
上田 まずは自施設にある機器の性能の把握が重要なポイントになります。
磁場強度やコイルの種類によって工夫するポイントが異なりますが、巻きつけずに使用できないかを検討してみましょう。そのうえで筋肉量の多いスポーツ選手においては、感度範囲などを含めコイルの性能を事前に把握し、シミュレーションを重ねたうえで工夫を凝らすことが重要です。
撮像のポイントとして、当院では関節唇を中心に回すRadial Scanを使用しており、評価の行いやすい機器の導入もおすすめです。
Q2. 造影CTの造影方法の決定
━━ 造影CTの撮影オーダーが出たときに、平衡相だけでよいのか、ダイナミックで撮影するべきか判断に迷う場面が時々あります。どのような基準で造影方法を決定すればよいでしょうか?
モデレーター この質問は放射線技師である私も共感する部分があります。元々、システム管理をメインにやっていたのですが、周囲に相談できる専門の担当者がいない夜間の当直時など1人でCT撮影が必要になった場合、何を基準に造影方法を決定するのか教えていただきたいです。
上田 当院では、造影CTは実施しておらず適正な回答ができるか否か微妙ではありますが、当院の院長と議論する中では、ダイナミック撮影といえば肝細胞癌などの腫瘍性病変の血行動態の画像評価が目的になるかと思います。
夜間の場合は、急性腹症などのイメージがありますが、このような場合は、造影一相でよいと考えます。消化管出血や動脈出血の場合は、動脈相があった方がよいと思います。
また、ダイナミック撮影は、スライス枚数の増加も懸念されるため、診断医の負担となる可能性があります。また、診断を見落としてしまうリスクにもなります。
Q3. 過去画像と比較するための撮影ポイント
━━ 放射線科医が読影する際、過去画像があれば比較したうえでレポートが記載されていると思います。CTやMRIを撮影する時、過去画像との比較を意識して気を付ける撮影ポイントがあれば教えて下さい。
モデレーター 過去画像との比較を前提に撮影する場合に留意すべきことで具体的にどんなことが挙げられますか?
上田 画像診断において、過去画像の有無は診断に大きく影響します。そのため、前回の撮影時と設定がズレてしまうと再現性の悪い画像になり、診断にも大きな影響を及ぼします。
過去画像との比較が必要な場合は、撮影前に検査オーダーや過去画像を確認することはもちろんですが、過去画像と横に並べた際に、スライス厚やFOVなど前回と同じになるように工夫することで読影しやすくなります。
━━ 的確な画像診断を支えるのは、撮影のポイントを押さえる知識と日々の実践の積み重ねになるのだと感じました。本日はありがとうございました!
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