マンモグラフィ読影認定医になる方法を徹底解説!重要性やAS評価も紹介

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乳がん検診では、乳房をX線で撮影して性状を評価するマンモグラフィと呼ばれる検査が行われますが、正確な診断のためには高い読影スキルが必要です。

一方で、乳がんは女性の発症するがんの中で最も多いがんであり、その発症者は年々増加傾向です。高齢化の影響を無視した年齢調整罹患率でさえ増加傾向であり、正確な知識と経験を持つマンモグラフィ読影認定医のニーズは今後さらに高まっていくことが予想されます。(参考情報:がん情報サービス「がん種別統計情報 乳房」)

そこで、この記事ではマンモグラフィ読影認定医の概要や重要性、ランクなどについて詳しく解説します。この記事を読むことで、マンモグラフィ読影認定医を目指す道筋が明確となり、読影医として活躍の場を広げるきっかけを掴めるため、ぜひご一読ください。


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監修者情報:川野倫作(放射線診断専門医・IVR専門医)


目次[非表示]

  1. 1.マンモグラフィ読影認定医とは
    1. 1.1.資格取得までの流れと条件
  2. 2.マンモグラフィ読影医のランク
    1. 2.1.4段階評価(A〜Dランク)
    2. 2.2.マンモグラフィ読影医のランクアップ読影試験とは?
    3. 2.3.マンモグラフィ読影医のAS評価とは?
  3. 3.マンモグラフィ読影医の重要性
    1. 3.1.背景1. 乳がん患者数の増加
    2. 3.2.背景2. 読影技量が及ぼす影響
    3. 3.3.背景3. 他の専門医と比較し歴史が浅い 
  4. 4.遠隔画像診断サービスという選択肢
  5. 5.まとめ


マンモグラフィ読影認定医とは

マンモグラフィ読影医

マンモグラフィ読影認定医とは、乳がんの診断に必要不可欠なX線検査、マンモグラフィの読影について高い精度や知識を持つ認定医のことです。

認定するのは日本乳癌検診学会・日本乳癌学会・日本医学放射線学会・日本産科婦人科学会など、さまざまな分野の学会から推薦された委員で構成される「特定非営利活動法人 日本乳がん検診精度管理中央機構」であり、乳がん検診の精度を維持する目的で活動しています。(参考資料:日本乳がん検診制度管理中央機構「NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構について」)

資格取得までの流れと条件

実際に資格取得するまでの流れと条件は下記の通りです。

  • 医師免許所有者が2日間のマンモグラフィ講習会を受講
  • 講習会受講後、試験を受けて合格する
  • 試験結果を受けてランク分けされる

他学会の専門医資格では、数年の研修期間や必要経験症例・ペーパー試験に口頭試験と、資格を有するためには数多くのハードルがありますが、マンモグラフィ読影認定医の認定の流れや条件は非常にシンプルです。

そのため、試験を受けるまでのハードルは他資格と比較して低く設定されていますが、試験自体は高度な知識と専門性が問われます。

日本乳癌検診学会「アンケート調査によるマンモグラフィ読影講習会の精度管理」によれば、認定取得率は毎年65%前後で推移しており、認定取得には一定以上の知識や診断能力が必要不可欠であることが示されています。

また、マンモグラフィ読影認定医と他の資格試験の違いは、試験結果を受けてランク分けされる点です。

マンモグラフィ読影医のランク

マンモグラフィ読影医

マンモグラフィ読影認定医は、試験評価に応じてA〜Dの4ランクに振り分けられます。

また、Aランクのさらに上にはASランクと呼ばれる特別な評価も存在します。

4段階評価(A〜Dランク)

マンモグラフィ読影認定医の4段階評価と、その評価基準は下表の通りです。

マンモグラフィ読影認定医の4段階評価
評価
感度
特異度
現場での能力
取得割合

Aランク

90%以上

90%以上

読影責任者として活躍が期待される

5〜15%

Bランク

80%以上

80%以上

読影者として活躍が期待される

50〜60%

Cランク

70%以上

70%以上

Bランク以上の者とともに読影する

15〜30%

Dランク

70%未満

70%未満

読影以前に基礎の学習が必要である

5〜15%


上表の感度・特異度とは下記の通りで、年度によって見直しがされます。

  • 感度:精査が必要な乳房に対して、カテゴリー3以上と評価をつけられた率
  • 特異度:精査が必要ない乳房に対して、カテゴリー2以下と評価をつけられた率


また、マンモグラフィでは読影医が乳がんの可能性を判定し、下表のようにカテゴリー分類します。

乳がん可能性のカテゴリー分類
カテゴリー分類
検査結果の説明

カテゴリー1

異常なし

異常所見は認めません。

カテゴリー2

良性

異常所見はありますが、明らかに良性と診断できるものです。

カテゴリー3

良性、しかし悪性は否定できず

異常所見があり、良性の可能性が高いですが悪性(乳がん)も否定できません。精密検査を受けてください。

カテゴリー4

悪性の疑い

異常所見があり、悪性(乳がん)の可能性が高いです。
早急に精密検査を受けてください。

カテゴリー5

悪性

異常所見があり、ほぼ悪性(乳がん)と考えられます。
早急に精密検査を受けてください。

参考資料:一般財団法人日本予防医学協会「乳がん検査

精査が必要な乳房に対して、悪性の疑いのあるカテゴリー3以上を判定できた場合は感度が上がり、精査が必要ない乳房に対して、悪性の疑いの低いカテゴリー2以下を判定できた場合は特異度が上がります。

試験によって得られる読影の感度・特異度を元にそれぞれランク分けされるわけです。

特に評価の良好なA・Bのランクの医師は「検診マンモグラフィ読影医師」または「撮影診療放射線技師・医師」と認定され、日本乳がん検診精度管理中央機構のHPに名前や勤務先が開示されます。

マンモグラフィ読影医のランクアップ読影試験とは?

初回でC・Dランクと評価された方は、6ヶ月以上の研鑽期間を経ればランクアップ読影試験を受けることができ、ランクアップを目指せます。

A・Bランクの方は、ランクの質を維持・向上するために、最低でも5年に1回、ランクアップ読影試験を受ける必要があり、この試験を受けないと資格失効となります。

この試験で再評価を受けますが、その際にC・Dランク相当の成績の場合、下記のような措置が取られるため注意が必要です。

  • Cランクの評価の場合:6ヶ月以上の研鑽期間後、1年以内に再評価を推奨
  • Dランクの評価の場合:6ヶ月以上の研鑽期間後、1年半以内に再評価を義務

なお、Dランクの評価の場合で1年半以内に再評価を受けなかった場合や、再評価でも再度Dランクの評価であった場合、資格失効となるため注意が必要です。

マンモグラフィ読影医のAS評価とは?

先述したように、通常マンモグラフィ読影認定医はA〜Dランクの4段階で評価されますが、Aランクの医師の中でも最上位の成績を収めた医師には特別な「AS評価」が与えられます。

ASランクのマンモグラフィ読影認定医は読影責任者として活躍が期待されるだけでなく、講習会の講師としても活躍できます。

具体的な評価基準は、感度90%以上、特異度90%以上という従来のAランクの評価に加え、カテゴリー感度85%以上という評価が必要です。

カテゴリー感度とは、精査が必要な乳房に対して、正しいカテゴリー分類が行えた率のことで、通常の感度よりもさらに高度な診断能力が求められます。

AS評価へのランクアップは容易ではありませんが、獲得すれば指導的立場となり、活躍の場も広がるため、ぜひ目指してみると良いでしょう。

マンモグラフィ読影医の重要性

乳がん検査マンモグラフィ

マンモグラフィ読影認定医の重要性は近年急速に高まっており、その背景は主に下記の3つです。

  • 乳がん患者数の増加
  • 読影技量が及ぼす影響
  • 他の専門医と比較し歴史が短い

背景1. 乳がん患者数の増加

がん情報サービス「がん種別統計情報 乳房」によると、乳がんの罹患率は1900年代半ばから一定して増加傾向であり、2019年の人口動態統計では乳がん罹患者数は97,142人と、女性のがんの中で最も多いがんでした。

同じくがん情報サービス「年次推移」にて高齢化の影響を排除した年齢調整罹患率を見ても、乳がんは他のがんと比較して圧倒的に増加傾向であることがわかります。

日本でここまで乳がんが増加傾向にある要因として下記のような要因が挙げられます。

  • 少子化に伴うエストロゲン暴露の増加
  • 食事の欧米化

乳がんはエストロゲンの暴露量に比例して発症リスクが高まることが知られており、授乳や出産中はエストロゲン暴露の多い月経が起こらないことで、エストロゲン暴露量を軽減させるイベントです。

近年、少子化で女性が授乳や出産を経験する機会が減り、エストロゲン暴露量が増加したことで乳がん患者が増加していると考えられています。(参考情報:乳がん診療ガイドライン2022年版「総説3    生理・生殖に関する因子と乳癌発症リスクとの関連 」)

また、閉経後の女性の乳がん発症には肥満が確実に関わっており、食事の欧米化に伴う肥満女性の増加が乳がん患者の増加に関与していると考えられています。(参考情報:乳がん診療ガイドライン2022年版「総説4   食事関連因子と乳癌発症リスクの関連」)

特に少子化は今後さらに深刻化が予想されるため、乳がん患者数の増加に伴い、マンモグラフィ読影認定医の重要性もさらに高まるでしょう。

背景2. 読影技量が及ぼす影響

読影技量によってその結果が左右されやすいマンモグラフィは、下記のような理由から高い読影能力を持つマンモグラフィ読影認定医の存在が必要不可欠な検査です。

  • 認定医でないと検査しても正確に診断できない
  • 偽陽性が問題となっている
  • 特にアジア人では診断が困難である

マンモグラフィはCT検査やMRI検査などの他の画像検査と比較して、読影には高い技量と経験が必要となるため、仮に検査自体は行えても、正確に診断できる医師がいなければ誤診する可能性があります。

特に検診ではがんを見逃すわけにいかないため、実際にはがんではない症例をカテゴリー3以上に振り分けてしまう、いわゆる偽陽性が問題となっています。

さらに、アジア人は欧米人と比較して乳房組織の濃度が高い、いわゆる高濃度乳房(デンスブレスト)の割合が多いため、マンモグラフィで腫瘍を見落としやすく、注意が必要です。

以上のことからも、高い読影技量を持つマンモグラフィ読影認定医の存在が重要です。

背景3. 他の専門医と比較し歴史が浅い 

他の専門医と比較してマンモグラフィ読影認定医の歴史はまだ浅いですが、日本乳がん検診精度管理中央機構の成り立ちを追うことで、その必要性が加速していることが伺えます。

1997年、乳がん検診に関わる6学会(日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本医学放射線学会、日本産科婦人科学会、日本放射線技術学会、日本医学物理学会)によってマンモグラフィ精度管理中央委員会(精中委)が設立されました。

当時、多くの施設や学会では乳がん検診における高精度な診断の必要性を感じており、精中委から認定を受ける施設や精中委に新たに参画する他学会も増加しました。

平成25年には超音波関連の3学会(日本超音波医学会、日本乳腺甲状腺超音波医学会、日本超音波検査学会)も加わり、現在の日本乳がん検診精度管理中央機構が立ち上がったのです。

今後乳がん検診の精度維持・向上のため、超音波検査の技術向上も含めた乳がん検診精度管理の活動範囲拡大も見込まれ、マンモグラフィ読影認定医のさらなる活躍も期待できます。

遠隔画像診断サービスという選択肢

遠隔読影

マンモグラフィ読影認定医の重要性が増す一方で、がん検診の精度管理のためには不用意にマンモグラフィ読影認定医を増やすわけにはいきません。

厳格な試験を経て選出されるため、患者数の増加に対してマンモグラフィ読影認定医は現状不足しており、臨床現場ではマンモグラフィは実施できても読影に対応できないというケースも少なくありません。

そこで、遠隔でマンモグラフィ読影認定医に読影依頼できる遠隔画像診断サービスが今非常に注目されています。

特に遠隔画像診断サービスの利用を勧めるのは下記のようなケースです。

  • 地方や過疎地で周囲に読影医がいない
  • マンモグラフィ読影に自信がない
  • マンモグラフィ以外の画像所見も相談したい

セカンドオピニオン的に利用でき、読影に自信が持てない時など強い味方になります。


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レポートは通常3〜5日ほどで返却されますが、至急の場合は最短1時間でも返却可能なため、読影に自信が持てない方や、読影の手間を少しでも軽減したい方は是非利用を検討してみてください。

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まとめ

この記事ではマンモグラフィ読影認定医の概要や資格取得の流れ、重要性について紹介しました。

乳がん患者が増加する一方で、マンモグラフィは読影医の技量が大きく影響する検査であり、もし診断を誤れば、がんの発見が遅れて患者の寿命にも影響します。

そのため、乳がんに携わる医師であれば、今後更なる普及が見込まれるマンモグラフィ読影認定医を目指すべきです。

医療現場ではまだまだマンモグラフィ読影認定医が不足しているため、取得すれば活躍の場をさらに広げることもできます。

一方で、マンモグラフィ読影認定医の取得はまだまだ狭き門であり、特にAランクや、最上位のASランクの取得は容易ではありません。

そこで、遠隔でマンモグラフィ読影認定医に読影依頼できる遠隔画像診断サービスの利用も1つの選択肢です。

エムネスではPACSのクラウドプラットフォームを提供しており、クラウド上で画像データを共有可能できるため、時間や場所に関わらずマンモグラフィ読影認定医に読影依頼できます。
実臨床で診断に迷うことは日常的に起こりうるため、ぜひこれを機に導入をご検討ください。

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H1113(ペンネーム)
H1113(ペンネーム)
2014年に都内の医学部を卒業後、患者様の健康を守るべく臨床医として約10年間医療現場で活動。現在も麻酔科として急性期病院にて勤務。その傍ら執筆や発信活動を開始し、これまでに執筆した医療・健康系の記事は300を超える。

※導入時に訪問を伴う対応が必要な場合は、別途費用が発生する場合がございます。