
電子カルテとは?導入のメリット・デメリット、失敗しない選び方、クラウド型の特徴を解説
電子カルテとは、診療内容や処方、検査結果などの医療情報を電子的に記録・管理・共有する医療情報システムです。紙カルテに比べて情報の検索や共有がしやすく、診療の効率化や医療安全の向上に役立つため、多くの医療機関で導入が進んでいます。
本記事では電子カルテの基本的な役割、導入によるメリット・デメリット、オンプレミス型とクラウド型の違い、医療DX時代における電子カルテの役割までをわかりやすく解説します。
クリニックの開業を志している方や、電子カルテの導入やリプレイスを考えている医療関係者の方は、ぜひ参考にしてください。
電子カルテやクラウド型PACSの動向、使用感について解説している
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この記事の監修者
株式会社エムネス
メディカルソリューション本部長 執行役員 放射線診断専門医
島村 泰輝
2012年に名古屋市立大学医学部を卒業。同大学大学院医学研究科を修了し、医学博士を取得。放射線診断専門医。名古屋市立大学病院および地域の基幹病院での勤務を経て、2019年に株式会社エムネスへ入職。遠隔画像診断に従事する傍ら、医師視点を活かしたプロダクト開発・設計にも携わる。2025年1月より執行役員 メディカルソリューション本部長に就任。医学部生を中心とした学生団体「MNiST」の監修も務める。

この記事の監修者
株式会社エムネス
営業ビジネスディベロップメント本部 ホスピタル&クリニック営業部
尾中 俊介
2017〜2023年までクリニック向け自動精算機・予約システムなど医療機関の業務効率化ツールの販売・導入に従事。2024年3月、株式会社エムネスに入社し、クリニック向けクラウドPACSを世の中に広める活動に努める。
目次[非表示]
- 1.電子カルテとは?紙カルテとの違い
- 1.1.電子カルテと紙カルテの違い
- 2.電子カルテが果たす役割・満たすべき3つの原則
- 2.1.役割1. 診療内容の記録
- 2.2.役割2. レセプト業務との連携
- 2.3.役割3. 院内の診療情報共有
- 2.4.役割4. 施設間の診療情報共有
- 3.電子カルテの普及率
- 4.電子カルテを導入するメリット
- 4.1.メリット1. 情報共有がしやすい
- 4.2.メリット2. 診療時間を短縮できる
- 4.3.メリット3. 緊急時の迅速な対応に役立つ
- 4.4.メリット4. 紙カルテの保管スペースを減らす
- 4.5.メリット5. 書き間違い、読み違いのミスを防ぐ
- 4.6.メリット6. 記録、指示を効率化できる
- 5.電子カルテを導入するデメリット
- 5.1.デメリット1. 操作に慣れるまでの時間、手間がかかる
- 5.2.デメリット2. 導入費用、運用コストがかかる
- 5.3.デメリット3. 紙カルテからの移行期間が必要
- 5.4.デメリット4. すでに使用しているシステムとの連携
- 5.5.デメリット5. 停電時、災害時の対応が難しい場合がある
- 6.電子カルテの種類・選び方|オンプレミス型とクラウド型の違い
- 6.1.オンプレミス型電子カルテ
- 6.2.クラウド型電子カルテ
- 7.クラウド型電子カルテへの関心が高まっている理由
- 8.電子カルテと連携可!クラウド型PACS「LOOKREC」の導入事例
- 9.まとめ
電子カルテとは?紙カルテとの違い

電子カルテとは、診療内容・処方情報・検査結果などの医療情報を電子的に記録し、医療機関内で共有・管理できる医療情報システムです。
電子カルテに入力した診療情報はサーバーやクラウド上に保存され、院内ネットワークを通じて各端末から閲覧・更新できる仕組みになっており、紙カルテに代わる仕組みとして導入が進んでおり、診療情報の検索性向上、医療スタッフ間の情報共有、診療業務の効率化などに役立つ医療DXを支える基盤として活用されています。
また、電子カルテは、レセプトコンピューターや検査システム、医療画像管理システム(PACS)などの医療情報システムと連携して運用されることが一般的です。これにより、診療記録、検査結果、画像データなどの情報を一元的に管理することが可能になり、診療情報を効率的に記録・共有するための基盤として機能しています。
電子カルテと紙カルテの違い
電子カルテと紙カルテの大きな違いは、診療情報を電子的に保存・共有できるかどうかです。
紙カルテは紙媒体で保管・運用するため、参照や共有、保管スペースの面で負担が生じやすい一方、電子カルテは必要な情報をすぐに呼び出しやすく、院内外での情報共有にも活用しやすいという特徴があります。また、電子カルテは文字が読みやすく、テンプレートや各種システム連携を活用できるため、記録や指示の効率化にもつながります。
一方で、導入費用や運用コスト、操作習得、停電時や障害発生時の対応などには注意が必要です。
つまり、紙カルテは導入しやすい反面、情報共有や保管・運用面に課題があり、電子カルテは効率性や共有性に優れる一方で、システム運用に伴う準備や対策が求められる点が大きな違いといえます。
電子カルテが果たす役割・満たすべき3つの原則
厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6版」にて、電子カルテを含む医療情報システムの安全管理として以下3つの基準を満たすように求めています。
見読性 | 必要に応じ電磁的に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を作成できるようにすること |
|---|---|
真正性 | 電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中における当該事項の改変又は 消去の事実の有無及びその内容を確認することができる措置を講じ、かつ、当該電磁的記 録の作成に係る責任の所在を明らかにしていること |
保存性 | 電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中において復元可能な状態で保存することができる措置を講じていること |
これらの基準を満たしていることは前提とし、電子カルテが果たす役割は主に以下の4つが挙げられます。
- 診療内容の記録
- レセプト業務との連携
- 院内の診療情報共有
- 施設間の診療情報共有
役割1. 診療内容の記録
電子カルテは紙カルテと同じように、診療内容を記録する役割を果たします。電子データの内容はすぐに呼び出し、後から参照できます。
役割2. レセプト業務との連携
医療機関は主に電子レセプト(診療報酬明細書)を各都道府県の健康保険などに提出することで、診療報酬を受け取ります。紙カルテの場合、記載された診療内容をレセプト作成用のコンピューターへ入力しますが、電子カルテでは記録すると同時にレセプト業務に連携しやすくなるため、請求業務の効率化にも役立ちます。
役割3. 院内の診療情報共有
忙しい日常業務の中、分厚い紙カルテを参照する時間がとれないことがあります。電子カルテであればスタッフは目の前の患者さんがどのような病状なのかすぐに把握できるので、迅速な情報共有が可能になります。
役割4. 施設間の診療情報共有
超高齢化社会となった日本では、地域ごとで医療・介護・生活支援を一体として提供する地域包括ケアシステムを構築しています。システム構築に欠かせないのが、病院-クリニック、医療機関-介護施設・介護保険など施設間での情報共有です。情報共有の基盤として、電子カルテは紙カルテよりも迅速かつ正確に運用しやすいと言えます。また、地域医療連携を進めるうえでも、電子的な診療情報の管理は重要です。
電子カルテの普及率

様々な分野でデジタル化が進む中、1990年代後半以降、電子カルテの導入が徐々に進みました。
その後急速な普及が期待されていた電子カルテですが、コストや技術的な問題などがあり、普及は思ったように進んでいません。厚生労働省が公表したデータによると電子カルテの普及率は令和5年時点で一般病院で65.6%、一般診療所で55.0%となり、過半数を超える導入率となっています。
電子カルテシステムの普及状況の推移
年度 | 一般病院 | 一般診療所 |
|---|---|---|
平成23年 | 21.9% | 21.2% |
平成26年 | 34.2% | 35.0% |
平成29年 | 46.7% | 37.0% |
令和2年 | 57.2% | 49.9% |
令和5年 | 65.6% | 55.0% |
厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
電子カルテを導入するメリット

電子カルテ導入のメリットは、主に以下の通りです。
- 情報共有がしやすい
- 診療時間を短縮できる
- 緊急時の迅速な対応に役立つ
- 紙カルテの保管スペースを減らす
- 書き間違い、読み違いのミスを防ぐ
- 記録、指示を効率化できる
メリット1. 情報共有がしやすい
電子カルテではアクセスのしやすさ、きれいな字といった理由から情報共有がしやすいというメリットがあります。特に「クラウド型」であれば、院内だけでなく院外の施設と連携をとりやすくなります。
メリット2. 診療時間を短縮できる
電子カルテでは、患者さんのIDを入力すればすぐに情報を呼び出すことができます。ID順に並べられた紙カルテを探しに行くことなく診療の準備ができるため、患者さんを待たせる時間を減らすことができます。
メリット3. 緊急時の迅速な対応に役立つ
万が一患者さんが急変した場合、紙カルテを探している時間はありません。電子カルテであればすぐに患者さんの病状を把握することができます。
メリット4. 紙カルテの保管スペースを減らす
クリニックでも診療を長く続けていると患者さんの数は相当なものになり、紙カルテの保管スペースが必要です。電子カルテであればPCやモニタ、サーバーのスペースが確保できれば十分です。
メリット5. 書き間違い、読み違いのミスを防ぐ
医療スタッフはみな人間ですから、書き間違いや読み間違いをする可能性があります。読みづらい手書き文字が原因で確認に時間を要する場面も少なくありません。書き殴られた文字が元で、医療事故が起きた事例もありますが、そのようなミスを防ぐことができます。
メリット6. 記録、指示を効率化できる
ルーチンで行う検査や点滴の指示、処方のdo指示、紹介状に記載する挨拶の文言など、繰り返しカルテに記載する内容は少なくありません。電子カルテではテンプレートやクリニカルパスの利用により、効率よく記録・指示を行うことができます。
電子カルテを導入するデメリット
電子カルテのデメリットとしては、以下の通りです。
- 操作に慣れるまでの時間、手間がかかる
- 導入費用、運用コストがかかる
- 紙カルテからの移行期間が必要
- すでに使用しているシステムとの連携
- 停電時、災害時の対応が難しい場合がある
デメリット1. 操作に慣れるまでの時間、手間がかかる
最近では直感的に操作できる電子カルテが多く、先生方が入力操作を苦にすることは減ってきています。それでも実務を進めていくとさまざまな問題に直面するもの。機種選定の際にはサポートが充実しているものを選ぶのが良いかもしれません。
デメリット2. 導入費用、運用コストがかかる
電子カルテの導入費用はシステムにより様々で、無料で開始できるケースもあれば1000万円を超えることもあります。一般的には300-500万円程度であることが多いようです。継続的なメンテナンスが必要となるため、運用にもコストがかかります。
デメリット3. 紙カルテからの移行期間が必要
これまで紙カルテを運用していた施設では、電子カルテにする場合移行期間が必要です。継続的にかかっている患者さんは、以前の紙カルテを参照しながら電子カルテに記録していくという作業が必要になります。
デメリット4. すでに使用しているシステムとの連携
すでにオーダリングシステムやレセプトコンピューターを導入している場合、新たに採用する電子カルテと連携がとれるのか確認が必要です。相性が悪い場合、全てを更新しなければならないことがあります。
デメリット5. 停電時、災害時の対応が難しい場合がある
停電してしまうと電子カルテを起動できず、内容を確認できなくなります。蓄積された情報が消失してしまう可能性もあります。ただし紙カルテでも物理的な破損、消失のリスクはあります。
電子カルテの種類・選び方|オンプレミス型とクラウド型の違い
電子カルテには、主に以下の2種類があります。
- オンプレミス型電子カルテ
- クラウド型電子カルテ
電子カルテの選び方の第一歩として、どちらの種類の電子カルテが、自院により適切かを考える必要があります。それぞれの特徴を解説します。
オンプレミス型電子カルテ
オンプレミスとは院内に専用のサーバーを設置し、電子カルテを院内で運用する方法です。
データは院内サーバーに蓄積されるため原則として外部との連携がなく、基本的なルールを守っていれば安全性が高いと考えられています。しかし、セキュリティ更新や維持、メンテナンスは院内で手動で行う必要があり、安全性を維持するには手間も費用もかかり大変になります。もし、メンテナンスを怠ると、サイバー攻撃やウイルス感染などのリスクがあることを覚えておきましょう。
また、自院に合わせたカスタマイズ性が高いこともメリットのひとつである反面、導入費用や定期的な更新費が発生するため、コストが高額になりやすい傾向にあります。
クラウド型電子カルテ
クラウド型は、基本的に院内サーバーにデータ保管をするのではなく、クラウド上にデータを保管します。専用サーバーが不要なケースが多く、導入費用やメンテナンスコストが安価でコストメリットの大きさがメリットです。
データはクラウド上に保存されるため、インターネット回線があればどこからでもアクセスできます。その一方、セキュリティ対策やサイバー攻撃・災害時などに事業をどのように継続するかといった計画が重要になります。政府は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」を策定し、厳しい安全管理を課しています。
ただし、クラウドサービスはサービス提供者がセキュリティ対策を講じており、自動で常に最新の状態にアップデートされるため、セキュリティ管理をしっかりと実施されているメーカーのものであれば、オンプレミス型よりもむしろ安全であるという考えもあります。
以下のセミナーレポート記事でも、オンプレミス型とクラウド型の違いや、両者のセキュリティについて解説しています。ぜひ参考になさってください。
クラウド型電子カルテへの関心が高まっている理由
電子カルテにはオンプレミス型とクラウド型がありますが、近年は医療DXの推進やオンライン診療の普及を背景に、クラウド型電子カルテへの関心が高まっています。
その背景には、単なるコスト面のメリットがあるだけでなく、診療情報の共有や業務効率化を実現する基盤としての重要性が高まっていることがあります。ひとつずつ解説していきます。
医療DX推進と電子カルテの標準化
内閣官房は2023年に「医療DX推進本部」を立ち上げ、電子カルテ情報の標準化や医療情報の利活用を重点施策として進めています。地域医療連携や施設間での情報共有を実現するうえで、紙カルテによる運用には限界があり、電子カルテの活用は不可欠です。
特にクラウド型電子カルテは、施設ごとのシステム差異を吸収しやすく、医療DXが目指す情報連携の基盤として適しています。
コロナ禍・オンライン診療で浮き彫りになった課題
コロナ禍を契機にオンライン診療が注目されましたが、診療に必要な過去の医療情報を迅速に参照できないことが課題として顕在化しました。救急搬送時や初診患者の対応においても、即座に医療情報へアクセスできる体制の重要性が再認識されています。
クラウド型電子カルテは、場所を問わず診療情報へアクセスでき、医療連携を円滑に進めることができるため、こうした課題の解決にも寄与します。
業務効率化が進み、医師の働き方改善に寄与
クラウド型であれば常に自動で最新のシステムが保たれるため、セキュリティ対策や制度改定への対応も行いやすくなります。さらに、クラウド型PACSなど他の医療システムと連携することで、診療情報や画像データを一元管理できます。
医師の働き方改革が推進される昨今、クラウドサービスをうまく活用することで、業務効率化と医療の質向上の両立が可能となります。
電子カルテと連携可!クラウド型PACS「LOOKREC」の導入事例
電子カルテと連携できる代表的な医療システムのひとつが「クラウド型PACS」です。
レントゲンやCTなどの検査画像は情報量が多くフィルムでは閲覧に手間がかかり、ディスクの読み込みに時間を要するなど情報共有が難しい領域です。そこで役立つのがPACSです。
電子カルテ同様に、PACSもオンプレミス型とクラウド型があり、電子カルテのクラウド化が進むにつれ、PACSもクラウド型の普及が進んでおり、この流れは今後もより拡大していくと見込まれています。
電子カルテの導入に伴い、相性のいいクラウド型PACSを探していたことから、弊社クラウド型PACS「LOOKREC」を導入いただいた事例記事です。開業を考えられている方はぜひ参考にしてください。
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まとめ
電子カルテの基本的事項からメリットとデメリット、最近の社会的動向を踏まえてクラウド型電子カルテが持つ意味まで紹介しました。電子カルテ導入にはメリットとデメリットの両面があるのは事実です。導入費用や目の前の費用対効果を気にせざるをえないのは当然のことです。
しかしながら昨今の社会的情勢や動向を見ると、電子カルテは医療を行う上で電気や水道などと同じように欠かすことのできないインフラになりつつあると言えます。ただの記録装置から情報共有のツールとして発展する電子カルテに、引き続き注目しましょう。
電子カルテやPACSなど、インターネットに接続がしている医療機器・医療情報システムが増えてきた際に重要になるのが、クリニックの院内ネットワークの構築と整備です。それらに関して解説していただいた以下のセミナーレポートもぜひ参考にしてください。
クリニック開業を検討されている方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。







