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バックオフィスの仕組み化でつくる「事務ゼロ」体制【診療に集中できるクリニック経営セミナーレポート・前編】

クリニック経営では、患者の診療だけでなく、経理や労務、会計資料の整理、勤怠管理、銀行対応など、さまざまなバックオフィス業務が発生します。

こうした業務を院長自身が抱え込むことで、本来注力すべき診療や経営判断に十分な時間を割けなくなるケースも少なくありません。また、限られたスタッフでクリニックを運営するためには、個人の経験や対応力に依存するのではなく、誰が担当しても業務が滞らない仕組みを整える必要があります。

株式会社エムネスでは、開業・分院展開を目指すドクター向けに、全2回で学ぶ「診療に集中できるクリニック経営」実践セミナーを開催しました。

前編となる今回は、「白衣を脱がない経営~AI・DXでつくる、診療に集中できる『事務ゼロ』体制~」をテーマに、アンバー会計事務所 代表/Amber lab株式会社 代表取締役の井上 眞帆氏と、株式会社SoLabo 代表取締役の田原 広一氏が登壇。

院長が抱えているバックオフィス業務を整理し、紙の削減やクラウドへのデータ集約、専門家への外注などによって、診療に集中できる体制をつくる方法を解説いただきました。

Amber lab株式会社代表取締役 税理士/MBA 井上眞帆氏

登壇者
アンバー会計事務所 代表
Amber lab株式会社 代表取締役
税理士/行政書士/MBA

井上 眞帆 氏

上場企業役員秘書を経て税理士登録。MBA取得後、順天堂大学「医療MBA」2期生として研鑽を積む。秘書経験を活かした「丸投げできる安心感」と、独自の戦略会計モデルを用いた「経営の軍師」としての視点を両立。退屈な月次決算を「PDCAを回す通知表」へと昇華し、「経営するには時間が足りない」というドクター永遠の課題を最新のDXで解決。税務の枠を超え「創益」にフルコミットし、持続可能な医療経営への貢献をモットーとする。

株式会社SoLabo代表取締役・税理士有資格者 田原広一

登壇者
株式会社SoLabo 代表取締役
税理士有資格者
田原 広一

株式会社SoLabo代表取締役。税理士として創業融資・資金調達支援に長年携わり、経営者の資金繰り・事業成長を支援。現在は税理士業界向けボランタリーチェーン「TAXGROUP」を展開し、税理士事務所のDX・AI活用・バックオフィス体制構築を支援している。本セミナーでは、税理士・資金調達支援・税理士業界支援の立場から、クリニック経営におけるバックオフィス体制と資金調達力の関係について解説する。

クリニック経営で院長が診療に集中できる「事務ゼロ体制」とは

━━ 今回のテーマである「事務ゼロ体制」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

井上 眞帆氏(以下、井上) 「事務ゼロ体制」とは、クリニックの事務作業そのものを完全になくすことではありません。院長先生が経理や資料整理などの実務を抱え込まず、診療に専念しながら、必要な経営判断を行える状態をつくることです。

━━ 院長が経営に関わらなくなる、という意味ではないのですね。

井上 はい。今回のセミナーテーマである「白衣を脱がない経営」も、院長先生が経営に関与しないという意味ではありません。院長先生にしかできない診療や経営判断へ時間を振り分け、それ以外の業務を仕組み化や外部委託によって手放すという考え方です。

━━ 診療以外の実務を手放しながら、経営判断に必要な情報はきちんと把握する。その両立が重要ということですね。

井上 その通りです。先生方は医療のプロですが、開業した瞬間から経営者にもなります。しかし、開業前に経営やバックオフィスについて体系的に学ぶ機会は、必ずしも多くありません。

クリニック開業後に起こりやすい「バックオフィスパニック」

━━ 開業前には想定していなかった業務が、開業後に一気に増えるということでしょうか。

井上 患者様のためにより良い医療を提供したいと考えて開業しても、実際には診療以外の対応に追われてしまう先生が少なくありません。開業後には、スタッフの採用や労務問題への対応、税金の支払い、税理士に送る資料の整理、銀行対応など、さまざまな業務が発生します。

━━ 診療とは別に、経理やスタッフ対応はどのようなタイミングで行われているケースが多いのでしょうか。

井上 「診療が終わった後が一番忙しい」という先生方もいらっしゃいます。患者様への対応だけで精一杯のなか、スタッフからの相談を受け、書類を整理し、銀行や専門家にも対応しなければなりません。私たちは、この状態を「バックオフィスパニック」と呼んでいます。

━━ 診療と並行して、慣れない経営業務まで処理するとなると、混乱が生じるのも無理はありませんね。

井上 そう思います。私自身もMBAで経営を学び、経営者を支える仕事をしていましたが、独立直後はかなり慌ただしい状態になりました。

重要なのは、院長先生個人の対応力だけで乗り切ろうとするのではなく、業務が自然に回る仕組みをつくることです。

院長の時間が不足する3つの理由

院長の時間が不足する理由

━━ 院長の時間が不足する理由はどのようなことが挙げられますか。

井上 院長先生の時間が不足する背景には、大きく3つの理由があります。

1つ目は、医療のプロである先生が、開業と同時に初めて経営者になることです。2つ目は、バックオフィス業務が非常に多いことです。3つ目は、業務を処理する仕組みがないことです。

━━ なかでも時間を奪う大きな原因となり得るのはどの理由だとお考えですか。

井上 私自身は、3つ目の「業務を処理する仕組みがないこと」が、時間を奪う大きな原因だと考えています。

医療現場では、電子カルテや予約システム、クラウド型の医用画像管理システムなど、さまざまなデジタル化が進んでいます。

一方、バックオフィスでは、紙のタイムカードや通帳、領収書、請求書などが残っているクリニックもあります。例えば、ATMへ通帳の記帳に行く、診療後にタイムカードを集計する、領収書をひとまず箱に入れるといった作業が発生していないでしょうか。今月いくら使えるのかを確認するために、通帳や書類を探さなければならない状態も、仕組みが整っているとはいえません。

バックオフィス業務の非効率がクリニック経営に与える影響

━━ バックオフィス業務の仕組みができていない状態とは、具体的にどのような状態ですか。

井上 例えば、同じ資料を何度も用意し、税理士や社労士などへ個別に送っている状態です。

5月から6月頃には、住民税の特別徴収税額通知書が届きます。税金に関係する書類だからと税理士に送った後、給与計算に必要だからと社労士からも提出を求められるケースがあります。さらに、税理士にはメール、社労士にはLINE、銀行には郵送といったように、提出方法がそれぞれ異なることもあります。

どの資料を、いつ、誰に、どの方法で送ればよいのかが決まっていなければ、院長自身が毎回判断しなければなりません。

━━ 送付方法が統一されていなければ、対応済みかどうかの確認にも時間がかかりそうですね。

井上 診療が優先されるため、資料の提出はどうしても後回しになります。その結果、提出を忘れたり、期限を過ぎてから催促を受けたりすることもあります。

この状態を解決するには、院長先生が忘れないように努力するのではなく、同じ対応を繰り返さなくてよい仕組みに変える必要があります。

バックオフィス業務の遅れが院内と患者対応に及ぼす影響

━━ バックオフィス業務の遅れは、クリニック経営にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

井上 バックオフィス業務の遅れで失われるものは、院長先生の時間だけではありません。より大きな問題は、約束と期限を守れないことで、クリニックの「信用」が失われていくことです。

信用は売上のように数字やグラフで確認できません。そのため、問題に気づいたときには、取り戻すことが難しい状態になっている場合があります。

━━ 期限を守れない状態は、院内にも影響しますか。

井上 もちろん院内にも影響を及ぼします。まず、一部のスタッフに業務が集中します。中心となるスタッフが疲弊し、退職してしまうと、新たなスタッフの採用や研修が必要です。また、十分な引き継ぎができなければ、患者様への対応品質が下がり、クレームにつながる可能性もあります。その結果、既存スタッフの不満が高まり、職場全体に不信感が生まれます。

このように一つの問題をきっかけにドミノ倒しのように影響が広がると、その連鎖を止めるのは簡単ではありません。

数字と期限の管理がクリニックの信用をつくる

クリニック経営の信用

━━ バックオフィスを整えることは、クリニックに関わる人との関係を守ることにもつながるのですね。

井上 銀行への借入金の返済、スタッフへの給与の支払い、税理士への資料提出、患者様への対応品質など、院長先生と周囲の人は、数字と期限によってつながっています。

数字を管理することは、ステークホルダーとの約束を守ることです。バックオフィスを整えることは、クリニックの信用を守ることでもあります。

━━ 実際に、業務の仕組み化が金融機関からの信用につながった事例もあるのでしょうか。

井上 私たちが支援したあるクリニックでは、当初、月次の試算表が半年ほど作成されておらず、会計資料を毎月提出する運用も定着していませんでした。

そこで、会計資料を毎月提出する仕組みを整え、月次試算表を作成できるようにしました。

━━ 作成した試算表は、院内で確認するだけではなく、金融機関にも提出したのですね。

井上 はい。金融機関にも継続して提出しました。その後、院長先生が分院開設を検討した際には、希望額の融資を速やかに受けることができました。

毎月数字を確認していたため、院長先生自身が経営状況を説明できたことも大きかったと思います。

クリニックの「事務ゼロ体制」をつくる3つのステップ

事務ゼロ体制3つのステップ

━━ ここからは、「事務ゼロ体制」を構築する具体的な方法を教えてください。

井上 私たちは、次の3つのステップで構築できると考えています。

  1. 紙をやめる
  2. データを保管する場所を決める
  3. 数字を見える化する

━━ クラウド会計などのシステムを最初に導入するのではなく、紙を減らすことから始めるのですね。

井上 クラウド会計を導入すること自体は有効ですが、この順番が非常に重要です。

紙の資料が残り、資料を保管する場所も決まっていない状態で会計ソフトだけを導入しても、バックオフィス業務全体の効率化にはつながりません。

まず紙を減らし、必要なデータが決まった場所に集まる状態をつくります。そのうえで会計システムと連携し、数字を見える化する必要があります。

ステップ1. 紙の書類を発生させない

━━ 紙を減らすために、クリニックがすぐに取り組めることはありますか。

井上 すべての紙を明日からなくすことは難しいと思います。

まずは、現金払いや銀行振込で対応している支払いを、カード決済や口座振替に変更することから始められます。

━━ 取引先から届く請求書も電子化できますか。

井上 紙で届いている請求書を、電子請求書へ変更できないか確認してみてください。

請求書と一緒に「電子請求書へ切り替えませんか」という案内が入っていても、そのまま紙で受け取っているケースは少なくありません。

━━ 電子請求書へ変更すれば、受け取り後の作業も減らせますね。

井上 紙の請求書を受け取り、保管し、税理士へ送る作業を減らせます。

紙をスキャンしてデータ化する方法もありますが、最初から紙を発生させない方が効率的です。変更できる支払い方法や請求書から、一つずつ電子化していくことが大切です。

ステップ2. データの保管場所を一つにまとめる

━━ 電子化した資料は、どこへ保存すればよいのでしょうか。

井上 紙を減らした後は、データを入れる場所を一つに決めます。

私たちは、その保管場所としてGoogleドライブを活用しています。

━━ 共通の保管場所をつくると、資料提出の流れはどのように変わりますか。

井上 これまで院長先生が、税理士や社労士、銀行へ個別に資料を送っていたとします。

共通の保管場所をつくれば、院長先生がその都度送付しなくても、必要な人が必要な資料を見に行けるようになります。

━━ 関係者全員に、すべての資料を公開するわけではありませんよね。

井上 もちろん、すべての資料を全員に共有する必要はありません。

税理士用、社労士用、銀行提出用などにフォルダを分け、閲覧できる相手を設定し、必要な資料だけを必要な相手に共有できます。

「院長先生が資料を送る仕組み」から、「専門家が決められた場所へ資料を確認しに行く仕組み」へ変えることがポイントです。

ちなみに、紙を減らし、資料をGoogleドライブへ集約するというステップ1と2を実施したことで、従来発生していたバックオフィス業務を約9割削減できたクリニックの事例もあります。

ステップ3. 月次の経営数字を早く確認できる体制をつくる

━━ バックオフィス業務を約9割削減できたのは、大きな効果ですね。紙を減らしてデータを集約した後は、次に何を行えばよいのでしょうか。

井上 ステップ1と2で事務作業を効率化した後は、集めたデータを使って数字を見える化します。

先生方に確認していただきたいのは、前月の数字をいつ受け取っているかです。

━━ 月次の数字は、いつまでに確認できる状態が理想でしょうか。

井上 例えば、6月23日の時点で5月の数字が確認できているかを考えていただきたいです。

2か月前、3か月前の数字しか出ていない、あるいは今年に入ってからの数字がまだ出ていないというクリニックもあります。

私どもが支援しているクリニックの場合、必要な資料を期日までにGoogleドライブへ入れていただければ、原則として毎月15日までに前月分の数字をお届けしています。

経営判断の質は、情報の鮮度で決まります。2か月前の数字よりも、前月の数字を見て判断した方が、現在の経営状況に即した対応ができます。

━━ 紙を減らして資料を集約することは、事務作業を減らすだけでなく、数字を早く作るためにも必要なのですね。

井上 集約したデータを経営判断に活用するためにも、月次の数字を早く作成できる体制が必要です。

バックオフィスを効率化する本当の目的は、単に作業時間を減らすことではなく、院長先生が新しい数字をもとに判断できる状態をつくることにあると考えています。

バックオフィスのデータ整備はAI活用の土台になる

━━ ここまでのお話にあったデータの集約は、今後のAI活用にもつながるのでしょうか。

田原 広一氏(以下、田原) 現在の生成AIは、何らかのデータと指示を掛け合わせて回答を出します。もとになるデータの質が低ければ、AIから得られる回答の質も上がりません。

一方で、正確に整理されたデータが蓄積されていれば、AIを活用してより良いアウトプットを得られる可能性があります。そのためにも、まずはデータ化することが重要です。

━━Googleドライブへ資料を集約することも、将来のAI活用につながりますか。

田原 単に書類を保存するためだけではありません。今後のAI活用を見据えて、正確なデータを蓄積し、必要なときに利用できる状態をつくるという意味があります。

AIツールを導入する前に、紙の資料を減らし、データの保存場所や形式を整える必要があります。

クリニック経営で院長が手放すべきバックオフィス業務

━━ 事務ゼロ体制をつくるには、院長が担当する必要のない業務を見極めることも重要です。

井上 税務申告を税理士へ、給与計算や社会保険手続きを社労士へ依頼している一方で、その専門家が業務を行うために必要な資料を集め、整理し、送る作業は、院長先生自身が抱えていることがあります。

院長先生の時間は、患者様の診療や重要な経営判断に使うべきです。会計資料の整理や領収書の分類まで、院長先生自身が抱える必要はありません。

━━ 専門業務の前段階にある事務作業が、院長に残ってしまっているのですね。

井上 こうした前段階の作業を手放すことが、「事務ゼロ体制」をつくるうえで重要です。

院長先生にしかできない診療や経営判断以外は、本当に院長先生が担当する必要があるのか、一度見直していただきたいと思います。

クリニックのバックオフィスは内製と外注のどちらがよいか

━━ 資料整理などを担当する事務スタッフを採用する選択肢を考えている先生も多いのではないでしょうか。

井上 スタッフを雇った方が、外注するより安いのではないかと考える先生もいらっしゃると思います。ただし、比較するときには給与だけでなく、採用費や研修費、退職時の引き継ぎ、再採用、ミスが起きた場合の修正なども含めて考える必要があります。

バックオフィスの資料は、その後の給与計算や税務申告のもとになるものです。資料が間違っていれば、専門家が正しく処理しても、給与計算や申告内容が誤ったものになる可能性があります。

━━ 担当者の教育や退職リスクまで考えると、外注が適しているケースもあるということですね。

井上 外部へ委託することで院内での教育は不要となり、専任の担当者の退職によって業務が止まるリスクも抑えられ、院長先生が細かく管理する必要も減らせます。

単純な委託料金だけではなく、院長先生やスタッフの時間、採用・教育、業務停止のリスクまで含めて判断していただきたいと思います。

小規模クリニックで「1人経理」が属人化するリスク

━━ もしクリニック内に経理担当者を1人置くとなった場合には、どのようなリスクがありますか。

田原 少人数の組織で経理担当者が1人だけの場合、その人に業務や情報が集中し、属人化しやすくなります。

担当者が退職した際に業務が止まってしまうだけでなく、誰も業務内容を把握していないため、院長先生がその担当者へ強く依存する状態になる可能性があります。1人で担当する場合には、属人化を防ぐ仕組みを整える必要があります。

私自身も税理士資格を持っているにもかかわらず、会社の立ち上げ当初は売上を伸ばすことを優先し、経理を後回しにしていた時期もありました。その結果、経理業務が整わず、数字の把握や意思決定が遅れる状態になりました。現在は管理部門を組織化し、経理業務が安定して回る体制を整えています。

━━ 小規模なクリニックでは、経理担当者を複数配置することが難しいケースも多そうです。

田原 専任担当者を複数配置できない規模であれば、外部委託も積極的に検討した方がよいと思います。

外注によって毎月の数字を早く確認できれば、資金繰りの把握や投資判断にもつなげやすくなります。

クリニック経営に強い税理士・会計事務所の選び方

税理士の選び方のポイント

━━どのような税理士や会計事務所を選べばよいのでしょうか。

田原 税理士業界には多くの事務所がありますが、少人数で運営している事務所も多く、紙や手入力を中心とした業務が残っているケースもあります。紙のやり取りが多く、毎月の数字が出てくるのが遅ければ、クリニック側の経営判断も遅くなります。

━━税理士・会計事務所を選ぶ際には、具体的に何を確認すればよいですか。

田原 主に4つあります。1つ目は医療・クリニック経営に関する専門性、2つ目はクリニックの支援実績、3つ目はIT・DXへの理解、4つ目はデータを蓄積し活用する体制です。

━━ 他にも事前に確認しておくポイントはありますか。

田原 税務申告をしてくれるかだけでなく、バックオフィス業務を効率化し、数字を経営に活用できる状態までつくってくれるかを確認することが重要です。

税理士はこれまで、記帳や決算、確定申告を依頼する相手として捉えられることが一般的でした。しかし、単に記帳や申告を行うだけでは、クリニックの経営課題を十分に解決できません。数字を早く出して資金繰りを確認できる状態を整え、資金調達や分院展開について相談に乗る。さらに、バックオフィス業務が継続的に回る仕組みをつくる。これからの税理士には、こうした支援も求められています。

━━ 税理士を選ぶ際には、節税だけを判断基準にしない方がよいのでしょうか。

田原 節税だけでなく、院長先生が診療と重要な意思決定に集中できる体制をつくれる相手かどうかを確認していただきたいですね。

クリニック経営に強い税理士とは、税金を計算するだけでなく、クリニックが継続的に成長できる仕組みを一緒につくれる人です。

分院展開を見据えたクリニックの経営管理体制

分院展開で銀行が見ているポイント

━━ 事務ゼロ体制を整えることは、将来的な分院展開にも関係しますか。

田原 分院展開を考える場合、院長先生が現場から離れてもクリニックが回る体制が必要です。

院長先生が診療、採用、経理、スタッフ管理など、すべてを担当している状態では、院長先生の時間が事業成長の上限になります。

━━ 金融機関も、院長が不在でも運営できるかを確認するのでしょうか。

田原 2院目、3院目を開設する場合、金融機関は、院長先生がいなくても現場が運営できるかを見ています。

また、院ごとに売上や人件費、家賃、広告費などを管理し、どの院が利益を出しているかを把握できる状態も必要です。

院長先生の作業を減らし、誰が担当しても同じ流れで業務が進む仕組みをつくることが、分院展開の土台になります。

まとめ|バックオフィスの仕組み化で診療に集中できるクリニック経営体制をつくる

クリニックの「事務ゼロ体制」とは、バックオフィス業務そのものを完全になくすことではありません。

院長が資料を探し、整理し、専門家へ送り、進捗を確認する状態を見直し、院長が関与しなくても必要な処理が進む仕組みをつくることです。

そのためには、まず紙の発生を減らし、必要なデータを一つの場所へ集約します。次に、税理士や社労士などの専門家が、必要な資料を自ら確認できる運用へ切り替えます。

院内で抱える必要のない作業は外部へ委託し、院長やスタッフにしかできない業務へ時間を振り分けることも重要です。

AIやクラウド会計などのツールは、導入するだけで業務を効率化してくれるものではありません。業務の流れやデータの保管方法が整って初めて、その効果を発揮します。

「白衣を脱がない経営」を実現するには、院長個人の努力で事務作業を処理するのではなく、AI・DXを活用できるバックオフィスの仕組みを構築することが必要です。

後編では、前編で解説したバックオフィスと月次管理の仕組みを、キャッシュの確保や資金調達、分院展開へどのようにつなげていくのかを解説します。

また、クリニックにおける業務効率化や医療DX、クリニックの経営や開業に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらもあわせてご一読ください。

執筆者:エムネス マーケティングチーム
執筆者:エムネス マーケティングチーム
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