
認知症予防の新常識「AI海馬測定検査」とは?脳ドックではわからないリスクの可視化とMRI稼働率向上【セミナーレポート】
脳ドックを提供する医療機関において、稼働率の伸び悩みや、他施設との差別化の難しさは大きな経営課題です。特に、異常所見がなかった受診者に対して継続的な受診動機を創出しづらく、リピート率が上がらない点に課題を感じている施設も少なくありません。
一方で受診者側は、脳ドックによって脳腫瘍や脳血管疾患だけでなく、「認知症リスク」や「将来の脳の変化」まで把握できると期待しています。しかし、従来の検査だけではそのニーズに十分に応えられていないのが現状です。
このギャップを埋める手段として注目されているのが「AI海馬測定検査」です。脳ドックに追加することで新たな検査価値を創出し、受診者の関心を高めると同時に、MRIの稼働率向上や収益改善にもつながる可能性があります。
本セミナーでは、AI海馬測定検査とは何か、認知症予防における位置づけ、脳ドックへの付加によってMRI稼働率の向上や収益改善を実現する具体的な方法について、株式会社CogSmartの佐野氏に解説してもらいました。

海馬とは何か?認知症リスクと関係する重要な指標

―― 今回のキーワードに「海馬」がありますが「海馬」とはどのような部位ですか。
佐野 奨大氏(以下、敬称略) 脳の「記憶の司令塔」として、認知機能に重要な役割を持つ部位です。実は将来の認知症リスクは40歳頃の海馬萎縮で差がつくと言われており、海馬の体積と記憶力は相関関係にあると言われています。
―― 海馬は、将来の認知症リスクにも影響がある部位なんですね。
佐野 海馬の萎縮が進行すると記憶力が低下するため、萎縮の前段階を早期に検知できれば、将来の認知症リスクに大きな差をつけられます。
これまで「脳は萎縮するだけ」と考えられてきましたが、さまざまな研究の結果、海馬だけが脳で唯一神経新生する部位と言われております。これは言い換えれば「海馬は育てることができる」ということです。
―― 健常段階での予防行動として、どのようなことをすればよいのでしょうか。
佐野 ヘルスケアサービス利用者・事業者も使用可能な認知症に対する非薬物療法指針において、非薬物療法のエビデンスを精査したところ、認知症に関しては「運動療法・認知機能、運動機能などの複数の指標に対して推奨/提案する」とされております。過去に報告されている研究からは、特に中強度の運動が効果が大きいとされています。
―― 中強度の運動というと具体的にどのような運動を指すのでしょうか。
佐野 ストレッチだけを実施したグループと、有酸素運動を実施したグループの海馬体積を比較した論文があります。ストレッチだけのグループに比べ、有酸素運動のグループは海馬体積が増えるという結果が得られました。
もちろんストレッチが悪いわけではありません。加齢とともに海馬は萎縮していくので、息が弾む程度の有酸素運動によって脳の体積を維持・向上できるということです。
―― 加齢以外に海馬が萎縮する要因はあるのですか。
佐野 認知症のリスク要因の1/2は生活習慣に関連していると言われております。運動不足や偏食、飲酒、喫煙のような動脈硬化リスクのある生活のほか、睡眠不足やストレスでも海馬の萎縮は進みます。
――まずは生活習慣を見直して、気になるところを改善することが必要ですね。
脳ドックの課題とは?MRI稼働率・リピート率が伸び悩む背景

――そもそも脳ドックの受診者はどういったことを望んでいるのでしょうか。
佐野 当社が40~69歳の男女3700名に「脳ドック(MRI/MRA)で発見できると思っている疾患・傾向」についてのアンケートを取ったところ、約半数の人が「脳萎縮」、約1/3の人が「認知症傾向」を発見できると思っていることがわかりました。
―― たしかに脳を撮像するのだから、脳萎縮や認知症も発見できるのでは?といった期待感はありますね。対して、脳ドックを提供している医療機関は、どのような課題を抱えているのでしょうか。
佐野 まずは「MRI稼働率の伸び悩み」です。高額な設備投資をしたにも関わらず予約の空き枠が目立つ、特定の曜日や時間帯の空き枠が多いといった悩みがあります。
「脳ドックの受診件数やリピート率の伸び悩み」も挙げられます。多くの医療機関では脳ドックの間隔を2~3年に一度に設定している傾向があり、脳ドックの結果で異常がなかった場合は次年度以降の受診訴求がしづらく、間隔が空いてしまう点が課題となります。
――受診者にとって「異常なし」はいいことですが、医療機関からすると継続的な受診につながらないわけですね。
佐野 また、他施設との差別化が難しいことも課題のひとつです。検診施設が増えたことで自施設の特色が出しにくくなっており、価格面での差別化を図るしかなくなっています。
さらに、医師の読影負担、人的リソース不足も大きな課題です。医師やスタッフの業務負担が大きいなかで、検査項目を増やしたり受診結果を説明したりするのは難しいという声もあります。

AI海馬測定検査とは?認知症リスクを可視化する仕組み

――これらの課題を解決する方法はないのでしょうか。
佐野 解決策のひとつとして「他施設にはない検査価値を提供すること」が挙げられます。
例えば、当社が提供しているAI海馬測定検査「BrainSuite(ブレインスイート)」は、撮像した脳の画像から海馬の体積をAIで測定し、同性同年齢の人と比較した海馬占有率を自動で数値化できます。このように、AI海馬測定検査は従来の脳ドックでは把握が難しかった認知症リスクの可視化を可能にし、検査の価値を大きく高めます。
―― BrainSuiteを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
佐野 例えば、脳ドックとBrainSuiteを同時に受診していただいたとします。次の脳ドックは2年後でも、BrainSuiteを毎年受けていただくことで、翌年の来院にもつながります。
―― 定期的に受診してもらえるサイクルができるのですね。
佐野 検査後のフォローアップにも力を入れています。受診者一人ひとりに個人アカウントを発行しており、マイページから検査後の結果説明や生活習慣改善に関するアドバイス、当社に在籍する医師や看護師へのオンライン相談予約などができます。
―― 認知症予防には生活習慣の改善だけでなく、こうした検査によるリスク把握を組み合わせると安心ですね。
佐野 そのとおりです。まずは検査で自分の海馬の状態を知り、結果に応じたサポートを受け、マイページを活用しながら生活習慣を改善し、また次の検査にて海馬の変化を確認する。このサイクルを回すことで、受診者は海馬の経年変化を追いながら認知症対策をし、医療機関はMRI稼働率のアップが期待できます。
―― 導入することで医師やスタッフの業務負担が増えたりしませんか。
佐野 BrainSuiteはAIで数値化するため、医師の読影は不要ですし、約30秒で解析ができます。結果レポートをその場で作成でき、会計と同時にレポートを渡すことができるので、郵送コストもかかりません。
―― 医師の読影負担や業務負担を最小限におさえながら、収益向上にもつながることが期待できるのですね。
MRIの稼働率をさらに向上!撮像委託として空き枠を有効活用

―― 他にMRIの稼働率向上を目指すための方法はありますか。
佐野 今までは自院での検査の付加価値という点をお話ししましたが、MRIを保有していない医療機関の撮像を請け負うことで、MRIの稼働率を向上させるという方法もあります。
当社では、当社や連携企業が集客した受診希望者に、検査ができる医療機関の紹介もしています。検査・撮像したデータをBrainSuiteにアップロードするだけで対応は終わるので、簡易的な撮像委託として空き枠を有効活用いただけると思います。
――検査ができる医療機関として撮像だけを担当するわけですね。
佐野 そのとおりです。こういった単発検査の受け入れから、新規の人間ドック予約につなげていただいても問題ありませんので、検診プラス撮像委託でMRIの稼働率アップを図ることも可能です。
――空き枠をどのように活用するかが重要ということですね。
佐野 予約がたくさん埋まっている医療機関は、午後の枠を有効活用しているケースが多く見られます。事前準備不要で撮像も約5分で完了するので、当日検査予約を受け付けて、午後の空き枠を有効活用するのも一つの方法です。
――初期コストが不要で、医師への負担も小さいBrainSuiteをうまく活用することで、MRIの稼働率アップにつながるということですね。ありがとうございました。
クリニックの健診に関しては、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。





