医療情報システム導入のメリットを解説!導入時の注意点やセキュリティ対策についても紹介

【サムネイル】医療情報システム


近年、電子カルテやオーダリングシステムなどの医療情報システムを導入する医療機関は増加傾向です。

医療情報システムを導入することで、業務効率化や患者満足度の向上など、医療現場に多くのメリットがもたらされます。

一方で、安全に導入・運用するためにはセキュリティ対策や医療スタッフへのIT教育など、いくつかの注意点もあります。

そこでこの記事では、医療情報システム導入によるメリットや注意点について詳しく解説します。

この記事を読むことで、自施設にあった医療情報システムを効果的に導入でき、患者からの信頼度向上が目指せます。


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監修者情報:嶋田祐記(脳神経外科医)

監修者情報:須藤 優(診療放射線技師・医療情報技師・医用画像情報専門技師)

目次[非表示]

  1. 1.医療情報システムとは
  2. 2.医療情報システムのセキュリティ対策
    1. 2.1.医療情報システムにガイドラインが重要視される理由
  3. 3.医療情報システムを導入するメリット
    1. 3.1.メリット1. 多くの医療情報の利活用ができる
    2. 3.2.メリット2. 業務の効率化
    3. 3.3.メリット3. 多部門間での連携強化
    4. 3.4.メリット4. ヒューマンエラーの防止
    5. 3.5.メリット5. 空間的コストの削減
  4. 4.医療情報システムを導入する際の注意点
  5. 5.医療情報システムの種類
    1. 5.1.電子カルテ
    2. 5.2.PACS(医療用画像管理システム)
    3. 5.3.オーダーリングシステム
    4. 5.4.医事会計システム
  6. 6.まとめ

医療情報システムとは

医療情報システム(電子カルテ・オーダリングシステム)の普及状況の推移

医療情報システムとは、病院、診療所はもちろんのこと、助産所や薬局、訪問看護ステーション、介護事業者など、幅広い医療機関の中で取り扱われるさまざまな医療情報を管理するためのコンピューターシステムのことです。

カルテや検査・調剤・会計などの多岐に渡る医療情報は、これまで紙媒体でアナログ管理されてきましたが、デジタル化することでより多部門間で情報を同時に管理・共有できるようになり、大幅な業務効率化と業務負担の軽減が可能となります。

一方で、医療情報には繊細な個人情報も含まれており、患者が医療機関を信頼した上で預けているため、安全かつ厳格な管理が求められます。

下表の通り、近年では電子カルテやオーダリングシステムなどの医療情報システムが多くの医療機関で取り入れられており、だからこそ、より適切な安全管理の標準化を図ることが重要です。




一般病院


一般診療所

年度
400床以上

200〜399床

200床未満
電子カルテ
普及率(%)

平成20年

38.8%

22.7%

8.9%

14.7%

平成23年

57.3%

33.4%

14.4%

21.2%

平成26年

77.5%

50.9%

24.4%

35.0%

平成29年

85.4%

64.9%

37.0%

41.6%

令和2年

91.2%

74.8%

48.8%

49.9%

オーダリングシステム
普及率(%)

平成20年

82.4%

54.0%

19.8%

平成23年

86.8%

62.8%

27.4%

平成26年

89.7%

70.6%

36.4%

平成29年

91.4%

76.7%

45.6%

令和2年

93.1%

82.0%

53.3%

厚生労働省ホームページの情報 より作成

医療情報システムのセキュリティ対策

セキュリティ対策

医療情報システムをより安全に管理するため、医療情報を取り扱う医療機関と、システムを提供する事業者向けに、それぞれ下記のようなガイドラインが策定されています。

元々、厚生労働省・経済産業省・総務省の3省庁から、医療情報システムに関する4つのガイドラインが出ていました。(3省4ガイドライン)

しかし、情報技術の進展や医療情報の連携方法の多様化、サイバー攻撃の多様化・巧妙化といった背景を踏まえて、現在は4つのガイドラインが3省2ガイドラインとして統合され、より安全性を高めるためにその内容は適宜改定されて運用されています。

医療情報システムにガイドラインが重要視される理由

医療情報システムの安全かつ厳格な管理は、各種ガイドラインでも非常に重要視されており、その理由は主に下記の通りです。

  • 医療情報は病歴など機微性の高い情報を含む個人情報であり、ずさんに取り扱えば患者の生命や身体の安全を脅かす可能性がある
  • 医療情報は医療機関と患者の信頼関係に基づいて取り扱われるものであり、適切に管理されなければ医療機関への信頼は失墜してしまう
  • 継続した医療の提供には、医療情報システムによる絶え間ない情報共有が必要不可欠であり、システムダウンによって患者の健康が脅かされる可能性がある

参考資料:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版

実際に、2020年アメリカでは、国内外を含め約400の外来センターを運営している大手医療企業がたった1通のフィッシングメールによってランサムウェア攻撃を受け、全米の施設で医療情報システムの利用が困難に陥った事件が起きています。(参考資料

この結果、予約や検査結果に遅れが生じたり、重症患者の受け入れが困難になるなど、多くの患者の健康に重大な被害が生じています。

以上のことからも、医療機関・システムを提供する事業者ともに、ガイドラインを遵守し、より安全性の高いシステムを構築することが肝要です。

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医療情報システムを導入するメリット

メリット

医療情報システムを導入するメリットは、主に下記の5つです。

  1. 多くの医療情報の利活用ができる
  2. 業務の効率化
  3. 多部門間での連携強化
  4. ヒューマンエラーの防止
  5. 空間的コストの削減

メリット1. 多くの医療情報の利活用ができる

医療情報システムを導入すると、多くの医療情報が電子データで手元に集まることで、さまざまなことに利活用できます。

例えば、地域の他医療機関と電子カルテを共有することで地域連携が促進したり、各診療科・部門のコストを自動集計することで医療経営の改善にも役立てれます。

多角的にデータを集められるからこそ、幅広く活用できる点が魅力です。

メリット2. 業務の効率化

医療情報システムを導入することで、業務効率化を目指せます。

医療情報システムによって、予約管理から診察・検査・会計まで、多くの医療情報がデジタルで自動管理されるため、これまでアナログで行っていた業務が大幅に削減されます。

例えば、診療行為に対する会計を自動で算出できたり、レセプトを自動作成できるなど、デジタル化が医療現場にもたらす恩恵は大きいです。

また、業務の効率化によって各職種が本来の仕事に集中でき、患者の待ち時間短縮につながる点もメリットです。

メリット3. 多部門間での連携強化

医療情報システムを導入することで、多部門間で連携強化できます。

以前までのアナログな管理では、患者の検査情報や診療録は紙で保存されており、誰もが簡単にアクセスできる仕組みではありませんでしたが、デジタル管理であれば誰でも簡単に医療情報にアクセスできます。

放射線部門で撮影された検査画像を医師は病棟のパソコンですぐに確認できたり、医師からの投薬の指示が薬剤部にすぐに共有されるなど、情報共有の速度が上がることで迅速な医療提供が可能です。

メリット4. ヒューマンエラーの防止

医療情報システムを導入することで、ヒューマンエラーの防止にもつながります。

以前までの紙カルテでは、手書きの文字でカルテや指示が記載されるため、書き間違いや読み間違いなどのヒューマンエラーが散見されました。

しかし、電子カルテでは電子データで文字が入力・表示されるため、判読できない文字や誤読のリスクを下げられます。

また、オーダリングシステムでは、投薬や注射の指示において併用禁忌アラートや用法用量間違えの自動検出機能なども備わっており、ヒューマンエラー防止に有用です。

メリット5. 空間的コストの削減

医療情報システムを導入することで、空間的コストを削減できます。

例えばカルテの保存期間は5年、カルテ以外の処方箋や透析記録・レントゲン写真などの記録は3年の保存義務が定められており、患者数が多ければ多いほど大量の保存スペースが必要となります。

保存スペースの確保による空間的コストや、その管理・保守・破棄を行うための人件費など、さまざまなコストが生じる点がデメリットです。

一方で、医療情報システムにはデータをクラウドに保存できるクラウド型や、院内設置のサーバー内に保存するオンプレミス型などがありますが、特にクラウド型の場合は空間的コストを削減でき、またその管理に要する人件費も削減可能です。

医療情報システムを導入する際の注意点

医療情報システムを導入する際には、下記のような点に注意する必要があります。

  • 導入時にコストがかかる
  • 医療スタッフへの教育が必要
  • 強固なセキュリティ対策が必要
  • 停電やシステム障害時に機能が停止する可能性がある

医療情報システムの導入時には初期費用がかかり、さらにシステムの維持・管理にはランニングコストもかかります。

また、医療スタッフが取り扱いを理解していないと、システムの性能を十分には発揮できないため、事前のIT教育は必要不可欠です。

ほかにも、不正アクセスや情報漏洩などのリスクや、停電やシステム障害による機能停止などのリスクもあるため、強固なセキュリティ対策や非常時のサポート体制の構築も必要になります。

医療情報システムの種類

実際に医療機関で使用されている医療情報システムは、主に下記の通りです。

  • 電子カルテ
  • PACS(医療用画像管理システム)
  • オーダリングシステム
  • 医事会計システム

電子カルテ

電子カルテとは、医師の診療録を電子化して保存・管理するシステムのことです。

紙カルテよりも情報の共有や検索が迅速かつ容易で、カルテの作成も手書きより迅速に行えるため、業務効率化を目指せます。

また、電子カルテであれば紙カルテのような保存スペースの確保も不要です。

一方で、安全な運用のためには外部からのサイバー攻撃や不正アクセスに対し、十分なセキュリティ対策が必要となります。


  電子カルテとは?導入によるメリット・デメリットを徹底解説! 多くの病院で導入されている電子カルテですが、「必要ない」「入力が面倒くさくて時間がかかる」「コストがかかる」などの声があるのも事実。開業を検討している先生方は電子カルテの導入、機種選定に悩むことでしょう。   2015年に政府は「日本再興戦略 改訂2015」内で「2020年度までに400床以上の一般病院における電子カルテの全国普及率を90%に引き上げる」と発表しました1)。目標達成に至っていない状況の中、奇しくもコロナ禍で医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目され、強力に推進されることとなりました。   この記事では、電子カルテについて基本的な事項からメリット・デメリットについておさらいしていきます。そしてなぜ今電子カルテが必要とされているのか、特にクラウド型電子カルテが持つ意味について詳しく解説します。 株式会社エムネス


PACS(医療用画像管理システム)

PACS(医療用画像管理システム)とは、「Picture Archiving and Communication System」の略で、X線やCT、MRIなどの検査画像をデジタル化して、管理・保存・送信できるシステムのことです。

クラウド型のPACSを導入すれば、医師はPCやタブレットなどの端末上で時間や場所を問わず検査画像を確認できるため、より迅速に診断や治療計画の立案が可能となります。

さらに、大量の画像フィルムを保管する必要がなくなるため、空間的コストも削減できます。


  医療用画像管理システムPACSとは?課題や選ぶときのポイントも解説 PACS(Picture Archiving and Communication System)とはデジタル画像を効率的に保存、取得、共有するための医療用画像管理システムです。医療画像をデジタル形式で保存し、迅速かつ容易にアクセス可能にすることで、診断や治療の効率を劇的に向上させます。 本記事では、PACSが医療の世界にもたらす進化や課題ついて掘り下げ、その技術の理解と選ぶときのポイントについても紹介します。 株式会社エムネス


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オーダーリングシステム

オーダリングシステムとは、検査や点滴・投薬・処置などの各種指示を電子的に行うためのシステムです。

口頭や直筆による指示よりもヒューマンエラーが防止され、医師と検査部門・薬剤部・リハビリテーション部門の連携が強化されることで業務効率化も促進されます。

医事会計システム

医事会計システムとは、窓口の会計業務やレセプト(診療報酬明細書)作成業務の電子化などを含むシステムのことです。

行った検査や処置・投薬の内容は、これまで全てアナログ作業で集計されて健康保険組合などに診療報酬を請求してきましたが、医事会計システムを導入すれば自動的に請求書が作成されます。

アナログ管理と比べて、集計ミスが減少するだけでなく、事務作業の負担軽減につながる点もメリットです。

まとめ

今回の記事では、医療情報システムのもたらすメリットや、導入における注意点について解説しました。

電子カルテやオーダリングシステムなどの医療情報システムは、これまでのアナログ作業がデジタル化・自動化されることで、業務効率化や空間的コストの削減など、医療現場に大きなメリットをもたらします。

一方で、不正アクセスやサイバー攻撃、情報漏洩リスクなど、デジタル化に伴うリスクも少なくないため、3省2ガイドラインに則り、医療機関・システム提供事業者ともに、医療情報および医療情報システムの安全かつ厳格な管理が必要です。

医療情報システムを有効活用できれば、患者満足度や患者からの信頼度向上につながるため、ぜひこれを機に導入を検討しましょう。

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H1113(ペンネーム)
H1113(ペンネーム)
2014年に都内の医学部を卒業後、患者様の健康を守るべく臨床医として約10年間医療現場で活動。現在も麻酔科として急性期病院にて勤務。その傍ら執筆や発信活動を開始し、これまでに執筆した医療・健康系の記事は300を超える。
セミナー開催中


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