医療現場では、少子高齢化に伴った人的リソースの不足や地域医療格差をなくすための対策の必要性の高さから、柔軟なITインフラの整備や業務の効率化が急務となっています。こうした背景の中で注目されているのが、医療DXの推進です。2023年6月に内閣官房が医療DX推進本部を立ち上げ、クラウドベースの電子カルテの整備を行っていく方針が発表され、それに伴い、医用画像管理や情報連携の領域でもクラウド型の導入が徐々に加速しつつあります。 今回の調査では、医療現場でどの程度クラウド化が進んでいるのか、また、クラウド化に対するメリットや課題、医療DXに対する意識調査を行い、今後の業界動向を探ることを目的に調査を実施しました。
調査サマリー
調査概要
⚫︎今回の回答者における内訳
図1
クリニックと病院(病床数〜200以下と201以上の合算)で使用している電子カルテ、PACSのタイプを質問したところ、クリニック(図2)と病院(図3)それぞれ以下の結果となった。
クリニックの方が病院よりもクラウド化が進んでおり、特にPACSにおいては、オンプレミス型の導入が34.2%とクラウド型の導入が31.6%と、ほぼ同率にまで差し迫っている結果となった。
図2
図3
なお、電子カルテとPACSのタイプをクロス集計したところ、約7割以上の医療機関が同一タイプを導入している結果となった。
電子カルテ、PACSともにオンプレミス型(院内サーバーで運用)を使用 ...88.2%
電子カルテ、PACSともにクラウド型(インターネット経由で利用)を使用 ...74.7%
電子カルテ、PACSともにハイブリッド型(両方を併用)を使用 ...70.0%
電子カルテ、PACSのいずれか、あるいは両方でオンプレミス型を使用している医療機関を対象に、今後クラウド化する予定があるかを質問したところ、約3割が今度医療用情報システムのクラウド化を導入予定、あるいは検討している結果となった。
なお、勤務先の形態別に、本設問(クラウド化への意向の有無)をクロス集計し、導入検討している施設では、いつ頃の導入時期を検討しているのかを確認したところ、クリニックでは「1年以内に導入予定」が25.0%と最多だったのに対し、病院では「2〜3年以内に導入を検討している」が最多の結果となった。(※「現在はクラウド化の予定なし」「わからない・答えられない」の回答は除外)この結果では、病院の方が決済フローが長く、導入までの時間がかかることが見て取れる。
図4
クラウド型システムを導入するメリットについて質問したところ、以下(図5)の結果となった。
図5
なお、現在使用している医療用情報システム(電子カルテ・PACS)の導入タイプ別にクロス集計したところ、以下の通りとなった。
◼︎現在、オンプレミス型(院内サーバーで運用)を使用している医療機関が考えるクラウド型のメリット
・1位 災害・停電時にも安全にデータが保全される(電子カルテ:53.8%・PACS:52.0%)
・2位 バージョンアップなどの保守管理が不要(電子カルテ:28.1%・PACS:26.3%)
◼︎現在、クラウド型(インターネット経由で利用)を使用している医療機関が考えるクラウド型のメリット
・1位 バージョンアップなどの保守管理が不要(電子カルテ:42.1%)
バージョンアップなどの保守管理が不要/ランニングコストが抑えられる(PACS:どちらも42.7%)
・2位 ランニングコストが抑えられる(電子カルテ:42.1%)
◼︎現在、ハイブリッド型(両方を併用)を使用している医療機関が考えるクラウド型のメリット
・1位 災害・停電時にも安全にデータが保全される(電子カルテ:48.1%・PACS:56.7%)
・2位 バージョンアップなどの保守管理が不要(電子カルテ:33.3%・PACS:46.7%)
現在利用している医療用情報システムの導入タイプ別による違いがあった部分は、実際にクラウド型を使用している医療機関ほど「ランニングコストが抑えられる」の回答率が高く、クラウドのコストメリットの高さを実感していることが伺える結果となった。
なお、電子カルテ・PACSといったシステムによる違いはほぼなく、同様の傾向が見られた。
クラウド型システムを導入に対する不安や課題について質問したところ、右(図6)の結果となった。なお、不安・課題に関しては、現在利用している医療用情報システムの導入タイプ別(オンプレミス型・クラウド型)による違いは、大きく見受けられなかった。
図6
医療DXの進展によって、今後特に強化・注目されるべきだと考える領域について質問したところ、右(図7)の結果となった。
今後特に強化・注目すべき領域として「医療データの一元管理と連携」「遠隔診療・画像診断」が42.0%と最も多く、次いで「医療従事者の働き方改革」が35.3%、「院内業務の効率化(スケジュール、事務など)」と「AIによる診断支援」が33.1%と続いた。
昨今の医療の現場では、医師の働き方改革や少子高齢化による地域医療格差などが問題となっており、それらに対して医療DXにて補填できないかという意図が見て取れる結果となった。
図7
日本の医療現場では、電子カルテやPACS、レセプトコンピューターの普及により、医療ITのデジタル化は世界的にも早く進んできました。現在は、マイナ保険証や電子処方箋に代表される医療DXの流れが本格化し、データ活用を見据えたクラウドシステムの導入が加速しています。
今回の調査結果は、私たちが日々医療機関の皆さまと接する中での実感とも一致しており、特に新規開業クリニックではクラウド導入が当たり前になりつつあります。クラウドによるDXの強みは「データ活用による生産性向上」です。生産年齢人口の減少が進む中、医療現場でも生産性向上は喫緊の課題であり、「コスト」より「有用性」を重視してクラウドを選ぶケースが増えています。
当社のLOOKRECも導入施設がこの4年で10倍に増加しました(関連お知らせ)。今後も医療現場の課題解決に真摯に取り組み、業界の発展に貢献してまいります。(株式会社エムネス Sales & BD本部 本部長 井上満)
医療DXに関しては、こちらの記事でも詳しく解説されています。よければ参考にしてください。
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