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クリニック開業に必要な手続きを完全解説!失敗しないための届出書類とスケジュール一覧

「クリニック開業に必要な手続きがわからない」「どの書類をいつまでに申請すればいいの?」
開業に際してこのようなお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。

開業する際には、開業届や診療所の開設届、保険指定医療機関申請など、数多くの手続きや申請が必要となります。

万が一、書類内容の不備や申請漏れを認めた場合、開業スケジュールに支障をきたし、予定通りに開業できなくなってしまう可能性もあるため、事前に手続きを把握しておくことが肝要です。

この記事では、クリニック開業に必要な手続きや実際の申請方法、手続きにおける注意点について詳しく解説します。この記事を読むことで開業に必要な手続きを十分に把握でき、スムーズな開業を目指せます。


なお、クリニック開業の全体像の流れやタイムラインは以下の記事で解説しています。ぜひあわせて参考にしてください。

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クリニック開業申請に必要な書類&スケジュール目安一覧表

クリニック開業申請に必要な書類と、届出先、届出時期、概要や注意点は下表の通りです。

なお、法人と個人事業主では申請方法が異なりますが、ほとんどは個人事業主として開業するため、個人事業主を対象としています。

分類

申請するもの

届出場所

届出時期

概要(何のための手続きか)

ポイント
注意点

開業

個人事業の開業・廃業等届出書

納税地の所轄税務署

開業日から1ヶ月以内

個人事業主が事業を始めることを税務署に届け出るための書類

青色申告や従業員に給与を支払う場合は別途書類が必要となる

参考URL

診療所開設届

保健所

開設から10日以内

診療行為を合法的に行えるようにするための書類

敷地の平面図などが必要で、不備があれば差し戻される可能性がある

参考URL

保険

保険指定医療機関申請

地方厚生局

月1回のみ申請可能で、受理されるまでに約1ヶ月かかる

保険診療を行えるようにするための書類

提出が遅れると自由診療しか実施できなくなる

参考URL

オンライン資格確認(受付番号情報提供依頼)

地方厚生局

開設月前々月の15日までに実施機関へ受付番号提出

保険診療を行えるようにするための手続き

原則義務化されており、導入しない場合は行政指導の対象

参考URL

施設基準

地方厚生局

原則、その月の1日もしくは2日までに申請すれば当月1日から算定可能
参考URL

保険診療において診療報酬を算定できるようにするための届け出

診療報酬改定によって内容が変わる可能性がある

麻薬

麻薬施用者免許申請

保険所

免許が必要となる日の2週間〜1ヶ月前

診療において麻薬を取り扱うための申請

申請が遅れれば麻薬を取り扱うことができなくなる

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公費

生活保護指定医療機関申請

地方労働局

申請受理された月の1日から適応

生活保護受給者に対して公費負担医療を行う場合に必要な手続き

保険指定医療機関申請と同一書式で同時に申請可能
参考URL

労災保険指定医療機関申請

地方労働局

必要書類が揃い次第

労災保険を利用した公費負担医療を行う場合に必要な手続き

開設許可証の写しや施設概要書などの書類が必要
参考URL

レセプト

電子計算機レセプト申請

もしくはオンラインレセプト申請

支払基金

原則は翌月10日

前月に行った診療行為によって生じる診療報酬を請求するための申請

内容に不備があった場合は返戻が生じ、診療報酬が得られなくなる可能性がある

その他

各種専門医資格

各学会

開設以降、できる限り早期に

資格更新などにおいて必要な勤務先の変更手続き

不備があった場合、資格更新に支障を来す可能性がある

診療所開設届や保険指定医療機関申請などは開業にあたって必ず必要ですが、一方で公費などの申請はあくまで一例であり、他にも難病指定医療機関申請や結核指定医療機関申請など、各クリニックの診療内容によって必要となる手続きも異なります。

クリニック開業に必要な手続きと提出先

必要な手続き

クリニック開業には、保健所・厚生局・その他、それぞれにさまざまな手続きや書類提出が必要です。

ここでは、提出先別に詳しく解説します。

保健所への申請書類

クリニック開業においては、保健所に「診療所開設届」の提出が必要不可欠です。

医療法第8条に基づき、開設した日から10日以内に保健所に届け出る必要があります。

またこの際、下記のような提出書類を用意する必要があります。

  1. 診療所開設届:開設者の押印が必要
  2. 管理者の臨床研修等修了登録証の写し及び免許証の写し:原本が必要
  3. 管理者の職歴書:現住所、氏名、生年月日、最終学歴及び職歴など記載
  4. 診療に従事する医師の臨床研修等修了登録証の写し及び免許証の写し;原本が必要
  5. 業務に従事する助産師の免許証の写し:原本が必要
  6. 土地及び建物の登記事項証明書:発行後6ヶ月以内のものが必要
  7. 土地又は建物の賃貸借契約書の写し(賃借する場合のみ):原本が必要
  8. 敷地の平面図:敷地の公図、建物図面等(ビルの場合は利用する階全体の平面図)
  9. 敷地周囲の見取図:道路と建物の位置関係がわかるもの
  10. 建物の平面図:縮尺1/100以上、各部屋の用途を明示
  11. エックス線診療室放射線防護図:平面図及び立面図、縮尺1/50(歯科は1/50又は1/25)、壁及び鉛の厚さの記載
  12. 案内図:最寄の公共交通機関等からの案内図
  13. 診療に従事する医療従事者の免許証の写し:原本が必要

平面図や見取図は構造設備などが基準(東京都の場合「診察室は9.9㎡以上」など)に適合しているかどうかの判断材料となりますが、基準を満たさないと修正工事を行う必要があるため、必ず事前に保健所に相談してから着工すべきです。

また、上記手続きは無料であり、保健医療局のHPから開設届の書式をダウンロードできます。

保健所に対する申請としては、他にも麻薬施用者免許申請や難病指定医療機関申請などがあるため、クリニックの診療内容に合わせて申請しておくと良いでしょう。

厚生局への申請書類

クリニック開業においては、厚生局に「保険指定医療機関申請」が必要不可欠です。

健康保険法第65条1項に基づき、医療機関が保険診療を行うためには、地方厚生局に対して保険指定医療機関申請を行う必要があります。

申請は月1回で、管轄や申請月によっても提出期限が異なりますが、例えば東京事務所であれば各月の10日までが期限(土日の場合はその前の金曜日)であり、申請通過後の指定日は翌月1日です。

そのため、受理されるまでに約1ヶ月程度の期間を要するため、開設日から逆算して事前に申請を終わらせておく必要があります。

またこの際、下記のような提出書類を用意する必要があります。

  1. 保険医療機関指定申請書
  2. 診療所にあっては、使用許可証又は許可書若しくは届書、国の開設する病院又は診療所にあっては承認書又は通知書
  3. 病院又は診療所にあっては保険医(管理者を除く。)の氏名及び保険医又は保険薬剤師の登録の記号及び番号並びに担当診療科名を記載した書類
  4. 3.に掲げる者以外の医師、歯科医師及び薬剤師のそれぞれの数を記載した書類
  5. 病院又は病床を有する診療所にあっては、看護師、准看護師及び看護補助者のそれぞれの数を記載した書類
  6. その他指定の適格性等を確認するために必要な書類(診療時間など)

保険診療を行い、かつその診療報酬を算定するためには、保険指定医療機関申請以外にもオンライン資格確認・施設基準などを事前に厚生局に対して申請しておく必要があるため、注意が必要です。

消防署への手続き

クリニック開業の際は、消防署への手続きも必要です。消防署での手続きは、主に以下の通りです。

  • 事前相談
  • 使用開始届
  • 設置届
  • 消防検査

クリニックにおける火災発生の予防、もしくは火災発生時の鎮火に対応できるよう、消防法に則って消化器やスプリンクラーの設置基準を満たす必要があるためです。

実際には、内装工事着工の前段階で消防署に事前相談を行い、消防設備の計画届を提出し、工事完了時には使用開始届・消防設備の設置届を提出して、最終的には現地にて消防検査を受ける必要があります。

患者や近隣の方の安全を確保するためにも、必ず事前に相談しましょう。

税務署への手続き

クリニック開業の際は、税務署への手続きも必要です。税務署での手続きは、主に以下の通りです。

  • 開業届
  • 青色事業専従者給与に関する届出書の提出

個人事業主として事業を開始することを税務署に伝えるために開業届を提出し、また生計を一にする配偶者その他親族に対し支払った給与を必要経費として計上するためには青色事業専従者給与に関する届出書を提出する必要があります。

青色事業専従者給与の届出を忘れると、その年に青色専従者に支払った給与は経費として認められず、税負担が重くなってしまうため、注意が必要です。

都道府県税事務局への手続き

クリニック開業の際は、都道府県税事務局への手続きも必要です。都道府県税事務局での手続きは、主に以下の通りです。

  • 個人事業税の事業開始等申告書

個人事業主が納めるべき個人事業税の支払いのために、事前に事業開始の際には都道府県税事務局に対して個人事業税の事業開始等申告書を提出する必要があります。

公共職業安定所への手続き

クリニック開業の際は、公安職業安定所への手続きも必要です。公共職業安定所での手続きは、主に以下の通りです。

  • 雇用保険適用事務所設置届の提出

雇用保険の加入要件を満たす労働者を1人でも雇用する場合、クリニックは公安職業安定所に対して雇用保険適用事業所設置届を提出する必要があります。届出を怠ると、雇用保険法第83条により「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が科せられる可能性があるため、注意が必要です。

開業手続きにおける注意点とよくあるミス

よくあるミスと注意点

開業手続きにおける注意点とよくあるミスは主に下記の2つです。

  1. 書類の不備や提出漏れによる開業遅延のリスク
  2. 申請期限の厳守とその重要性

よくあるミス1. 書類の不備や提出漏れによる開業遅延のリスク

開業手続きの際には、各種書類の不備や提出漏れによって開業が遅延するリスクがあります。

開業時に必要な手続きの中には、事前に申請・提出しておかなければ開業そのものに支障が出たり、開業しても本来行うべき診療行為が実施できなくなるリスクがあるためです。

特に、保険指定医療機関申請は開業前月の期限日までに申請が必要であり、申請が遅れれば開業月に保険診療を実施できなくなります。

さらに、保険指定医療機関申請には添付文書として開設届も必要となり、開設届が問題なく受理されるためにはクリニックの構造設備が基準を満たしている必要があるため、その前段階から保健所に相談しておく必要もあります。

なお、保険指定医療機関申請の期限は管轄によっても異なるため、必ず管轄に関係機関に確認しておくべきです。

よくあるミス2. 申請期限の厳守とその重要性

クリニック開業においては、各申請期限を厳守することの重要性を認識することが重要です。

先述したように開設届や保険指定医療機関申請が遅れれば保険診療を実施できなくなるため、診療報酬を得られなくなってしまいます。

また、火災対策のための消防署への連絡や、納税のための税務署・都道府県税事務局への申請など、法的責任を果たすこともクリニックの責務です。

開業をうまくスタートさせるだけでなく、クリニックとして社会的信頼を獲得するためにも、各種申請期限は必ず守りましょう。

クリニック開業における専門家の選び方のポイント

ポイント

ここまで解説したように、クリニック開業においては多くの手続きや申請が必要です。

一人で全てをこなすと不備がでたり、申請漏れが出る可能性があるため、よりスムーズに開業するためには外部の専門家やコンサルに頼ることも一つの選択肢です。そこで、ここではクリニック開業における専門家の選び方のポイントを紹介します。

ポイント1. 実績が豊富である

クリニック開業の専門家を選ぶ際は、実績が豊富かどうかを確認しましょう。

経営のプロである経営コンサルタントといえど、専門分野が医療でない場合、クリニックの開業ノウハウが不足していたり、医療関連の法務知識に乏しい可能性があるためです。

過去の成功事例や顧客満足度など、これまでのクリニック開業における実績の量や質をチェックしましょう。

ポイント2. サポート内容や料金体系が明確である

クリニック開業の専門家を選ぶ際は、サポート内容や料金体系が明確であるかが重要です。

クリニック開業のコンサルタントは通常の開業のコンサルタントよりも高額になる傾向にあり、こちらの懐具合に合わせて金額を吊り上げたり、金額の割にサポート内容が不十分である可能性があります。事前にサポート内容やそれに対する料金を明確にし、複数業者で相見積もりして比較検討しましょう。

一方で、料金だけで選ぶと十分なサポートを得られない可能性もあるため、適切な料金設定と質の高いサービスを提供してくれる業者を選定することが重要です。

ポイント3. 開業後も継続してサポートしてくれる

クリニック開業の専門家を選ぶ際は、開業後も継続してサポートしてくれるかが重要です。

開業前からさまざまな準備が必要ですが、開業後も集患や雇用、財務など、さまざまな側面で問題が生じうるため、継続的なサポートが必要となります。

実際に開業後のアフターサービスがどのような内容・料金なのかも事前に確認するとともに、継続して付き合っていきたいと感じられる人物像かも評価しましょう。

まとめ

この記事では、クリニック開業に必要な手続きやスケジュール、注意点などについて詳しく解説しました。

クリニック開業の際は、保健所への診療所開設届の提出や厚生局への保険指定医療機関申請が必要不可欠であり、遅くとも開業月の前々月から各種手続きを始める必要があります。

手続きに不備があれば、開業が遅れる可能性があるだけでなく、社会的信用を失う可能性もあるため、十分余裕を持って準備しましょう。

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執筆者:H1113(ペンネーム)
執筆者:H1113(ペンネーム)
2014年に都内の医学部を卒業後、患者様の健康を守るべく臨床医として約10年間医療現場で活動。現在も麻酔科として急性期病院にて勤務。その傍ら執筆や発信活動を開始し、これまでに執筆した医療・健康系の記事は300を超える。
セミナー開催中


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